用語解説 : ホテルの耐用年数とは|RC・鉄骨・木造と設備・備品の一覧

用語解説
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結論

ホテルの耐用年数とは、税金の計算で建物や設備の購入費を何年に分けて経費にするか(減価償却)を決めた年数です。国が「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で決めており、ホテル・旅館の建物は次のとおりです。

  • 鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造):39年(木造の内装が延べ面積の30%を超える場合は31年)
  • 鉄骨造(金属造):29年(骨格材の肉厚4mm超)、24年(3mm超4mm以下)、17年(3mm以下)
  • 木造:17年、木骨モルタル造:15年、れんが造・石造・ブロック造:36年

同じRC造でも事務所用は50年、住宅用は47年なので、ホテル用は短めに設定されています。建物の中の設備や家具はさらに短く、空調や給排水の設備は15年前後、客室やロビーの家具は5年、寝具やカーテンは3年です。

ただし、耐用年数は建物や設備の寿命ではありません。実際には、RC造のホテルが築50〜60年まで営業を続ける例も多くあります。経理では耐用年数どおりに償却しつつ、改装や更新の計画は、実際の傷み具合とブランドの基準で別に立てるのが基本です。

はじめに

ホテルや旅館の購入、新築、改装を考えるとき、必ず出てくるのが「耐用年数」です。毎年いくら経費にできるかが決まるため、税金とキャッシュフローの計画に直結します。中古のホテルを買う投資家や、民泊・簡易宿所を始める人にとっても、最初に押さえておきたい数字です。

この記事では、国税庁の耐用年数表をもとに、ホテル・旅館の建物(構造別)、建物附属設備、家具・備品の耐用年数を一覧にまとめます。あわせて、中古のホテルを買ったときの計算方法、少額の備品を一度に経費にできるルール、そして法定の年数と実際の更新サイクルの違いも解説します。

耐用年数とは:寿命ではなく「経費にする年数」

建物や設備のように長く使うものは、買った年に全額を経費にせず、使う期間に分けて少しずつ経費にします。これを減価償却といい、その期間として国が決めたのが法定耐用年数です。

たとえば、RC造のホテルの建物を39億円で建てた場合、定額法なら毎年およそ1億円ずつ、39年にわたって経費にしていきます(建物は2007年4月1日以後の取得分から残存価額をゼロとして計算し、2016年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物も含め、建物まわりは定額法しか選べません)。

耐用年数が短いほど、1年あたりの経費は大きくなり、その分だけ早い時期の税負担が軽くなります。ただし、経費にできる合計額は変わらないので、得をするというより「経費にするタイミングが早まる」と理解するのが正確です。

ホテル・旅館の建物の耐用年数(構造別)

国税庁の耐用年数表のうち、「旅館用・ホテル用」の建物の年数を、事務所用・住宅用と並べました。

構造 旅館用・ホテル用 事務所用 住宅用
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造(SRC・RC) 39年(木造内装部分が30%超なら31年) 50年 47年
れんが造・石造・ブロック造 36年 41年 38年
金属造(骨格材の肉厚4mm超) 29年 38年 34年
金属造(3mm超4mm以下) 24年 30年 27年
金属造(3mm以下) 17年 22年 19年
木造・合成樹脂造 17年 24年 22年
木骨モルタル造 15年 22年 20年

出典:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」。金属造の住宅用は「店舗用・住宅用」の値です。

どの構造でも、ホテル用は事務所用・住宅用より短く設定されています。RC造で比べると、事務所用より11年、住宅用より8年短い計算です。RC造・SRC造のホテルは39年、鉄骨造のホテルは骨格材の厚さによって17〜29年になります。

「木造内装部分が30%超」とは

RC造でも、延べ面積のうち木造の内装部分が30%を超えるホテル・旅館は、耐用年数が31年に短くなります。和室の多い旅館のように、床・壁・天井に木材を多く使った内装の建物が想定されています。面積の測り方や判断に迷うケースもあるため、該当しそうな場合は、設計図面をもとに税理士と確認するのが安全です。

鉄骨造は「骨格材の厚さ」で決まる

鉄骨造の耐用年数は、柱や梁などの骨格材の肉厚で3段階に分かれます。同じ「鉄骨造のホテル」でも、重量鉄骨(4mm超)なら29年、軽量鉄骨(3mm以下)なら17年と、12年もの差があります。建物を買うときは、登記の構造表示だけでなく、設計図書で骨格材の厚さを確かめます。

建物附属設備の耐用年数

ホテルの建物には、空調・給排水・電気・エレベーターなど多くの設備が付いています。これらは建物附属設備として、建物本体より短い耐用年数で償却します。建築費をすべて「建物」として39年で償却するより、設備を分けて計上したほうが、早い時期の経費を大きくできます。

設備 耐用年数
電気設備(照明設備を含む) 15年(蓄電池電源設備は6年)
給排水・衛生設備、ガス設備 15年
冷房・暖房・通風・ボイラー設備 15年(冷凍機の出力が22kW以下の冷暖房設備は13年)
昇降機設備 エレベーター17年、エスカレーター15年
消火・排煙・災害報知設備、格納式避難設備 8年
エアカーテン、ドア自動開閉設備 12年
アーケード・日よけ設備 主として金属製15年、その他8年
店用簡易装備 3年

ホテルは客室ごとに浴室や空調を持つため、事務所ビルに比べて建築費に占める設備の割合が大きいのが特徴です。新築や大規模改装のときは、工事の見積もりの段階から建物本体と設備を分けて把握しておくと、償却の計画を立てやすくなります。

計算例:建築費を分けると、最初の償却費は約2倍に

建築費20億円のRC造ホテルで、建物本体・建物附属設備・家具備品を分けて計上した場合と、すべてを建物として計上した場合の、1年分の償却費(定額法)を比べます。金額の内訳は説明のための仮の数字です。

区分 取得価額 耐用年数(償却率) 1年分の償却費
建物本体 13億円 39年(0.026) 3,380万円
建物附属設備 5億円 15年(0.067) 3,350万円
家具・備品(接客業用家具など) 2億円 5年(0.200) 4,000万円
合計 20億円 — 1億730万円
参考:すべて建物で計上 20億円 39年(0.026) 5,200万円

分けて計上すると、最初の数年の償却費はすべて建物で計上した場合の約2倍になります。合計の経費は同じでも、開業直後の数年は税負担が軽くなり、手元に残る資金が増えます。そのため、新築や取得のときは、工事費の見積書や売買契約の段階から内訳を整理しておくことが大切です。

なお、家具・備品や、建物と一体になっていない設備は、毎年1月31日までに所在地の市町村へ償却資産として申告し、固定資産税を納めます。この申告でも同じ耐用年数を使って評価額を計算します。

家具・備品は「定率法」も選べる

建物・建物附属設備は定額法しか使えませんが、家具・備品などの器具・備品は、定率法も選べます。法人は、届け出をしなければ定率法が適用されます(個人事業者は定額法)。定率法は最初の年の償却費が大きく、年を追うごとに小さくなる方法で、耐用年数5年の償却率は0.400です。先ほどの例の家具・備品2億円なら、最初の年の償却費は定額法の4,000万円に対し、定率法では8,000万円になります(年の途中で取得した場合は月割り)。開業直後の利益が小さいホテルでは、どちらが有利か資金計画とあわせて検討します。

耐用年数を確かめる3つの手順

  1. 構造を確かめる:登記簿の構造表示に加えて、鉄骨造なら設計図書で骨格材の厚さを確認する
  2. 用途を確かめる:旅館・ホテルとして使う建物は「旅館用・ホテル用」。RC造なら木造の内装部分が延べ面積の30%を超えるかも確認する
  3. 区分を分ける:工事費や購入費を、建物本体・建物附属設備・器具備品・消耗品に分け、それぞれの耐用年数を当てはめる

家具・備品(FF&E)の耐用年数

客室の家具やテレビ、寝具などは器具・備品として償却します。ホテル業界では、これらをまとめてFF&E(家具・什器・備品)と呼びます。ホテルで使う主なものは次のとおりです。

品目 耐用年数
応接セット(接客業用) 5年
その他の家具(接客業用) 5年
ベッド 8年
テレビ、ラジオ、音響機器 5年
冷房用・暖房用機器 6年
電気冷蔵庫、電気洗濯機など 6年
カーテン、座ぶとん、寝具など繊維製品 3年
じゅうたん(接客業用など) 3年(その他は6年)
室内装飾品 主として金属製15年、その他8年
食器・ちゅう房用品 陶磁器製・ガラス製2年、その他5年
パソコン(サーバー用を除く) 4年
インターホン、放送用設備 6年
金庫 手さげ金庫5年、その他20年
看板、ネオンサイン 3年

出典:国税庁「耐用年数(器具・備品)」

ホテルの家具は「接客業用」が基本

家具の耐用年数は、事務机などの一般的な家具が8年(主として金属製は15年)なのに対し、接客業用は5年と短く設定されています。ホテルの客室やロビー、レストランで客が使う家具は、多くの人が使って傷みやすいことから、接客業用の区分で償却するのが一般的です。じゅうたんも、客が使う場所に敷くものは3年です。

なお、客室のエアコンは、壁掛けの家庭用に近いものは器具・備品の「冷房用・暖房用機器」(6年)、建物に組み込まれたダクト式などは建物附属設備の「冷暖房設備」(13年または15年)として扱うのが一般的です。同じエアコンでも区分で年数が倍以上違うため、設置の形態で判断します。シャンプーやタオル、スリッパのような消耗品は償却の対象ではなく、OS&E(運営用品)として買った年に経費にするのが通常です。

中古のホテルを買ったときの耐用年数(簡便法)

中古の建物を買った場合は、新築と同じ年数ではなく、残りの使用期間を見積もって償却します。見積もりが難しい場合は、次の簡便法で計算できます。

  • 法定耐用年数の一部が過ぎている場合:(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
  • 法定耐用年数をすべて過ぎている場合:法定耐用年数×20%
  • 1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年未満なら2年
中古のRC造ホテル(法定39年) 計算 耐用年数
築20年 (39−20)+20×20%=23 23年
築30年 (39−30)+30×20%=15 15年
築45年 39×20%=7.8 7年

築年数の古い建物ほど耐用年数が短くなり、毎年の償却費が大きくなります。ただし、買った後に建物の価値を高める大規模な改修をした場合は、その費用を別の資産として償却するなど、扱いが変わることがあります。どこまでが修繕費でどこからが資産になるかは、用語解説 : CAPEX・OPEXとはで整理しています。

少額の備品は一度に経費にできる

耐用年数があるものでも、金額が小さければ買った年にまとめて経費にできます。ホテルで多い、客室の備品の入れ替えでよく使われるルールです。

1つあたりの取得価額 扱い
10万円未満 買った年に全額を経費にできる(少額減価償却資産)
20万円未満 耐用年数にかかわらず、3年で均等に経費にできる(一括償却資産)
40万円未満(中小企業者等のみ) 買った年に全額を経費にできる。年間合計300万円まで

中小企業者等の特例は、2026年度の税制改正で、2026年4月1日以後に取得したものから上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限も2029年3月31日まで延長されました。あわせて、対象となる法人の従業員数の要件が500人以下から400人以下に見直されています。適用には青色申告であることなどの条件があります。

金額は、通常まとめて取引される単位ごとに判定します。たとえば応接セットはテーブルといすを合わせた1組、カーテンは1枚ではなく1部屋分で判定するのが原則です。客室の備品を一斉に入れ替えるときは、判定の単位に注意します。

法定耐用年数と、実際の寿命・更新サイクル

法定耐用年数は、あくまで経費を配分するための年数です。実際のホテルでは、次のように法定の年数とは別のサイクルで更新が進みます。

対象 法定耐用年数 実際の目安
RC造の建物 39年 築50〜60年前後で建て替えを判断する例が多い
空調・給排水などの設備 13〜15年 故障や効率の低下を見ながら、部分的に更新を重ねる
客室の家具・カーペット・カーテン 3〜8年 5〜10年程度で古さが目立ち、ブランドの基準や口コミを見て改装する

たとえば、2026〜2027年に営業を終える札幌パークホテル(1964年開業)や千里阪急ホテル(1970年開業)は、法定の39年を大きく超え、築56〜62年まで営業を続けました。一方で、客室の家具やカーペットは、法定の年数を過ぎる前に古さが目立ってくることも珍しくありません。そこで多くのホテルでは、売上の一定割合をFF&Eリザーブ(修繕積立金)として積み立て、計画的に入れ替えています。

注意点(デメリット・リスク)

  • 区分を誤ると償却費がずれる:建物・建物附属設備・器具備品のどれに当たるかで年数が大きく変わります。特に建築費の内訳を「建物」で一括計上すると、設備の分の経費化が遅れます
  • 用途の判断:住宅を民泊などの宿泊施設として使う場合、建物がどの用途の区分に当たるかは使い方によって判断が分かれることがあります
  • 修繕費と資本的支出の線引き:改装の費用が修繕費(その年の経費)になるか、資産を増やす資本的支出(償却)になるかで、その年の利益が大きく変わります
  • 耐用年数が終わっても建物は使える:償却が終わった後は経費が減るため、税負担が増えて手元の資金が減るように見えることがあります。償却の終わる時期と改装の資金計画をあわせて見ておきます

実際の申告では、資産の内容や取得の経緯によって扱いが変わることがあります。金額の大きい取引や判断に迷うケースは、税理士に確認してください。

まとめ

ホテル・旅館の建物の法定耐用年数は、RC造・SRC造で39年(木造内装30%超は31年)、鉄骨造で17〜29年、木造で17年です。事務所や住宅より短く設定されており、設備は13〜15年、家具は接客業用で5年、寝具やカーテンは3年とさらに短くなります。

耐用年数は経費の配分のための年数で、実際の寿命とは別のものです。償却は法定の年数で正しく行いつつ、改装や建て替えの計画は、建物の状態、ブランドの基準、そしてFF&Eリザーブの積み立てとあわせて考えることが大切です。

関連する用語解説

ホテル業界でよく使われる略語・専門用語はホテル業界用語集で一覧にしています。

よくある質問(FAQ)

Q1. RC造のホテルの耐用年数は何年ですか?

39年です。鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)も同じ39年です。ただし、延べ面積のうち木造の内装部分が30%を超える場合は31年になります。

Q2. 木造のホテル・旅館の耐用年数は何年ですか?

木造・合成樹脂造は17年、木骨モルタル造は15年です。木造の住宅用(22年)や事務所用(24年)より短く設定されています。

Q3. 鉄骨造のホテルの耐用年数は何年ですか?

骨格材の肉厚によって違い、4mm超は29年、3mm超4mm以下は24年、3mm以下は17年です。

Q4. 旅館とホテルで耐用年数は違いますか?

耐用年数表では「旅館用・ホテル用」として同じ区分です。ただし、RC造で木造の内装部分が30%を超える場合は31年になるため、和室の多い旅館は31年になることがあります。

Q5. ホテルのベッドの耐用年数は何年ですか?

ベッドは8年です。マットレスや寝具などの繊維製品は3年です。1つあたり10万円未満のものは、買った年に全額を経費にできます。

Q6. 客室のエアコンの耐用年数は何年ですか?

壁掛けなど器具・備品に当たるものは6年、建物に組み込まれた冷暖房設備は15年(冷凍機の出力が22kW以下のものは13年)です。設置の形態で判断します。

Q7. 耐用年数を過ぎた建物は使えなくなりますか?

使えなくなることはありません。耐用年数は経費を配分するための年数で、償却が終わった後も建物は使い続けられます。実際に、RC造のホテルが築50〜60年まで営業を続ける例は多くあります。

Q8. 中古のホテルを買った場合の耐用年数はどう計算しますか?

簡便法では、法定耐用年数の一部が過ぎている場合「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」、すべて過ぎている場合「法定耐用年数×20%」で計算します。築30年のRC造ホテルなら15年です。

Q9. ホテルの客室のテレビの耐用年数は何年ですか?

テレビは器具・備品の「ラジオ、テレビジョン、テープレコーダーその他の音響機器」に当たり、5年です。

Q10. 耐用年数は固定資産税にも関係しますか?

関係します。家具・備品など、建物と一体になっていない資産は償却資産として毎年1月31日までに市町村に申告し、固定資産税がかかります。評価額の計算には、法人税・所得税と同じ耐用年数を使います。

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