用語解説 : 稼働率・ADR・RevPARとは|計算方法とホテルの平均

用語解説
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結論

稼働率・ADR・RevPARは、ホテルの客室の売れ行きを測る3つの基本の指標です。

  • 客室稼働率(OCC)=販売した客室数÷販売できる客室数。「どれだけ部屋が埋まったか」
  • ADR(平均客室単価)=客室売上÷販売した客室数。「1室いくらで売れたか」
  • RevPAR(販売可能客室1室あたり売上)=客室売上÷販売できる客室数=ADR×稼働率。「埋まり具合と単価を合わせた稼ぐ力」

観光庁の宿泊旅行統計調査(2025年・年間確定値)によると、2025年の全国の客室稼働率は61.6%でした。施設タイプ別では、ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、リゾートホテル56.9%、旅館38.2%、簡易宿所29.6%です。ただし、稼働率だけでホテルの良し悪しは判断できません。稼働率が高くても単価が低ければ売上は伸びず、部屋を多く売るほど清掃などの費用も増えるからです。3つの指標をセットで見て、最後はRevPARで比べるのが基本です。

はじめに

ホテルの会議や業界ニュースでは、「今月はOCCが85%、ADRが1万5,000円、RevPARは前年比10%増」といった言い方が当たり前のように使われます。ホテルに入ったばかりの人や、建設・不動産・金融など周辺の業界からホテルに関わる人にとっては、まずこの3つの略語が最初の壁になります。

この記事では、3つの指標の意味と計算式を、具体的な数字を使って解説します。あわせて、観光庁の統計による施設タイプ別・都道府県別の稼働率の平均、上場リートが開示している実際のADR・RevPAR、そして「稼働率は何%あれば黒字になるのか」という損益分岐点の考え方まで整理します。

3つの指標の定義と計算式

指標 英語 計算式 分かること
客室稼働率(OCC) Occupancy Rate 販売客室数÷販売可能客室数 部屋がどれだけ埋まったか
ADR(平均客室単価) Average Daily Rate 客室売上÷販売客室数 1室あたりいくらで売れたか
RevPAR Revenue Per Available Room 客室売上÷販売可能客室数(=ADR×稼働率) 埋まり具合と単価を合わせた稼ぐ力

客室稼働率(OCC)

客室稼働率は、販売できる客室のうち、実際に販売した客室の割合です。英語のOccupancyを略してOCC(オーシーシー)、または「オキュパンシー」と呼ばれます。

分母の「販売可能客室数」は、ホテルの総客室数から、故障や改装で売れない客室を除いた数を使うのが一般的です。売れない客室はOOO(アウトオブオーダー)と呼ばれ、詳しくは用語解説 : アウトオブオーダー(OOO)とはで解説しています。一方、観光庁の統計は「利用客室数÷総客室数」で計算しているため、自社の数字と比べるときは分母の違いに注意が必要です。

ADR(平均客室単価)

ADRは、販売した客室1室あたりの平均の宿泊料金です。日本語では「平均客室単価」「客室平均単価」と呼ばれます。注意したいのは、1人あたりの単価ではなく、1室あたりの単価だという点です。2人で泊まって1人1万円なら、ADRは2万円です。

客室売上に何を含めるかは、ホテルや会社によって違います。一般的には消費税・宿泊税・サービス料を除き、朝食代を別に計上している場合は朝食も除きます。朝食付きプランの料金をそのまま客室売上にしているホテルと、朝食分を料飲売上に振り分けているホテルでは、同じ料金でもADRが変わります。

RevPAR(販売可能客室1室あたり売上)

RevPAR(レヴパー)は、客室売上を販売可能客室数で割った数字です。売れなかった部屋も分母に入るため、「空室も含めた1室あたりの稼ぎ」を表します。計算上はADR×稼働率と同じになるので、単価と稼働の両方の成績を1つの数字で表せます。

ADRが分母に「売れた部屋」だけを使うのに対し、RevPARは「売れる部屋すべて」を使う。この違いが、2つの指標を使い分けるポイントです。

計算例:100室のホテルのある1日

総客室数100室のホテルで、2室が設備の故障で販売できず(OOO)、84室を販売し、客室売上が126万円だった日を考えます。

項目 計算 結果
販売可能客室数 100室−2室(OOO) 98室
客室稼働率 84室÷98室 85.7%
ADR 126万円÷84室 1万5,000円
RevPAR 126万円÷98室(=1万5,000円×85.7%) 1万2,857円

観光庁の統計と同じく総客室数100室を分母にすると、稼働率は84.0%、RevPARは1万2,600円になります。同じ1日でも、分母の取り方で稼働率は1.7ポイント違うということです。社内で前年と比べるときも、他のホテルと比べるときも、分母のルールをそろえることが前提になります。

月間の数字は、日々の数字を平均するのではなく、1か月分の販売客室数・客室売上・販売可能客室数をそれぞれ合計してから割るのが正しい計算です。日ごとの稼働率を単純に平均すると、販売可能客室数が日によって違う場合にずれが出ます。

稼働率の平均はどのくらい?2025年の全国実績

観光庁が2026年7月6日に公表した宿泊旅行統計調査(2025年・年間値(確定値))から、施設タイプ別の客室稼働率の推移をまとめます。

施設タイプ 2019年 2023年 2024年 2025年
全体 62.7% 57.0% 59.6% 61.6%
ビジネスホテル 75.8% 69.2% 73.7% 75.3%
シティホテル 79.5% 68.8% 72.3% 74.1%
リゾートホテル 58.5% 51.9% 54.1% 56.9%
旅館 39.6% 36.7% 36.1% 38.2%
簡易宿所 33.4% 25.1% 29.0% 29.6%

2025年はどのタイプも前年より上がりましたが、コロナ前の2019年にはまだ届いていません。特にシティホテルは2019年より5.4ポイント低い水準です。

都道府県別(全体)では、大阪府78.6%、東京都76.3%、福岡県72.1%、愛知県69.2%、京都府66.8%が上位で、長野県39.0%、山梨県43.8%、新潟県46.1%が下位でした。下位の県は旅館やリゾートホテルの比率が高く、季節による需要の差も大きいため、都市部と同じ基準で比べることはできません。

なお、この「平均」は大規模な施設の影響を強く受けます。客室数19室以下の小さな宿と200室以上の大型ホテルでは、稼働率に40ポイント以上の差があります。自社と比べるべき数字の選び方は徹底解説 : 稼働率46.8ポイント差の衝撃:宿泊統計2026の正しい読み方で詳しく解説しています。

ADR・RevPARの実例:上場リート28ホテルの2025年

観光庁の統計には料金のデータがないため、ADRやRevPARの全国平均は公表されていません。実際の水準を知る手がかりになるのが、ホテル特化の上場リートが開示している保有ホテルの成績です。ジャパン・ホテル・リート投資法人の有価証券報告書(2025年12月期)では、売上などに連動する賃料を導入している28ホテルの合計値が開示されています。

指標 2024年 2025年 前年比
客室稼働率 83.1% 86.5% +3.4ポイント
ADR 1万9,518円 2万1,440円 +9.8%
RevPAR 1万6,224円 1万8,545円 +14.3%

2025年の数字で確かめると、2万1,440円×86.5%=約1万8,546円となり、RevPAR=ADR×稼働率の関係が成り立っていることが分かります。RevPARが14.3%伸びた内訳は、稼働率の上昇(+3.4ポイント)よりADRの上昇(+9.8%)の寄与が大きいものでした。訪日客の増加でホテルの需要が強い局面では、部屋を埋めることより、単価を上げることでRevPARを伸ばす動きが中心になります。

この28ホテルには東京・大阪・沖縄などの大型ホテルが多く含まれ、全国の平均的なホテルより単価は高めです。あくまで「上場リートが保有する比較的大きなホテル」の実績として参考にしてください。

稼働率とADRはどちらを優先すべきか

稼働率とADRは、片方を上げるともう片方が下がりやすい関係にあります。値下げすれば部屋は埋まりやすくなり、値上げすれば空室が出やすくなります。そこで判断の軸になるのがRevPARです。

100室のホテル 稼働率 ADR RevPAR 販売客室数
A:安くして埋める 90% 1万円 9,000円 90室
B:単価を守る 72% 1万3,500円 9,720円 72室

稼働率はAのほうが18ポイント高いのに、RevPARはBのほうが高くなります。さらに、Bは販売する部屋が18室少ないので、清掃・リネン・アメニティなど部屋を売るたびにかかる費用も少なく済みます。仮に1室あたり3,000円かかるとすると、その費用を引いた1日の手取りは、Aが63万円、Bが75万6,000円です。

ただし、稼働率を上げれば朝食やレストランの売上が増える、繁忙期の団体客を断ると関係が切れる、といった事情もあります。客室以外の売上まで含めて判断したい場合は用語解説 : TRevPARとは、費用まで含めた利益で判断したい場合は用語解説 : GOP(営業総利益)とはが参考になります。

需要に合わせて料金と販売する部屋を調整し、RevPARを最大化する手法をレベニューマネジメントと呼びます。hotelx.tech 運営チームが公開しているブラウザゲーム「ホテルRMチャレンジ」では、稼働率と単価のバランスを数分で体験できます。

稼働率は何%で黒字になる?損益分岐点の考え方

「ホテルは稼働率何%で採算が取れるのか」という質問には、決まった答えがありません。損益分岐点は、ホテルの固定費(人件費、賃料、減価償却費など)とADR、1室を売るたびにかかる変動費で決まるからです。計算式は次のとおりです。

損益分岐点稼働率=年間の固定費÷{年間の販売可能客室数×(ADR−1室あたり変動費)}

例として、100室(年間の販売可能客室数3万6,500室)、年間の固定費2億円、ADR1万2,000円、1室あたりの変動費3,000円のホテルで計算すると、2億円÷(3万6,500室×9,000円)=約60.9%になります。同じホテルでADRが1,000円上がって1万3,000円になると、損益分岐点は約54.8%まで下がります。単価のわずかな差が、必要な稼働率を大きく動かすことが分かります。

賃料の高い都心のホテルは固定費が大きく、損益分岐点も高くなります。逆に、自社所有で借入の少ないホテルは、低い稼働率でも黒字になりえます。他社の「稼働率○%なら黒字」という話をそのまま当てはめず、自社の費用構造で計算することが大切です。

ホテルのタイプで違う、指標の見方

同じ3つの指標でも、ホテルのタイプによって重視するポイントが変わります。

タイプ 特徴 重視する見方
ビジネスホテル 出張需要が中心で、1室1人の利用が多い。売上のほとんどが客室 平日の稼働率と、週末・繁忙期のADR。RevPARがほぼ収益力を表す
シティホテル レストラン・宴会・婚礼の売上が大きい RevPARに加えて、料飲・宴会を含めたTRevPAR
リゾートホテル 季節と曜日で需要の波が大きい 繁忙期のADRの引き上げと、閑散期の稼働の底上げ。年間ではなく月別・曜日別に見る
旅館 1泊2食・1室複数人の利用が多く、料金は1人あたりで設定することが多い 客室稼働率より、定員稼働率と1人あたりの単価(客単価)

特に旅館は、料金を「1人1泊2食いくら」で決めることが多く、社内では客単価(1人あたりの単価)で管理しているところも少なくありません。ADRは1室あたりの単価なので、客単価2万円の旅館に2人で泊まれば、1室あたりの売上は食事代込みで4万円になります。ホテルと旅館の数字を比べるときは、どちらの単価なのかをまず確かめます。

あわせて覚えたい関連指標

稼働率・ADR・RevPARを理解したら、次の指標も押さえておくと、業界の資料や会議の内容がぐっと読みやすくなります。

指標 計算式 使いどころ
TRevPAR 総売上(客室+料飲・宴会など)÷販売可能客室数 客室以外の売上が大きいホテルの稼ぐ力
GOPPAR GOP÷販売可能客室数 規模の違うホテルの利益力の比較
NetRevPAR (客室売上−OTA手数料などの販売費用)÷販売可能客室数 販売チャネルのコストまで含めた客室の稼ぐ力
RGI(RevPARインデックス) 自館のRevPAR÷競合ホテル群のRevPAR×100 競合と比べて稼げているか
MPI/ARI 自館の稼働率(ADR)÷競合ホテル群の稼働率(ADR)×100 競合との差が稼働と単価のどちらから来ているか

RGI・MPI・ARIは、立地やグレードが近い競合ホテルの集まり(コンプセット)と自館を比べる指数で、100を超えれば競合より良い成績という意味です。たとえば自館のRevPARが1万2,000円、コンプセットのRevPARが1万円ならRGIは120です。このとき、MPIが95でARIが126なら、「稼働では負けているが、単価で大きく上回っている」と読み取れます。

RevPARはOTAに払う手数料を差し引いていないため、手数料の高いチャネルで売るほど、見かけのRevPARと手元に残るお金の差が開きます。直販比率を高める取り組みの効果を測るときは、NetRevPARで比べると実態に近くなります。

指標を読むときの注意点

  • 分母のルールが違う:OOOを除くか、総客室数で割るかで稼働率は変わります。観光庁の統計、リートの開示、社内の数字を比べるときは、計算方法を確かめます
  • ADRに何が含まれるかが違う:税・サービス料・朝食代の扱いで、同じ料金でもADRが変わります
  • 無料の客室の扱い:招待などで無料提供した客室や、社用で使った客室を販売客室数に含めるかどうかで、稼働率とADRが動きます。米国のホテル会計の統一基準(USALI)では、無料提供の客室を販売客室数に含めず別に数える考え方をとっています。社内で定義をそろえておくことが必要です
  • RevPARは費用を見ていない:RevPARが高くても、人件費や販売手数料がかさめば利益は残りません。最終的な判断は利益の指標と合わせて行います
  • 旅館は客室稼働率だけでは測れない:1室に2〜4人が泊まる旅館は、何人泊まったかを見る定員稼働率や1室あたりの人数もあわせて見ます

まとめ

客室稼働率は「埋まり具合」、ADRは「1室の単価」、RevPARは「その両方を掛け合わせた稼ぐ力」です。2025年の全国の客室稼働率は61.6%で、ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%に対し、旅館は38.2%と、施設のタイプで大きく違います。上場リートの28ホテルでは、ADRの上昇がRevPARの伸びを主に支えていました。

稼働率だけを追うと、値下げで部屋を埋めて利益を減らすことになりかねません。3つの指標をセットで見て、比べる相手と計算のルールをそろえること。それが、数字を正しく読むための出発点です。

関連する用語解説

ホテル業界でよく使われる略語・専門用語はホテル業界用語集で一覧にしています。

よくある質問(FAQ)

Q1. ホテルの稼働率の平均はどのくらいですか?

観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2025年の全国平均は61.6%です。ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、リゾートホテル56.9%、旅館38.2%、簡易宿所29.6%と、施設のタイプで大きく違います。

Q2. ADRとRevPARの違いは何ですか?

ADRは「売れた部屋」1室あたりの平均単価、RevPARは「売れる部屋すべて」1室あたりの売上です。RevPARは売れ残った部屋も分母に含むため、ADR×稼働率と同じ値になります。

Q3. RevPARはどのように計算しますか?

客室売上を販売可能客室数で割ります。ADR×稼働率でも同じ値になります。たとえばADR1万5,000円、稼働率80%なら、RevPARは1万2,000円です。

Q4. OCCはどう読みますか?

「オーシーシー」とアルファベットで読むか、元の英語のOccupancyから「オキュパンシー」と呼びます。日本語では客室稼働率のことです。

Q5. 稼働率が100%を超えることはありますか?

宿泊だけで数えれば100%が上限です。ただし、日中だけ部屋を貸すデイユースを販売客室数に含めて集計するなど、ホテル独自の数え方をすると100%を超える数字が出ることがあります。公表された数字を見るときは、集計方法を確認してください。

Q6. 客室稼働率と定員稼働率の違いは何ですか?

客室稼働率は「部屋」がどれだけ埋まったか、定員稼働率は「ベッドや布団」がどれだけ埋まったか(延べ宿泊者数÷総定員)を見ます。1室に複数人が泊まる旅館やリゾートホテルでは、定員稼働率もあわせて見ることが大切です。

Q7. 稼働率を上げるのと単価を上げるのは、どちらが大切ですか?

どちらか一方ではなく、RevPAR(さらには利益)が最大になる組み合わせを探すことが大切です。値下げで稼働率を上げても、単価の低下と清掃などの費用の増加で、かえって利益が減ることがあります。

Q8. 自社と比べられる稼働率や単価のデータはどこで手に入りますか?

稼働率は、観光庁の宿泊旅行統計調査が毎月、施設タイプ別・都道府県別・客室規模別に公表しています。ADRやRevPARの公的な統計はありませんが、ホテル特化の上場リートが保有ホテルの月次の稼働率・ADR・RevPARを開示しています。競合ホテルとの詳しい比較には、CoStar(STR)などの有料のベンチマークサービスが使われます。

Q9. ADRに朝食代は含めますか?

決まりはなく、ホテルによって違います。朝食付きプランの料金をすべて客室売上にするホテルもあれば、朝食分を料飲売上に振り分けるホテルもあります。前年や他のホテルと比べるときは、同じ扱いにそろえてから比べることが大切です。

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