結論
旅行者がAIに「どのホテルを予約すべき?」と聞く時代では、ホテルの集客は検索順位やOTA上の露出だけでは測れなくなります。
2026年6月に公開された研究では、AIによるホテル推薦で特に強く効いていた要素は、口コミ評価と価格でした。一方で、ホテル側が丁寧に行っている「口コミへの管理者返信」は、少なくとも実験上は推薦確率にほとんど影響していませんでした。
つまり、ホテルが今から見直すべきなのは「AI対策」という新しい裏技ではなく、口コミ評価、価格設計、表示される情報の鮮度、サステナビリティ情報、公式サイトや第三者サイト上の説明品質を、AIにも人間にも伝わる形で整えることです。
この記事では、最新研究をもとに、ホテルのマーケティング担当者・支配人・レベニューマネージャーが何を変えるべきかを整理します。
AIによるホテル推薦は、何が新しいのか
これまでホテル集客の中心には、検索エンジン、OTA、比較サイト、地図サービス、SNS、公式サイトがありました。旅行者は検索結果を見て、複数のホテルを比較し、価格、立地、写真、口コミを読みながら予約先を決めていました。
しかし、生成AIの普及によって、この流れが少しずつ変わっています。旅行者が「東京で家族旅行に向いたホテルを教えて」「京都で静かに過ごせる高級ホテルは?」「出張で使いやすい駅近ホテルを3つ選んで」とAIに聞くと、AIは候補を並べるだけでなく、理由付きで特定のホテルを推薦します。
ここで重要なのは、AIが単なる検索窓ではなく、推薦者として振る舞う点です。従来の検索結果では、旅行者が10件、20件の候補を見比べる余地がありました。ところがAIの回答では、最初から数件に絞られ、ときには1つのホテルだけが「おすすめ」として提示されます。
ホテル側から見ると、これは大きな変化です。検索順位が低い場合は、SEOツールや流入データからある程度の原因を推測できます。OTA上で予約が落ちた場合も、価格、在庫、写真、口コミ、競合との比較を見直せます。しかしAIが自館を推薦しなかった場合、どの候補と比較され、どの条件で負けたのかが見えにくいのです。
2026年6月に公開された論文「Whose hotel does the AI recommend?」は、この見えにくい問題を実験で調べています。研究では、複数のAIモデルに対して、条件を変えたホテル候補を提示し、どのホテルを推薦するかを分析しました。
ホテル経営にとっての問いは、とても実務的です。AIは、どの情報を見てホテルを選ぶのか。口コミ評価なのか、価格なのか、レビュー件数なのか、ブランドなのか、サステナビリティ認証なのか。それとも、ただ先に表示されたホテルを選びやすいのか。
研究で分かった「AIが見ているホテル情報」
この研究では、AIに5つのホテル候補を見せ、その中から1つを推薦させています。各ホテルには、口コミ評価、レビュー件数、レビューの新しさ、管理者返信、チェーン所属、価格、環境認証、表示位置などの情報が付けられました。
ポイントは、これらの条件をランダムに変えていることです。たとえば、あるホテルは高評価だが価格が高い、別のホテルは価格が安いがレビューが古い、さらに別のホテルは環境認証がある、というように条件を組み替えます。そのうえで、AIがどのホテルを選ぶかを観察します。
結果として、特に強く影響していたのは口コミ評価と価格でした。論文の概要では、最上位の評価は推薦確率を31.6ポイント押し上げ、高い価格は30.0ポイント押し下げたとされています。
これは人間の予約行動とかなり近い結果です。旅行者も、まず評価を見ます。そして価格を見ます。高評価で価格が納得できるホテルは選ばれやすく、評価が低いホテルや価格が高すぎるホテルは避けられやすい。AIも、この基本的な判断をかなり強く反映していると考えられます。
一方で、興味深いのは、AIが人間とまったく同じではない点です。研究では、環境認証が比較的強めに評価されていました。レビュー件数も一定の影響を持っていました。ところが、ホテルが口コミに返信しているかどうかは、推薦確率にほとんど影響しませんでした。
もちろん、これをもって「口コミ返信は不要」と考えるのは早計です。口コミ返信は、実際の宿泊者への誠実さを示し、将来の口コミ改善やクレーム抑制につながる可能性があります。人間の読者にとっても、ホテルが問題に向き合っているかを判断する材料になります。
ただし、AIに推薦されるという観点では、返信そのものよりも、評価点、レビュー量、レビューの新しさ、価格の妥当性、施設の特徴が分かる説明文の方が、より直接的に効く可能性があります。
| 要素 | AI推薦への影響 | ホテル側の実務対応 |
|---|---|---|
| 口コミ評価 | 非常に大きい | 現場品質の改善、低評価要因の特定、清掃・接客・設備不備の是正 |
| 価格 | 非常に大きい | 競合比較、需要期と閑散期の価格差、納得感のある料金設計 |
| レビュー件数 | 中程度 | 宿泊後アンケート、自然な口コミ依頼、最新レビューの蓄積 |
| レビューの新しさ | 重要な補助要素 | 古い評価だけに頼らず、直近の宿泊体験を反映させる |
| 環境認証 | 想定以上に強い可能性 | 認証取得の有無、取り組み内容、旅行者に伝わる説明を整備 |
| 管理者返信 | 実験上はほぼ影響なし | AI対策というより、顧客対応・信頼形成として継続 |
| 表示位置 | 内容と無関係に影響する可能性 | 掲載順の偏りを前提に、複数チャネルで情報を整える |
ホテルにとって一番危ない誤解は「AI対策だけやればよい」
AIに推薦されるための対策というと、すぐに「GEO」「LLMO」「AI検索最適化」のような言葉が出てきます。たしかに、生成AIの回答に引用される、推薦される、比較候補に入るための工夫は重要です。
しかし、ホテル業界で危ないのは、AI対策を小手先の文章テクニックとして捉えることです。たとえば、公式サイトにAIが好みそうなキーワードを詰め込む、サステナビリティや地域体験という言葉だけを増やす、実態のない差別化表現を並べる、といった対応です。
今回の研究を見る限り、AI推薦で強く効いているのは、ホテルの根本的な評価と価格です。つまり、AIはきれいな宣伝文だけでなく、旅行者がこれまで重視してきた情報をかなり重く見ています。
ホテル側がまず取り組むべきなのは、AI向けの装飾ではなく、宿泊体験そのものの改善です。清掃のばらつき、チェックインの待ち時間、朝食の混雑、客室設備の古さ、スタッフ対応の不一致、騒音、Wi-Fi品質、空調、浴室のにおい。こうした不満は口コミ評価に反映されます。そして口コミ評価は、AI推薦にも強く影響する可能性があります。
価格も同じです。AIが「このホテルは高すぎる」と判断するかどうかは、単に金額の高低ではなく、周辺ホテル、評価、立地、設備、ブランド、旅行者の目的とのバランスで決まります。高級ホテルなら高価格でも説明がつきますが、評価や体験価値が伴わない高価格は、AIにも人間にも選ばれにくくなります。
AI対策というより、結局は口コミ評価と価格の見直しなんですね。
そうです。AIに選ばれるホテルは、まず人間にも選ばれる理由を持っている必要があります。
AI時代のホテル集客で見直すべき5つの領域
ここからは、ホテルが実務として見直すべき領域を整理します。ポイントは、マーケティング部門だけで完結しないことです。AI推薦に影響しそうな要素は、現場運営、レベニューマネジメント、口コミ管理、公式サイト運用、サステナビリティ情報までまたがります。
1. 口コミ評価を「広報指標」ではなく「経営指標」として扱う
口コミ評価は、単なる評判ではありません。AIがホテルを推薦する時代には、口コミ評価が集客の入口に直接影響する可能性があります。つまり、口コミ評価はマーケティング部門だけが見る数字ではなく、支配人、宿泊部門、料飲部門、清掃責任者、施設管理、レベニューマネージャーが共有すべき経営指標です。
特に見るべきなのは、平均点だけではありません。低評価レビューの理由、直近3カ月の変化、曜日別・客層別の不満、客室タイプ別の不満、外国人旅行者と国内旅行者の評価差を分けて見る必要があります。
たとえば、平均評価が4.3でも、直近レビューで「チェックインが遅い」「部屋の清掃が甘い」「朝食会場が混みすぎる」という指摘が増えていれば、将来の評価低下につながります。AIがレビューの新しさや件数をどう扱うかはモデルによって異なりますが、古い高評価に安心するのは危険です。
実務では、月次会議で口コミ評価を共有するだけでなく、低評価要因を現場改善タスクに変換することが重要です。「清掃の不満が多い」ではなく、「バスルームの髪の毛」「ベッド下の埃」「連泊時の補充漏れ」まで分解し、担当部署と期限を決めるべきです。
2. 価格は「高い・安い」ではなく「説明できるか」で見る
研究では、高い価格がAIの推薦確率を押し下げる大きな要素として示されています。ただし、これは高級ホテルが値下げすべきという意味ではありません。
ホテルの価格は、立地、ブランド、客室面積、設備、食事、眺望、温浴施設、ラウンジ、サービス水準、キャンセル条件、会員特典などの総合価値で判断されます。問題は、価格に対して価値が伝わっていない場合です。
たとえば、同じ2万円台の宿泊料金でも、「駅から徒歩1分」「大浴場あり」「朝食評価が高い」「小学生添い寝無料」「全室洗い場付きバス」などの価値が明確なホテルは、価格の納得感を作りやすくなります。一方で、公式サイトやOTA上の説明が抽象的で、写真も少なく、客室の違いが分かりにくいホテルは、AIにも人間にも価格の理由が伝わりにくくなります。
レベニューマネジメントでは、競合の価格だけでなく、自館の評価点と価格の組み合わせを確認すべきです。評価が競合より低いのに価格が高い場合、AI推薦では不利になる可能性があります。逆に、評価が高く、価格が競合と同水準であれば、強い推薦材料になります。
3. レビュー件数と新しさを自然に増やす
レビュー件数は、評価点ほど強くないものの、ホテルの信頼性を補強します。評価4.7でもレビューが10件しかないホテルと、評価4.6でレビューが2,000件あるホテルでは、後者の方が安定した品質に見えることがあります。
AIにとっても、レビュー件数は「その評価がどれくらい信頼できるか」を判断する材料になり得ます。ただし、レビューを増やすために過度な依頼や誘導をするのは避けるべきです。口コミサイトやOTAの規約に反する行為は、長期的には信頼を壊します。
現実的な方法は、宿泊後の自然なタイミングで口コミ投稿を案内することです。チェックアウト後のメール、会員アプリ、QRコード、フロントでの案内などを使い、満足した宿泊者が投稿しやすい導線を整えます。
また、古いレビューばかりが残っている状態も注意が必要です。改装後、運営改善後、朝食内容の変更後、アメニティ刷新後などは、現在の体験を反映したレビューが増えるように設計すべきです。
4. 公式サイトの情報をAIにも読みやすくする
AI時代のホテル公式サイトでは、人間が読みやすいだけでなく、AIが理解しやすい情報構造も大切になります。これは難しい技術の話ではありません。むしろ、基本的な情報を正確に、具体的に、整理して掲載することです。
たとえば、客室ページには、面積、ベッド幅、定員、バス・トイレの仕様、デスクの有無、コンセント位置、眺望、子ども利用、バリアフリー対応、加湿器や空気清浄機の有無などを明確に書きます。レストランページには、営業時間、朝食内容、混雑しやすい時間、アレルギー対応、子ども向けメニュー、テイクアウト可否などを整理します。
「上質なくつろぎ」「心温まるおもてなし」「非日常の体験」といった表現だけでは、AIにも旅行者にも具体的な判断材料になりません。ホテルの魅力は抽象語ではなく、選ぶ理由として表現する必要があります。
たとえば、次のような情報はAIにも人間にも伝わりやすい内容です。
- 最寄り駅から徒歩何分か
- 空港からの移動方法と所要時間
- 家族旅行、出張、長期滞在、記念日利用のどれに向いているか
- 客室で仕事がしやすいか
- 大浴場やサウナの利用条件
- 朝食の特徴と提供時間
- 周辺観光地へのアクセス
- キャンセル条件やチェックイン前後の荷物預かり
5. サステナビリティ情報は「やっています」ではなく「証明できる形」にする
今回の研究で目を引くのは、環境認証が比較的強いシグナルとして扱われていた点です。これは、AIがサステナビリティを過大評価している可能性もありますし、環境意識の高い旅行者ペルソナに対して強く反応した可能性もあります。
ホテル側として重要なのは、サステナビリティ情報を曖昧に書かないことです。「環境に配慮しています」だけでは不十分です。省エネ設備、食品ロス削減、連泊清掃の選択制、アメニティ削減、地域食材の活用、認証取得、CO2削減の取り組みなどを、具体的に示す必要があります。
ただし、実態以上に見せるのは危険です。AIに推薦されるために環境配慮を誇張すると、宿泊者の期待と現場体験がずれ、口コミで逆効果になる可能性があります。サステナビリティは、広告表現ではなく、運営実態とセットで伝えるべきです。
AI推薦で不利になりやすいホテルの特徴
AI時代に不利になりやすいのは、必ずしも小規模ホテルや独立系ホテルではありません。むしろ、情報が整理されていないホテル、評価の弱点を放置しているホテル、価格の理由を説明できないホテルです。
| 不利になりやすい状態 | なぜ問題か | 改善の方向性 |
|---|---|---|
| 口コミ評価が競合より低い | AIも人間も品質リスクとして見やすい | 低評価要因を現場改善に落とし込む |
| 価格だけが高く見える | 価値の説明がないと候補から外れやすい | 客室・立地・体験価値を具体的に示す |
| レビューが古い | 現在の運営状態が伝わりにくい | 宿泊後の自然な口コミ導線を整える |
| 公式サイトが抽象的 | AIが用途別に推薦しにくい | 家族、出張、記念日など目的別情報を追加する |
| 写真と説明が不足している | 客室差や設備価値が伝わらない | 部屋タイプ別に写真・面積・設備を整理する |
| 強みがOTA任せ | AIが参照する情報が分散し、公式の意図が伝わりにくい | 公式サイトと主要掲載面の情報をそろえる |
ホテルのマーケティング担当者が今すぐ確認すべきチェックリスト
AI推薦への対応は、いきなり大きなシステム投資をするより、現在の情報と運営指標を点検するところから始めるべきです。以下のチェックリストは、マーケティング担当者だけでなく、支配人や現場責任者と一緒に確認すると効果的です。
口コミ・評価のチェック
- 主要OTA、Google、旅行口コミサイトで、自館の平均評価は競合上位5館と比べて高いか
- 直近3カ月の低評価理由を分類しているか
- 清掃、接客、朝食、設備、騒音、価格に関する不満が増えていないか
- レビュー件数は十分にあり、直近レビューも継続的に投稿されているか
- 口コミ返信は定型文ではなく、問題の再発防止につながる内容になっているか
価格・販売のチェック
- 評価点が近い競合と比べて、価格が不自然に高くなっていないか
- 高価格の日に、価格の理由となる価値が表示面で伝わっているか
- 家族、出張、カップル、インバウンドなど客層別に、価格に対する期待値を把握しているか
- キャンセル条件や特典の違いが分かりやすいか
公式サイト・掲載情報のチェック
- 客室ごとの面積、定員、ベッド幅、設備が明記されているか
- 駅、空港、観光地、ビジネス街へのアクセスが具体的に書かれているか
- 「誰に向いているホテルか」が分かる説明になっているか
- OTA、Googleビジネスプロフィール、公式サイトで情報のズレがないか
- 写真が古く、現在の客室や施設と違っていないか
AIに聞かれそうな質問への対応
- 「子連れに向いているか」に答えられる情報があるか
- 「出張で使いやすいか」に答えられる情報があるか
- 「静かに過ごせるか」に答えられる情報があるか
- 「記念日に向いているか」に答えられる情報があるか
- 「サステナブルなホテルか」に答えられる情報があるか
AI時代でも、OTA対策は不要にならない
AIがホテル推薦の入口になっていくとしても、OTA対策が不要になるわけではありません。むしろ、OTA上の情報はAIが参照する候補情報の一部になり得ます。旅行者も、AIで候補を知った後、OTAや公式サイトで価格と空室を確認する可能性が高いでしょう。
したがって、ホテルは「AIかOTAか」ではなく、「AI、OTA、公式サイト、Google、SNSの情報をどう一貫させるか」を考える必要があります。
たとえば、公式サイトではファミリー向けを訴求しているのに、OTAの写真には家族利用のイメージがなく、Googleの口コミでは子ども連れの不満が目立つ。この状態では、AIがファミリー向けホテルとして推薦する理由を見つけにくくなります。
逆に、公式サイト、OTA、口コミ、写真、レビュー返信、周辺情報が同じ方向を向いていれば、AIにも旅行者にもホテルの強みが伝わりやすくなります。これは新しいAI対策というより、チャネル横断の基本整備です。
では、AIに選ばれるために公式サイトだけ整えれば十分ですか?
十分ではありません。AIは複数の情報面を参照する可能性があるため、公式サイト、OTA、口コミ、地図情報の整合性が大切です。
独立系ホテルや中小ホテルにもチャンスはある
AI推薦と聞くと、大手チェーンや有名ブランドだけが有利になるように感じるかもしれません。しかし、今回の研究では、チェーン所属が大きなプラスとして働いたわけではなく、むしろ小さなマイナスとして示されています。
この結果をそのまま一般化することはできませんが、少なくとも「大手ブランドでなければAIに選ばれない」と決めつける必要はありません。独立系ホテルや中小ホテルでも、口コミ評価が高く、価格に納得感があり、特徴が具体的に伝わっていれば、AI推薦で候補に入る余地はあります。
特に独立系ホテルは、地域性、オーナーの思想、建築、食事、温泉、歴史、スタッフの距離感、周辺体験など、チェーンホテルとは違う魅力を持ちやすい立場です。ただし、その魅力が抽象的な文章だけで終わっていると、AIにも旅行者にも伝わりにくくなります。
たとえば「地域に根ざしたホテル」ではなく、「徒歩5分の市場で仕入れた魚を朝食で提供」「地元ガイドと提携した朝のまち歩き」「築80年の建物を改修した全12室の宿」「全室に地元作家の器を設置」のように、具体的な情報に変える必要があります。
AIは、具体的な条件に基づいて推薦します。だからこそ、独立系ホテルは自館の強みを、旅行者の目的別に整理することが重要です。
導入しない方がよいAI対策
AI時代の集客では、やるべきことだけでなく、やらない方がよいこともあります。特に注意したいのは、実態のない情報を増やすことです。
たとえば、サステナビリティに取り組んでいないのに環境配慮を強く打ち出す、家族向け設備が少ないのにファミリー向けを強調する、静かではない立地なのに静寂を売りにする、といった表現です。
AIに拾われることだけを意識して情報を盛ると、宿泊者の期待値が上がり、実際の体験との差が口コミに返ってきます。結果として、もっとも重要な口コミ評価を下げる可能性があります。
また、AI向けの特殊な文章を大量に作る前に、既存の掲載情報を正すべきです。客室面積がサイトによって違う、チェックイン時間が古い、朝食料金が更新されていない、改装前の写真が残っている、閉店したレストランが掲載されている。こうした情報の不整合は、AIにも旅行者にも混乱を与えます。
ホテルが取るべき優先順位
では、ホテルは何から始めるべきでしょうか。優先順位は次の通りです。
- 口コミ評価の改善:低評価要因を分類し、現場改善に落とし込む。
- 価格の納得感づくり:競合比較だけでなく、自館の価値が説明できているかを確認する。
- 最新レビューの獲得:自然な口コミ導線を整え、現在の宿泊体験を反映させる。
- 公式サイトの具体化:抽象表現を減らし、用途別・客層別の判断材料を増やす。
- チャネル情報の統一:公式サイト、OTA、Google、SNSの情報をそろえる。
- サステナビリティ情報の証明:実態に基づく取り組みを具体的に示す。
この順番で見れば、AI対策は特別な部署だけの仕事ではありません。口コミは現場運営、価格はレベニューマネジメント、情報整備はマーケティング、サステナビリティは経営方針と施設運営に関わります。
AI推薦に強いホテルとは、AI向けの文章が上手いホテルではなく、選ばれる理由が明確で、その理由が各チャネルに正しく出ているホテルです。
よくある質問(FAQ)
Q1. AIに推薦されるには、何を最優先で改善すべきですか?
まずは口コミ評価と価格の納得感です。最新研究では、AIによるホテル推薦で口コミ評価と価格が特に強く影響していました。公式サイトの文章改善も重要ですが、現場体験と価格のバランスが弱いままでは効果が限定的です。
Q2. 口コミ返信は意味がないのでしょうか?
意味がないわけではありません。今回の研究では、管理者返信はAIの推薦確率にほとんど影響しませんでしたが、人間の読者に対する信頼形成、クレーム対応、再発防止の姿勢を示すうえでは重要です。AI対策だけを目的にするのではなく、顧客対応として続けるべきです。
Q3. 独立系ホテルは大手チェーンより不利ですか?
必ずしも不利とは限りません。研究では、チェーン所属が大きなプラスとして働いたわけではありません。独立系ホテルでも、口コミ評価が高く、価格に納得感があり、特徴が具体的に伝わっていれば、AI推薦で候補に入る可能性があります。
Q4. 公式サイトには何を書けばよいですか?
客室面積、ベッド幅、設備、アクセス、朝食、周辺観光、子連れ対応、出張向け設備、記念日利用、キャンセル条件など、旅行者が比較に使う情報を具体的に書くべきです。「上質」「快適」だけでは判断材料になりません。
Q5. AI検索対策とSEOは違いますか?
違う部分もありますが、土台は共通しています。正確で具体的な情報、分かりやすい構造、信頼できる外部評価、最新性が重要です。SEOを捨ててAI対策に移るのではなく、検索にもAIにも理解される情報整備を進めるのが現実的です。
Q6. サステナビリティ情報は本当に必要ですか?
必須ではありませんが、今後は差別化要素になる可能性があります。研究では環境認証がAI推薦に比較的強く影響していました。ただし、実態のない環境訴求は逆効果です。認証や具体的な取り組みを、誇張せずに示すことが重要です。
Q7. AIに選ばれるために価格を下げるべきですか?
単純な値下げはおすすめできません。重要なのは、価格に対して価値が伝わっているかです。高価格でも、立地、客室、サービス、体験価値、ブランド、食事などの理由が明確であれば、納得される可能性があります。
Q8. まず社内で誰が担当すべきですか?
マーケティング担当者だけでなく、支配人、宿泊部門、清掃、料飲、レベニューマネジメント、Web担当が関わるべきです。AI推薦に影響する要素は、広告文だけでなく、現場品質、価格、口コミ、情報整備にまたがるためです。
まとめ
AIがホテルを推薦する時代になると、ホテル集客の競争は「検索結果で見つけてもらう」だけでは終わりません。AIの回答の中で候補に入るか、さらに推薦されるかが重要になります。
2026年6月の研究では、AIによるホテル推薦で特に強く効いていたのは口コミ評価と価格でした。レビュー件数、環境認証、表示位置も影響する可能性があり、管理者返信は少なくとも実験上は大きな効果を示しませんでした。
この結果から見えるのは、AI時代のホテルマーケティングが、現場運営と切り離せないということです。AIに選ばれるには、AI向けの言葉を増やすだけでは足りません。宿泊体験を改善し、口コミ評価を高め、価格の理由を明確にし、公式サイトやOTA上の情報を具体的に整える必要があります。
ホテルが今から取り組むべきことは、難しいAI技術の導入だけではありません。自館が誰に、なぜ選ばれるのか。その理由を現場で作り、情報として正確に出すことです。AI時代の集客戦略は、そこから始まります。


コメント