結論
入湯税(にゅうとうぜい)とは、温泉を使う浴場(鉱泉浴場)に入る人に、その浴場がある市町村が課す税金です。地方税法第701条に定められた目的税で、税額は1人1日150円が標準(第701条の2)。宿泊客の場合は1泊ごとにかかるのが一般的です。
- 納めるのは入浴する客。ホテル・旅館などの浴場の経営者が特別徴収義務者として客から預かり、市町村に申告・納入する
- 温泉地の旅館だけでなく、温泉の大浴場があるビジネスホテルや都市のホテルでもかかる。運んできた温泉を使う「運び湯」の浴場も対象(京都市)
- 宿泊税とは別の税金。宿泊税は「泊まること」に、入湯税は「温泉に入ること」にかかる。宿泊税のある温泉地では両方を徴収する
- 入浴しなければ課税されない。ただし実務では、入らないという申し出がない限り、入浴したものとして徴収する扱い(京都市の手引)
- 領収書で宿泊料金と区分して受け取れば、入湯税の分は消費税の対象外になる
はじめに
2026年10月、「函館のホテルで『宿泊税と入湯税で1000円です』と言われた」という記事が話題になりました。予約サイトで全額を払ったのに、チェックアウトで追加の支払いを求められて驚いた、という内容です。宿泊税の導入が広がり、宿泊料金とは別に現地で払う税金が2つ並ぶ場面が増えています。
本記事では、入湯税の仕組みを運営者の立場から整理し、宿泊税との違い、入浴しない客の扱い、課税免除、消費税と領収書、ゲストへの説明の仕方までをまとめます。宿泊税の会計処理は宿泊税の会計処理と消費税で解説しています。
入湯税の仕組み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 地方税法第701条〜(市町村税の目的税)。各市町村の市税条例で税率や免除を定める |
| 課す自治体 | 鉱泉浴場がある市町村 |
| 対象 | 鉱泉浴場での入湯。鉱泉浴場は、温泉法の温泉を使う浴場(社会通念上の鉱泉浴場を含む) |
| 納税義務者 | 入湯客 |
| 税額 | 1人1日150円が標準(宿泊は1泊を1日として数えるのが一般的)。市町村が条例で決める |
| 徴収 | 特別徴収のみ(第701条の3)。浴場の経営者などを条例で特別徴収義務者に指定する(第701条の4) |
| 使い道 | 環境衛生施設、鉱泉源の保護管理施設、消防施設などの整備、観光の振興(観光施設の整備を含む) |
使い道が法律で決まっているのが目的税の特徴です。たとえば京都市は、2025年度当初予算で入湯税2億2,000万円を、観光宣伝事業(7,100万円)、環境衛生施設の整備(5,300万円)、消防施設の整備(5,200万円)などに全額充てています。
宿泊税との違い
| 項目 | 入湯税 / 宿泊税 |
|---|---|
| 何にかかるか | 温泉の浴場に入ること / 宿泊施設に泊まること |
| 根拠 | 地方税法に定めのある税(法定税) / 自治体が条例で設ける税(法定外目的税) |
| ある地域 | 鉱泉浴場がある市町村 / 導入した都道府県・市町村だけ |
| 日帰り客 | かかる(免除の基準は自治体ごと) / かからない |
| 入浴しない客 | かからない / 泊まればかかる |
| 税額の決め方 | 1人1日の定額(標準150円) / 定額・段階的定額・定率など自治体ごと |
| 徴収する人 | 浴場の経営者 / 宿泊施設の経営者 |
| 消費税 | 区分して受け取れば対象外 / 区分して受け取れば対象外 |
課税の対象が「入湯」と「宿泊」で違うため、両方がかかる地域でも、制度上は別々の税として扱われます。ただ、客から見れば同じ「現地で払う税金」で、負担が重なって見えます。宿泊税を入れる自治体では、入湯税との関係が議論になることが少なくありません。宿泊税の定率制や課税免除は宿泊税の定率制とはと宿泊税の免除:修学旅行と部活の合宿で整理しています。
函館の「宿泊税と入湯税で1000円」の内訳
函館市では2026年4月から、北海道と函館市の宿泊税が始まりました。宿泊料金(1人1泊)に応じた道と市の合計額は、2万円未満が200円、2万円以上5万円未満が400円、5万円以上10万円未満が1,000円、10万円以上が2,500円です。
同じ2026年4月利用分から、函館市の入湯税は、宿泊客が1人1泊150円から100円に下がりました。修学旅行などの学校行事やスポーツ大会等の参加者は免除に変わっています(函館市「入湯税申告の手引き」)。2024年4月に市が示した宿泊税の制度案では「入湯税は減額しない」とされていましたが、最終的には宿泊の入湯税を下げる形になりました。
話題になった記事の例は、夫婦2人が1人1泊2万5,000円の温泉付きホテルに泊まったケースです。計算すると次のようになります。
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 宿泊税 | 2万円以上5万円未満の区分で、道と市の合計400円 × 2人 = 800円 |
| 入湯税 | 宿泊100円 × 2人 = 200円 |
| 合計 | 1,000円 |
入浴しない客の扱い
検索では「ホテル 入湯税 入らない」もよく調べられています。答えは、入浴しなければ入湯税はかからないです。函館市の手引には「鉱泉浴場に入湯されていない場合,入湯税は課税されません」と明記されています。
京都市の手引は、もう一歩踏み込んで実務の扱いを示しています。
- 病気やけがなどで入浴していないと申し出があれば、入湯税は徴収できない。あらかじめ預かっていれば返金し、申告の入湯客数から除く
- 温泉旅館などの客が入浴しないことは考えにくく、一人ひとりを確かめるのも現実には難しいため、入らないという申し出がない限り、入浴したものとみなして徴収する
運営側としては、申し出があったときにフロントが迷わない手順を決めておくことです。函館市の月計表の様式には「入湯客」「非入湯客」「15歳未満の客」を分けて書く欄があります。PMSの請求明細で入湯税を宿泊料金と別の行にしておけば、取り消しや返金も1行で済みます。
課税免除は自治体ごとに違う
| 主な免除 | 京都市 / 函館市(2026年4月から) |
|---|---|
| 子ども | 小学生以下(12歳に達した日以後の最初の3月31日まで) / 15歳未満 |
| 学校行事 | 修学旅行その他学校行事の生徒と引率者(大学・専門学校・海外の学校は対象外) / 修学旅行その他学校行事等と、スポーツ大会・文化大会の参加者と引率者 |
| 日帰り | 利用料金1,500円(税抜)以下の施設への日帰り入湯 / 一般の日帰り客は課税 |
| そのほか | 共同浴場・物価統制令の統制額を受ける公衆浴場(銭湯)、医療提供施設 / ユースホステルの会員と、療養で7日以上滞在する人は50円 |
同じ「修学旅行」でも、添乗員やカメラマン、応援の保護者は免除の対象外です(京都市・函館市とも)。宿泊税の免除の基準とも一致しないことがあるため、団体の受け入れでは宿泊税と入湯税を別々に判定する必要があります。
申告・納入と帳簿
- 申告と納入の期限:京都市は毎月末日までに前月分。函館市は2026年4月利用分から、当月分を翌月15日まで(それまでは3か月分をまとめて申告)
- 帳簿:入湯客数・税額などを記載して保存(京都市は記載の日から7年間、函館市は1年間)
- 開業・変更の申告:浴場の経営を始める前日までに申告書を出し、内容が変わったらすぐ届け出る
- 宿泊税とまとめた申告:函館市は、宿泊税と入湯税を合わせて申告できる様式を用意している(納入書は税ごとに分ける)
- 罰則:徴収した入湯税を納入しないと、地方税法第701条の7で5年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(または併科)の対象になる。客が払わなかった分も、特別徴収義務者は納入したうえで客に求償できる(第701条の4第3項)
消費税と領収書
消費税法基本通達10-1-11は、入湯税を利用者が納税義務者となっている税として、対価の額に含まれないとしています。ただし、領収書などで税額が明確に区分されていない場合は、宿泊料金の一部として消費税の課税対象になります。
- 請求書・領収書では、宿泊料金、消費税、宿泊税、入湯税を別の行に書く
- 帳簿では、預かった入湯税を売上ではなく預り金として処理し、納入時に取り崩す
- 出張で泊まった法人客から勘定科目を聞かれたら、宿泊税と同じく、宿泊費と一緒に旅費交通費として処理する例が多いこと、税区分は消費税の対象外(不課税)であることを伝える。最終的な扱いは客の会社の経理の判断になる
ゲストへの伝え方
函館の記事の驚きは、予約の段階で現地払いの税金を知らなかったことから生まれています。トラブルを防ぐには、予約の前に伝えることです。
- 予約サイトのプラン説明:「宿泊税・入湯税は料金に含まれず、現地でお支払いいただきます(入湯税は1人1泊○円、中学生以下は○○)」と金額まで書く
- 予約確認メール:同じ内容を、現地での支払い方法(現金・カード)とあわせて送る
- チェックイン時:精算の前に一言添える。英語なら「A local hot spring bathing tax of ○ yen per person per night is charged separately, as our baths use natural hot spring water.」
- 入浴しない人がいる場合:申し出があれば徴収しないこと、そのときの手続きをフロントで共有しておく
関連する用語
まとめ
- 入湯税は、温泉を使う浴場に入る人に市町村が課す目的税。標準は1人1日150円で、浴場の経営者が特別徴収する
- 温泉の大浴場があれば、都市のホテルやビジネスホテルでもかかる。運び湯の浴場も対象
- 宿泊税とは別の税で、宿泊税のある温泉地では両方を徴収する。函館市は宿泊税が始まった2026年4月から、宿泊の入湯税を150円から100円に下げた
- 入浴しなければ課税されない。実務では申し出がない限り入浴したものとして徴収し、申し出があれば返金・申告から除く
- 免除の基準は自治体ごとに違う。領収書で区分すれば消費税の対象外。予約の段階で金額まで伝えておくとトラブルが減る
よくある質問(FAQ)
Q1. 入湯税とは何ですか?
温泉を使う浴場(鉱泉浴場)に入る人に、浴場がある市町村が課す税金です。地方税法第701条に定めがあり、税額は1人1日150円が標準です。使い道は、環境衛生施設や消防施設の整備、観光の振興などに限られています。
Q2. ホテルに泊まっただけで入湯税がかかるのはなぜですか?
浴場で温泉を使っているホテルでは、宿泊客が入浴するものとして入湯税を徴収するのが一般的だからです。入浴しなかった場合は課税されないため、申し出れば徴収されない、または返金されます(京都市の手引)。
Q3. 宿泊税と入湯税は二重課税ではないのですか?
宿泊税は宿泊に、入湯税は温泉への入浴にかかる税で、課税の対象が違うため、別々の税として扱われています。ただ客の負担は重なるため、函館市のように宿泊税の開始と同じ時期に入湯税を下げた例もあります。
Q4. 入湯税に消費税はかかりますか?
領収書などで税額を区分して受け取っていれば、入湯税の分は消費税の対象外です(消費税法基本通達10-1-11)。区分していない場合は、宿泊料金の一部として消費税の課税対象になります。
Q5. 子どもにも入湯税はかかりますか?
多くの市町村で子どもは免除されていますが、年齢の基準は自治体ごとに違います。京都市は小学生以下、函館市は15歳未満が免除です。
Q6. 予約サイトで全額払ったのに、現地で入湯税を請求されるのはなぜですか?
入湯税や宿泊税は宿泊料金に含まれず、施設が現地で別に預かることが多いためです。施設側は、予約サイトのプラン説明や予約確認メールで、現地払いの税金とその金額を前もって伝えておくことが大切です。
出典:地方税法 第701条〜第701条の10(e-Gov法令検索)、函館市「入湯税申告の手引き」(令和8年4月1日施行)、函館市「宿泊税特別徴収事務の手引き」(令和7年8月18日時点)、函館市「宿泊税の考え方について」(2024年4月25日)、京都市「入湯税の手引」(令和8年2月)、消費税法基本通達10-1-11、ファイナンシャルフィールド「函館のホテルで『宿泊税と入湯税で1000円です』と言われビックリ!」(2026年10月30日)


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