結論
ホテルのハウスユース(House Use、略してHU)とは、ホテルが自分たちの業務のために客室を使うこと、またはその客室のことです。夜勤の責任者の仮眠や待機、繁忙期のスタッフの宿泊、研修や設備の確認、撮影などに使われ、宿泊料金は発生しません。
- ゲストに無料で泊まってもらうコンプ(コンプリメンタリー)とは、「誰が使うか」で区別する
- ホテル業界の統一会計基準USALIの考え方では、ハウスユースやコンプのような無償の客室は販売した客室に含めず、稼働率やADRの計算から外すのが基本
- 記録のルールがないと、稼働率の数字が実態とずれる、満室の日に売れる客室を塞ぐ、私的な利用が紛れ込むといった問題が起きる
ハウスユースは「ホテルの内部で使う0円の客室」です。使うこと自体は運営に欠かせませんが、承認・記録・統計上の扱いの3点を決めて管理することが大切です。
はじめに
ホテルのフロントで働き始めると、客室の一覧に「HU」と表示された部屋や、料金0円で入っている予約を目にすることがあります。これがハウスユースです。英語の「house」は、ここでは「ホテル自身」を意味します。社内で「ハウス」と言えば自社のことを指す、ホテル業界らしい言い回しです。
この記事では、ハウスユースの意味と使われる場面、よく似たコンプやアウトオブオーダーとの違い、稼働率やADRへの影響を、計算例とともに解説します。
ハウスユースが使われる主な場面
- 夜勤・当直の待機:夜間の責任者(ナイトマネージャーなど)が、仮眠や待機に使う
- 繁忙期・災害時のスタッフの宿泊:早朝からの勤務が続くとき、台風や大雪で帰宅できないとき
- 研修・確認:新人のベッドメイクの練習、改装後の客室の確認、新しいアメニティの試用
- 業務の拠点:宴会や婚礼の控室、撮影や取材の準備室、荷物の一時置き場
- 本部や関係者の出張:運営会社の本部スタッフが、監査や支援のために泊まる
- 長期の住居:総支配人などの住居として、長い期間使う
どれもホテルの運営に必要な使い方ですが、「誰の判断で、何のために、何泊使ったか」が残っていないと、あとから検証できなくなります。
コンプ・アウトオブオーダーとの違い
販売しない客室には、いくつかの種類があります。混同しやすいものを並べると次のとおりです。
| 区分 | 意味 | 使う人 | 例 |
|---|---|---|---|
| ハウスユース(HU) | ホテルが業務のために使う客室 | ホテルのスタッフ・関係者 | 当直の待機、研修、撮影の準備 |
| コンプ(コンプリメンタリー) | ゲストに無料で提供する客室 | ゲスト | 旅行会社やメディアの招待、トラブルのお詫び、上得意への招待 |
| アウトオブオーダー(OOO) | 故障や改修で販売できない客室 | 誰も使わない | 水漏れ、空調の故障、改装工事 |
| 販売した客室 | 料金を受け取って提供した客室 | ゲスト | 通常の宿泊、団体の宿泊 |
ハウスユースとコンプは、どちらも「0円の客室」ですが、使う人が違います。ホテルによっては、ハウスユースもコンプの一種として扱い、理由のコードで分けていることもあります。故障などで販売を止める客室の扱いは用語解説 : アウトオブオーダー(OOO)とはで解説しています。
なお、「2泊すると1泊無料」のような販売促進の特典や、団体の契約で付ける無料の客室は、まとめて料金を受け取っているため、コンプには含めず販売した客室として扱う、という考え方がUSALIの解説で示されています。
稼働率・ADRの計算ではどう扱う?
ホテル業界の統一会計基準であるUSALI(Uniform System of Accounts for the Lodging Industry)では、オーナーや従業員への無償の提供、当直のマネージャーの部屋のようにホテルが短期的に業務で使う客室を無償の客室とし、稼働率とADRの計算から外すという考え方が示されています。また、業界の解説では、総支配人の住居のように長期間(目安として6か月以上続けて)販売から外す客室は、販売可能な客室数からも除くと整理されています。
計算例
架空のホテルの1日で比べてみます。
| 前提 | 数値 |
|---|---|
| 販売可能な客室数 | 100室 |
| 販売した客室 | 80室 |
| ハウスユース | 3室 |
| コンプ | 2室 |
| 客室売上 | 120万円 |
| 計算のしかた | 稼働率 | ADR(平均客室単価) |
|---|---|---|
| 無償の客室を外す(USALIの考え方) | 80÷100=80.0% | 120万円÷80室=15,000円 |
| 無償の客室も含める | 85÷100=85.0% | 120万円÷85室=約14,118円 |
同じ1日でも、ハウスユースとコンプを含めるかどうかで、稼働率は5ポイント、ADRは約900円違って見えます。前年や競合と比べるときに、数え方がそろっていないと、正しい比較ができません。稼働率・ADR・RevPARの基本は用語解説 : 稼働率・ADR・RevPARとはで解説しています。
実際にどう数えるかは、ホテルや運営会社、報告先によって違うことがあります。社内の報告では、販売した客室とは別に、ハウスユースとコンプの室数を並べて示すと、どちらの見方にも対応できます。
ハウスユースを管理する4つのルール
- 承認者を決める:誰が使ってよいと判断するかを決める。宿泊部門の責任者や当直の責任者など、役割で決めておく
- 予約として登録する:PMS(ホテルの基幹システム)に、ハウスユース用の0円の料金コードや区分で予約を入れ、使う人・理由・泊数を残す。誰がどの客室にいるかが分かることは、火災などの非常時の安全確保にも欠かせない
- 使う日を選ぶ:満室が見込まれる日は、販売できる客室を優先し、ハウスユースは控える。どうしても必要な場合は、眺望の悪い客室など売りにくい客室から使う
- 月に1回、件数と理由を見直す:特定の部署や人に偏っていないか、理由が記録どおりかを確かめる
記録の例
PMSに入力する、または台帳で管理する項目の例です。予約として登録しておけば、清掃の指示や客室の割り当てとも自然につながります。
| 項目 | 記入例 | ねらい |
|---|---|---|
| 日付・泊数 | 10月17日から1泊 | 満室の日と重なっていないかを確認する |
| 客室番号 | 812号室 | どの客室が塞がっているかをフロントと清掃で共有する |
| 使う人 | ナイトマネージャー 山田 | 非常時に誰がどこにいるかを把握する |
| 区分・理由 | HU(当直の仮眠) | コンプや社員の自費の宿泊と分けて集計する |
| 承認者 | 宿泊部長 | あとから判断の経緯を確認できるようにする |
| 費用の負担部署 | 宿泊部 | 清掃・リネンの費用をどの部署の経費として見るかを決める |
月末にこの記録を区分別・部署別に集計すると、「宴会の控室としての利用が増えている」「研修での利用が特定の時期に集中している」といった傾向が見え、別の部屋を用意するか、時期をずらすかといった判断にも使えます。
注意点:見えないコストと、私的利用のリスク
ハウスユースには、次のようなリスクがあります。
- コストが見えにくい:清掃、リネンの洗濯、アメニティ、光熱費は通常の客室と同じようにかかる。件数が多いと、客室部門の費用を押し上げる
- 売れる客室を塞ぐ:需要の大きい日にハウスユースを入れると、その分だけ売上の機会を失う
- 私的な利用が紛れ込む:家族や知人の宿泊を「業務」として入れると、横領と同じ問題になる。承認と記録のルールは、スタッフを守るためのものでもある
- 数字がゆがむ:販売した客室に混ぜて報告すると、稼働率の見え方が実態とずれ、オーナーや本部の判断を誤らせる
まとめ
ハウスユースは、ホテルが業務のために使う0円の客室です。夜勤の待機やスタッフの宿泊、研修、撮影など、運営に欠かせない使い方ですが、ゲストに無料で提供するコンプとは区別し、USALIの考え方では稼働率やADRの計算から外すのが基本です。
承認者を決める、予約として登録する、満室の日は控える、月に1回見直す。この4つのルールで管理すれば、数字のゆがみや私的な利用を防ぎながら、必要なときに安心して客室を使えます。
関連する用語解説
ホテル業界でよく使われる略語・専門用語はホテル業界用語集で一覧にしています。
よくある質問(FAQ)
Q1. ハウスユースとはどういう意味ですか?
ホテルが自分たちの業務のために客室を使うこと、またはその客室のことです。英語のHouse Useから来た言葉で、HUと略されます。宿泊料金は発生しません。
Q2. ハウスユースとコンプの違いは何ですか?
使う人が違います。ハウスユースはホテルのスタッフや関係者が業務で使う客室、コンプ(コンプリメンタリー)はゲストに無料で提供する客室です。
Q3. ハウスユースは稼働率に含めますか?
ホテル業界の統一会計基準USALIの考え方では、ハウスユースやコンプのような無償の客室は販売した客室に含めず、稼働率とADRの計算から外すのが基本です。ただし、ホテルや報告先によって扱いが違うことがあるため、社内で数え方をそろえておくことが大切です。
Q4. ハウスユースとアウトオブオーダーはどう違いますか?
ハウスユースは人が使っている客室、アウトオブオーダーは故障や改修で誰も使えない客室です。どちらも販売はしていませんが、理由と管理の仕方が違います。
Q5. スタッフが自費で泊まる場合もハウスユースですか?
料金を払って泊まる場合は、社員割引の料金などで販売した客室として扱うことが多いでしょう。ハウスユースは、業務のために料金をとらずに使う場合を指します。
Q6. ハウスユースの客室も清掃しますか?
使った後は、通常の客室と同じように清掃と点検(インスペクション)をしてから販売に戻します。清掃やリネンの費用もかかるため、件数を記録しておくことが大切です。


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