結論
ChatGPTとGeminiに「国内旅行サイトのおすすめは?」と聞き続けた調査で、じゃらんnet・楽天トラベル・一休.comの3社が全54回答のすべてに登場しました(株式会社ブランディングワークス調べ、2026年9月)。AIが答えの根拠に使った情報源は、64.4%がオリコン顧客満足度ランキングのサイト(life.oricon.co.jp)でした。
ホテル・旅館にとってこの調査が示すのは、「どのOTAが強いか」よりもAIの推薦がどういう経路で決まっているかです。要点は3つです。
- AIは自分で比べていない:推薦の根拠は比較サイトやランキング記事に強く寄っている。宿の推薦でも、AIが読みにいく「第三者のまとめ」に載っているかが効く
- AIは「切り口」で紹介する:旅行サイトはポイント還元(回答の85.2%)で語られた。宿も「何の宿として語られるか」を自分で決めておかないと、AIに埋もれる
- AIごとに答えが違う:同じ質問でもChatGPTとGeminiで候補が大きく変わった。1つのAIで確かめて安心するのは危うい
以下、調査の中身を確かめたうえで、宿の集客担当が明日から何を見直せばよいかを整理します。
はじめに
「旅行の予約はどこでするのがいい?」をAIに聞く人が増えています。検索結果の一覧から自分で選ぶのではなく、AIが挙げた2〜3社の中から選ぶ行動です。そうなると、AIの答えに名前が出るかどうかが、そのまま集客の入口を左右します。
今回取り上げるのは、SEOとAI検索対策(LLMO)を手がける株式会社ブランディングワークスが2026年10月2日に公表した定点調査です。対象は宿そのものではなく「国内旅行サイト」ですが、宿の予約の大半はこうしたサイトを経由します。お客さまがAIに聞いて選んだOTAの中で、さらに宿を選ぶという2段階の流れを考えると、宿の担当者にも無関係な話ではありません。
なお、この調査はAI検索対策サービスを販売する会社による自社調査です。数字の扱い方に注意すべき点もあるため、後半で調査の限界もあわせて説明します。生成AI時代のホテル集客の基本は生成AI検索「GEO対策」と現場SOPで解説しているので、本記事では今回の調査から読み取れる点に絞ります。
調査では何が分かったのか?
調査の方法
調査期間は2026年9月18日〜30日のうち計測を行った9日間です。ChatGPT(gpt-5.1)とGemini(gemini-3.1-pro)のAPIに、Web検索を有効にした状態で「国内旅行サイトのおすすめは?」という同じ質問を1日3回ずつ送り、回答に出てきた企業名を数えています。有効回答は54件(2つのAI×1日3回×9日)です。
言及率ランキング上位10社
言及率は「全回答のうち、その企業名が出てきた回答の割合」、平均登場順位は「回答の中で何番目に挙がったか」の平均です。
| 順位 | サイト | 言及率 | 平均登場順位 |
|---|---|---|---|
| 1 | じゃらんnet | 100% | 2.1位 |
| 2 | 楽天トラベル | 100% | 2.1位 |
| 3 | 一休.com | 100% | 2.6位 |
| 4 | JTB | 90.7% | 5.7位 |
| 5 | Yahoo!トラベル | 83.3% | 3.6位 |
| 6 | 日本旅行 | 66.7% | 6.6位 |
| 7 | トラベルコ | 40.7% | 6位 |
| 8 | JR東海ツアーズ | 37% | 5位 |
| 9 | Relux | 33.3% | 5位 |
| 10 | 阪急交通社 | 20.4% | 7.5位 |
出典:株式会社ブランディングワークス「生成AI業界調査(2026年9月)」
上位3社は言及率がいずれも100%で、じゃらんnetと楽天トラベルは平均登場順位も2.1位で並んでいます。公表値の範囲では、1位と2位の差はほぼ無いと読むのが妥当です。「1位はじゃらん」という見出しよりも、「国内のOTA大手3社は、AIに聞けば必ず名前が出る」ことのほうが実態に近いでしょう。
AIの根拠は比較サイトに集中していた
回答の根拠として引用されたサイトは、上位から life.oricon.co.jp(64.4%)、tour.ne.jp(16.3%)、www2.jpx.co.jp(5.8%)、kankomie.or.jp(3.8%)、opendoor.co.jp(1.9%)でした。life.oricon.co.jp はオリコン顧客満足度ランキング、tour.ne.jp は旅行比較サイトのトラベルコ、opendoor.co.jp はトラベルコの運営会社、kankomie.or.jp は三重県の観光公式サイトです。
AIの推薦は、どこで決まっているのか?
オリコンのランキングと、AIの順位は同じではない
引用の6割以上がオリコンだったなら、AIはオリコンの順位をそのまま読み上げているのでしょうか。実際にオリコン顧客満足度ランキングの「旅行予約サイト 国内旅行」(2026年版、更新日2026年3月2日、回答者5,080人)を見ると、総合順位は次のとおりでした。
| オリコン総合順位 | サイト | 得点 | 今回のAI調査での言及率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 一休.com | 75.1点 | 100% |
| 2 | JR東海ツアーズ | 74.8点 | 37% |
| 3 | じゃらんnet | 74.4点 | 100% |
| 4 | Yahoo!トラベル | 74.0点 | 83.3% |
| 5 | 楽天トラベル | 73.8点 | 100% |
| 6 | JTB | 73.1点 | 90.7% |
| 9 | Booking.com | 72.0点 | 上位10社に入らず |
| 11 | Expedia | 71.1点 | 上位10社に入らず |
出典:オリコン顧客満足度ランキング「旅行予約サイト 国内旅行」(life.oricon.co.jp、2026年10月3日閲覧)、AI調査の言及率は株式会社ブランディングワークス調べ
満足度2位のJR東海ツアーズは、AIの回答では37%にとどまりました。逆に、満足度5位の楽天トラベルは100%です。AIはランキングを根拠として引用しながらも、答えの骨格は「誰もが知っている大手」で組み立て、ランキングで裏づけているように見えます。言い換えると、もともとの知名度が土台にあり、第三者の評価はそれを補強する役割です。
もう一つ目を引くのは、Booking.comやExpediaなどの外資OTAが上位10社に入っていない点です。オリコンのランキングには載っていますが、「国内旅行サイト」という質問の言葉に引っ張られ、AIは国内企業を中心に挙げたと考えられます。質問の言葉づかいひとつで、候補の顔ぶれが変わるということです。
トラベルコは「自分の場所」から引用されていた
引用元の2位がトラベルコ自身のサイト、5位がその運営会社のサイトだった点も見逃せません。比較サイトとして多数の予約サイトを紹介する記事を持っているため、AIがそこを読みにいき、その結果トラベルコ自身の名前も回答に入るという構図です。AIに読まれるページを自分で持っていることが、推薦につながる好例です。
三重県の観光公式サイト(kankomie.or.jp)が引用されているのも示唆的です。自治体や観光協会のサイトは、AIにとって信頼できる地域情報の置き場になっています。宿にとっては、自館が地元の観光協会やDMOのサイトに正しく載っているかが、AIに見つけてもらう入口の一つになりえます。
AIは「切り口」で選ぶ——宿は何の宿として語られるか?
調査では、AIが企業名を並べるだけでなく、利用者が重視する点ごとに分けて紹介していたことも分かりました。
| 切り口 | 回答に登場した割合 | 主な紹介企業 |
|---|---|---|
| ポイント還元 | 85.2% | 楽天トラベル、Yahoo!トラベル、じゃらんnet |
| サポート体制 | 22.2% | JTB、日本旅行、近畿日本ツーリスト |
| 価格比較 | 16.7% | トラベルコ、LINEトラベルjp、エアトリ |
出典:株式会社ブランディングワークス調べ
旅行サイト選びの答えの8割超が「どのポイントが貯まるか」で語られていたのは、宿の担当者にとって重い事実です。お客さまはAIに背中を押されて「普段使っているポイントが貯まるOTA」へ流れていきます。公式サイト予約がAIの答えに入り込む余地は、この切り口の中にはほとんどありません。
宿が取れる対応は2つあります。
1. OTAでの見え方は「ポイント経済圏」ごとに整える
AIに導かれたお客さまは、ポイント経済圏ごとに分かれてOTAに入ってきます。楽天、Ponta・dポイント、PayPayといった経済圏ごとに主力のOTAが違うため、どのOTAでも写真・客室情報・プラン名の質がそろっていることが前提になります。主力OTAだけ作り込み、他は数年前の情報のまま、という宿は珍しくありません。AI経由で入ってきたお客さまが、手入れの薄いページを最初に見ることになります。
2. 宿そのものの「切り口」を言葉にしておく
AIは「ポイント還元ならこのサイト」と同じように、宿についても「家族連れなら」「露天風呂付き客室なら」「出張の連泊なら」と切り口で紹介します。AIはどのホテルを選ぶ?口コミ評価と価格の新集客戦略でも触れたとおり、口コミと価格は大きな判断材料です。そのうえで、自館が「何の宿」として語られたいのかを1〜2個に絞り、公式サイト・OTAの紹介文・口コミへの返信で同じ言葉を繰り返すことが効きます。紹介文がばらばらだと、AIはどの切り口にも当てはめられません。
ChatGPTとGeminiで、なぜ答えが違うのか?
調査では、AIごとの差もはっきり出ました。
| サイト | ChatGPTでの言及率 | Geminiでの言及率 |
|---|---|---|
| Yahoo!トラベル | 67% | 100% |
| トラベルコ | 78% | 4% |
| JR東海ツアーズ | 70% | 4% |
| Relux | 登場せず | Geminiのみ登場 |
| 阪急交通社・近畿日本ツーリスト・クラブツーリズム | ChatGPTのみ登場 | 登場せず |
出典:株式会社ブランディングワークス調べ(Reluxなどは公表資料に言及率の記載なし)
AIはそれぞれ別の検索の仕組みを使い、別のページを読んで答えを作ります。どちらを使うかでお客さまが目にする候補は変わります。「ChatGPTに聞いたら自館が出てきた」で安心するのは早く、少なくとも2つのAIで確かめる必要があります。また、Web検索を有効にしたAIの答えは、読みにいったページによって日々変わります。1回の確認ではなく、同じ質問を時期を空けて繰り返す定点観測が向いています。
宿は自館の「AIでの見え方」をどう確かめればよいか?
今回の調査と同じ考え方は、専用のツールが無くても手作業で真似できます。月に1回、30分ほどで回せる手順を示します。
- 質問を5つ決める:「〇〇温泉でおすすめの旅館は?」「〇〇駅周辺で出張向けのホテルは?」「〇〇で子連れに向いた宿は?」など、自館を選んでほしい場面を想定した質問にする。毎月同じ質問を使う
- 2つ以上のAIに聞く:ChatGPTとGemini(あるいはGoogle検索のAIによる概要)で、それぞれ同じ質問を2〜3回ずつ聞く
- 表に記録する:自館が出たか、何番目か、どんな切り口で紹介されたか、競合はどこが出たか、根拠に示されたサイトはどこか、の5項目を記録する
- 引用元を読む:根拠として示されたまとめ記事・観光協会・OTAのページを開き、自館の情報が古い・載っていない・誤っている箇所を探す
- 直せるところから直す:OTAの紹介文、公式サイトの基本情報、観光協会の掲載情報など、自分で修正できるものを優先する
手順4で見つかる「AIが読んでいるのに自館の情報が無い・古いページ」こそ、手を打つ価値が最も高い場所です。公式サイト側で機械に読み取りやすい情報を整える方法は構造化データSOPで直販最大化で詳しく扱っています。
| 記録項目 | 見るポイント | 次の打ち手の例 |
|---|---|---|
| 自館が出たか | AIごと・質問ごとの登場回数 | 出ない質問は、その切り口の情報が自館に無いと疑う |
| 登場順 | 1〜3番目か、末尾か | 上位の競合が何で紹介されているかを読む |
| 紹介の切り口 | AIが自館を何の宿として説明したか | 意図と違えば紹介文の言葉をそろえ直す |
| 競合 | 毎回出る宿、たまに出る宿 | 毎回出る宿の引用元に共通点が無いかを見る |
| 引用元 | まとめ記事・観光協会・OTA・口コミサイト | 自館の掲載漏れ・古い情報を修正依頼する |
この調査を読むときの注意点とリスク
役に立つ材料が多い一方で、数字をそのまま経営判断に使うには注意が要ります。
- 回答数が少ない:有効回答は54件、質問は1種類だけです。言い方を「安く泊まれる予約サイトは?」に変えるだけで、顔ぶれは変わりえます。「言及率100%」も、この1問・54回答の中での値です
- 調査主体が対策サービスの販売会社:AI検索対策を売る会社の調査であり、「AIに選ばれることが重要」という結論は自社の事業とも重なります。数字は事実として参照しつつ、対策の必要性の大きさは自館の予約データで判断するのが筋です
- AIが旅行の入口になっている割合は分からない:この調査は「AIに聞いたら何と答えるか」を測ったもので、実際にAI経由で何件予約されたかは測っていません。予約の入口として検索やOTAアプリが今も大きいことは変わりません
- 答えは日々変わる:調査会社自身も、結果は調査期間時点の傾向だと断っています。モデルの更新や読みにいくページの変化で、来月には別の結果になりえます
- 引用元への過度な働きかけは逆効果:ランキングやまとめ記事に載るために事実と違う情報を流したり、口コミを操作したりすれば、景品表示法上のステルスマーケティング規制や各サイトの規約に触れるおそれがあります。正確な情報をそろえることが基本です
まとめ
生成AIに「国内旅行サイトのおすすめ」を聞くと、じゃらんnet・楽天トラベル・一休.comが必ず名前を挙げられ、その根拠の6割以上はオリコンの顧客満足度ランキングでした。宿の側から読むと、次の3点が実務上の示唆になります。
- AIの推薦は、知名度を土台に、比較サイトやランキング、観光協会などの第三者のページで裏づけられて決まる。自館がそうしたページに正しく載っているかをまず確かめる
- AIは切り口ごとに紹介する。旅行サイトがポイント還元で語られたように、宿も「何の宿か」を1〜2個に絞り、公式サイト・OTA・口コミ返信で同じ言葉を使う
- AIごとに答えが違い、日々変わる。2つ以上のAIで同じ質問を毎月聞き、3か月単位で傾向を見る
AIの答えを直接動かす近道はありません。それでも、AIが読みにいくページを一つずつ正確にしていく作業は、検索やOTAでの見え方の改善にもそのままつながります。月30分の定点観測から始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. この調査は誰が、どのように行ったものですか?
SEO・AI検索対策を手がける株式会社ブランディングワークスが、2026年9月18日〜30日のうち9日間、ChatGPT(gpt-5.1)とGemini(gemini-3.1-pro)にWeb検索を有効にした状態で「国内旅行サイトのおすすめは?」と1日3回ずつ質問し、回答に出た企業名を集計したものです。有効回答は54件です。
Q2. 「言及率100%」とはどういう意味ですか?
54件の回答すべてに、その企業名が登場したという意味です。じゃらんnet・楽天トラベル・一休.comの3社が100%でした。順位は同率の場合、回答内で何番目に挙がったかの平均で決めています。
Q3. AIはオリコンのランキングをそのまま答えているのですか?
そうとは言えません。引用の64.4%はオリコンのサイトでしたが、オリコンで満足度2位のJR東海ツアーズはAIの言及率が37%にとどまり、5位の楽天トラベルは100%でした。知名度を土台に、ランキングを根拠として添えている形に見えます。
Q4. ホテルの公式サイト予約(直販)には関係がありますか?
間接的に関係します。旅行サイト選びの答えの85.2%がポイント還元の切り口で語られており、AIに背中を押されたお客さまは普段使うポイントが貯まるOTAへ向かいやすいと考えられます。直販を伸ばすには、宿そのものを指名してもらう切り口づくりが欠かせません。
Q5. 自館がAIにどう紹介されているかは、どう調べればよいですか?
自館を選んでほしい場面の質問を5つ決め、ChatGPTとGeminiなど2つ以上のAIに毎月同じ質問をし、登場の有無・順番・紹介の切り口・競合・引用元を表に記録する方法が手軽です。結果はぶれるので、3か月単位で傾向を見ます。
Q6. ChatGPTとGeminiでは、どちらを優先して確認すべきですか?
どちらか一方では不十分です。今回の調査でも、トラベルコはChatGPTで78%、Geminiで4%と大きく差が出ました。お客さまがどちらを使うかは選べないため、両方で確認するのが基本です。
Q7. AIに推薦されるために、ランキングサイトに掲載を依頼すべきですか?
まずは、自館が既に載っているページ(OTA、観光協会、地域のまとめ記事など)の情報が正確かを確かめるのが先です。事実と異なる情報を流したり口コミを操作したりすると、ステルスマーケティング規制や各サイトの規約に触れるおそれがあります。
Q8. この調査結果をもとにOTAの契約を見直すべきですか?
この調査はAIの答えを測ったもので、実際の予約件数は測っていません。OTAの見直しは自館の予約経路別の実績で判断し、この調査は「どのOTAのページも手入れしておくべき理由」として使うのが適切です。


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