帝国ホテルの建て替えはいつ?タワー館は営業再開、本館は時期未定【2026年11月】

ホテル業界のトレンド
この記事は約11分で読めます。

結論

帝国ホテル 東京の建て替えは、当初の予定から大きく後ろへずれ、新しい建物が完成する時期は「未定」になりました。2026年11月時点の公式発表を整理すると、次のとおりです。

  • タワー館(1983年完成):解体工事の着工を、2024年度中から2030年度末頃に延期(2026年3月27日発表)。それまでの間は、全客室・宴会場とオフィス・商業テナントの営業を再開している
  • 本館(1970年完成):営業を続ける。建て替えの時期は未定
  • 新タワー・新本館:竣工時期はいずれも未定(2026年5月14日の中長期経営計画の改訂版)。当初は新タワーが2030年度、新本館が2036年度の完成予定だった
  • 隣の中地区で建設中のNTT日比谷タワー(2031年度竣工予定)に、帝国ホテルとは別の新ブランドのスモールラグジュアリーホテルと大宴会場を出す計画は続いている
  • 2026年10月29日の中間決算では、タワー館の客室の販売再開で東京の宿泊売上が過去最高になった一方、テナントの呼び戻しなどで不動産賃貸事業は赤字だった

はじめに

「帝国ホテルの建て替えはいつ?」「もう閉館するの?」という疑問は、計画が発表された2021年から何度も検索されてきました。ところが、その答えはこの1年で大きく変わっています。2024年に営業を終えるはずだったタワー館は、いまも客室を売り、新しいテナントを迎えています。

本記事では、帝国ホテルの適時開示と決算説明資料をもとに、建て替え計画の経緯と現在地を整理し、「壊す予定の建物で営業を続ける」ときに運営側が何を決めなければならないかをまとめます。延期の背景にある建築費の問題は帝国ホテルの解体はなぜ6年延期?でも扱っています。

編集部員
編集部員
タワー館って、もう閉まったんじゃなかったんですか?
編集長
編集長
一度はテナントを退去させて、客室も一部だけの営業になっていた。でも解体が6年先に延びたから、空けた建物をもう一度稼がせることにしたんだ。これがなかなか大変なんだよ。

建て替え計画の経緯:5年で何が変わったか

発表日内容
2021年3月25日建て替え計画の実施方針と、三井不動産との基本合意を発表。タワー館を2024〜2030年度、本館を2031〜2036年度に建て替える計画で、周辺の内幸町一丁目街区の再開発と一体で進める
2023年7月28日タワー館の営業終了を発表。ホテルの営業は2024年6月末まで、オフィス・商業は2024年3月末まで
2024年5月10日一部を変更。客室の一部と宴会場は、解体工事の着工(2024年度中の予定)まで暫定的に営業を続ける
2026年3月27日解体工事の着工を2030年度末頃に見直し。それまで、タワー館の全ての客室・宴会場等と不動産賃貸事業の営業を行う
2026年5月14日中長期経営計画を改訂。2026〜2030年度を「タワー館営業再開・京都本格稼働期間」とし、タワー館と本館の建て替え期間、新タワー・新本館の竣工時期を未定とした
2026年10月29日中間決算。タワー館の客室の販売再開で、帝国ホテル 東京の宿泊売上が上期として過去最高に

2026年3月の発表が分かれ目です。それまでは「近く解体するので、営業は縮めながら最小限に続ける」方針でしたが、ここで「解体までの約5年は、建物をフルに使って稼ぐ」方針に切り替わりました。

2026年11月時点の現在地

建物・計画現在の状況(公式発表による)
タワー館全客室・宴会場を営業。地下1階の旧レストラン街と、1〜4階の「帝国ホテルプラザ 東京」の跡に新しいテナントの入居が決まった。1〜4階の約2,000坪では、2027年夏から2031年3月まで、カルチャー施設「NOT A MUSEUM」を期間限定で運営する計画(2026年10月5日発表)。解体着工は2030年度末頃が目標
本館営業を継続。建て替えの期間は未定
新タワー地上46階・地下4階。賃貸住宅、サービスアパートメント、オフィス、商業・料飲施設。三井不動産との共同事業。竣工時期は未定
新本館一棟建てのグランドホテル(ホテル・宴会場・料飲施設)。デザインは田根剛氏(Atelier Tsuyoshi Tane Architects)。竣工時期は未定
中地区NTT日比谷タワー(2031年度竣工予定)の高層階に、帝国ホテルとは異なる新ブランドのスモールラグジュアリーホテル(宿泊特化型)、低層階に1,000㎡超の大宴会場と300㎡規模の中宴会場

改訂後の中長期経営計画は、今後を3つの期間に分けています。

  1. タワー館営業再開・京都本格稼働期間(2026〜2030年度):全社の稼ぐ力を高め、建て替えに向けたキャッシュを確保する
  2. 現本館+中地区ホテル営業期間(タワー館の建て替え期間):期間は未定。建て替え中の営業継続と雇用の確保が課題
  3. 新タワー+中地区ホテル営業期間(本館の建て替え期間):期間は未定。新本館の開業に向けた準備

2と3の期間は「現時点で未決定であり、1の期間に検討を進める」と書かれています。つまり、建て替えの日程は2030年度までに改めて決める、というのが会社の公式の立場です。

なぜ延びたのか:会社の説明

2026年3月27日の発表は、見直しの理由を次のように説明しています。

  • 内幸町一丁目街区の再開発計画の進み具合
  • 建築費、労務費、エネルギー価格などの物価の動きと、近時の社会環境の影響
  • それらを踏まえ、より質の高い事業計画を検討するのに要する期間

建築費が上がった局面では、同じ規模の建物を建てるのに必要な投資が膨らみ、完成後の賃料や客室単価で回収できるかどうかの計算が合いにくくなります。帝国ホテルの計画は、ホテルだけでなく三井不動産と組む賃貸住宅・オフィスを含む大型の再開発です。周辺の事業者の工程とも関わるため、一社の都合だけでは日程を決められません。

中長期経営計画の「はじめに」には、別の切実な事情も書かれています。競合する新しいホテルの開業が相次ぎ、ハードウェアの差が広がって、従業員の努力だけでは十分に満足してもらうことが難しくなってきた、という認識です。建て替えをやめたわけではなく、先送りしながらも、その間をどう戦うかが問われています。

編集部員
編集部員
延期したなら、その間に本館を改装すればいいのでは?
編集長
編集長
そこが難しい。いずれ壊す建物に大きなお金をかけても、回収する前に解体が来てしまう。だから「営業を保つのに要る設備だけ直す」と計画に書いてあるんだ。

決算に出た「営業再開」の損得

2026年10月29日に発表された中間期(2026年4〜9月)の決算説明資料から、タワー館の営業再開に関わる数字を抜き出します(金額は百万円未満切り捨て)。

項目2026年4〜9月(前年同期比)
東京の宿泊売上59億05百万円(+15.6%)。タワー館の客室の販売再開で売れる客室が増え、インバウンドも好調で上期として過去最高
東京の賃貸12億38百万円(+42.7%)
賃貸事業不動産賃貸事業のセグメント売上5億41百万円(+172.2%)、セグメント利益は3億93百万円の赤字(前年は66百万円の黒字)
連結売上高280億14百万円(+10.2%)。帝国ホテル 京都の開業とタワー館のテナント再誘致が寄与
営業利益1億29百万円(−59.5%)。京都開業の初期費用とタワー館の再開に伴う投資が響いた
予想比期初の予想との比較。営業利益は予想0円に対し1億29百万円。タワー館の営業再開で利益率が想定より上がった

読み取れるのは、客室は再開した分だけすぐに稼げるが、テナントで埋める側は先にお金が出ていくということです。いったん退去させた区画に新しいテナントを入れるには、内装や設備の手当て、募集の費用がかかり、賃料が入り始めるまで時間がかかります。一方の客室は、運営体制を戻せばその日から販売できます。

会社は2026年度の目標を売上614億円・EBITDA59億円、2027〜2030年度を売上620億円以上・EBITDA70億円以上としています。解体までの約5年で、建て替えに向けたキャッシュをどれだけ積めるかが、この期間の評価になります。

「壊す予定の建物」で営業を続けるときの運営の論点

帝国ホテルの例は規模が大きいものの、建て替えや大規模改修が数年先に決まっているホテルなら、どこでも同じ問題に向き合います。中長期経営計画に書かれた方針も手がかりに、運営側が決めておくことを並べます。

1. 投資をどこで線引きするか

計画には「建て替え着手までの営業体制維持に必要な基幹設備等の整備・更新」とあります。解体までの残り年数で回収できる投資と、営業を続けるために避けられない更新(空調・給排水・電気・昇降機・防災設備など)を分け、客室の全面改装のような長期の投資は見送るのが基本です。ただし、ゲストから見て古さが目立つ部分(寝具、照明、水回りの小さな不具合)は、少額で印象が変わるため後回しにしすぎないことです。建物の寿命の考え方はホテルの耐用年数とはで整理しています。

2. テナントとの契約に「終わり」を書く

解体が前提の建物に入るテナントとは、解体の時期に合わせて確実に終わる契約が必要です。普通の建物賃貸借では、貸主から更新を断るのに正当事由が要り、立ち退きが長引くおそれがあります。期間の満了で終わる定期建物賃貸借(借地借家法第38条)を使い、取り壊しの予定や原状回復の範囲を最初に書いておくことです。タワー館の1〜4階で2027年夏から始まる「NOT A MUSEUM」も、2031年3月までの期間限定で、解体着工の目標時期(2030年度末頃)にそろえた形になっています。帝国ホテルプラザ 東京では2026年10月、館内のギャラリーが展示の批判を受けて閉廊しました。テナントの撤退と契約の考え方は帝国ホテル内ギャラリーが閉廊と館内テナント展示の事前確認と線引きで解説しています。

3. 予約と婚礼をいつまで受けるか

婚礼や大型の宴会、国際会議は1年以上前に決まります。解体の着工日が確定するまでは、どの日付まで予約を受けるかを決め、受けるなら変更や移転の条件を契約に入れておく必要があります。帝国ホテルの場合は本館が営業を続けるため、タワー館の宴会場の予約を本館側へ移す受け皿があるのが強みです。

4. 人を減らさず、移す

計画は、タワー館の建て替え期間の重点課題を「建て替え中の営業継続と雇用の確保」としています。タワー館が閉まれば客室も宴会場も減りますが、その時期に中地区の新ホテルが開業すれば、人を移す先ができます。閉館と開業の時期が近いほど、経験のある人材を手放さずに済むのです。逆に、新しい建物の完成時期が決まらないまま閉館だけが来ると、人の流出が一番の損失になります。

5. 新しい競合が先に建つ期間をどう戦うか

建て替えを先送りしている間にも、周辺には新しいホテルが開業します。中地区のホテル(2031年度)は自社の新ブランドですが、それ以外にも日比谷・銀座・丸の内には新しい高級ホテルが続いています。ハードで差を付けられない期間は、会員組織や顧客情報を使った「人に付く」強みを固める時期になります。帝国ホテルは2027年春以降に会員組織を「インペリアルメンバーシップ」として刷新し、上期にはLHW(ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド)への加盟やアメリカン・エキスプレスの上級会員向けプログラムへの参加も進めました。

まとめ

  • 帝国ホテル 東京のタワー館は、解体着工を2030年度末頃に延ばし、それまで全客室・宴会場とテナントの営業を再開している
  • 本館は営業を続け、建て替えの時期は未定。新タワー・新本館の竣工時期も未定で、日程は2030年度までに改めて検討される
  • 延期の理由は、再開発の進み具合、建築費・労務費・エネルギー価格などの物価の動き、質の高い事業計画の検討に要する期間
  • 2026年上期は、タワー館の販売再開で東京の宿泊売上が過去最高。一方でテナントの呼び戻しにかかる費用で不動産賃貸事業は赤字だった
  • 壊す予定の建物で営業を続けるときは、投資の線引き、テナント契約の終わり方、予約を受ける期限、人の移し方、ハードの差を埋める顧客施策を先に決めておく

よくある質問(FAQ)

Q1. 帝国ホテル 東京の建て替えはいつですか?

タワー館は解体工事の着工を2030年度末頃に目指しています。本館の建て替え時期と、新タワー・新本館の竣工時期は、2026年5月の中長期経営計画の改訂版で「未定」とされました。当初の計画は、新タワーが2030年度、新本館が2036年度の完成でした。

Q2. 帝国ホテルは閉館するのですか?いつまで泊まれますか?

閉館は発表されていません。本館は営業を続けます。タワー館は解体工事の着工(2030年度末頃が目標)に合わせて営業を終える予定ですが、それまでは全ての客室と宴会場を営業しています。「2030年に閉館」と決まったわけではありません。

Q3. タワー館は営業していますか?

営業しています。2024年には一部の客室と宴会場だけを暫定的に営業していましたが、2026年3月の見直しで、全ての客室・宴会場と、オフィス・商業テナントの営業を行うことになりました。2026年上期には、地下1階の旧レストラン街と1〜4階の旧「帝国ホテルプラザ 東京」に新しいテナントの入居が決まり、1〜4階では2027年夏から2031年3月までカルチャー施設「NOT A MUSEUM」が期間限定で開く予定です。

Q4. なぜ建て替えが延期されたのですか?

会社は、内幸町一丁目街区の再開発計画の進み具合、建築費・労務費・エネルギー価格などの物価の動き、近時の社会環境の影響を踏まえ、より質の高い事業計画を検討するのに時間が要ると説明しています。

Q5. 新しい本館はどんな建物になりますか?

一棟建てのグランドホテルで、ホテル・宴会場・料飲施設が入る計画です。デザインは建築家の田根剛氏が担当しています。竣工時期は未定です。

Q6. NTT日比谷タワーにできるホテルは帝国ホテルですか?

帝国ホテルが運営しますが、ブランドは「帝国ホテルとは異なる新ブランド」で、宿泊に特化したスモールラグジュアリーホテルの計画です。建物の竣工は2031年度の予定で、低層階には帝国ホテルの宴会場(1,000㎡超の大宴会場と300㎡規模の中宴会場)が入ります。

Q7. 帝国ホテルの業績に建て替えの延期はどう響いていますか?

2026年4〜9月は、タワー館の客室の販売再開で東京の宿泊売上が59億05百万円と過去最高でした。一方、京都開業の初期費用やタワー館の再開に伴う投資で、連結の営業利益は前年同期比59.5%減の1億29百万円でした。

出典:株式会社帝国ホテル「(開示事項の変更)『帝国ホテル東京 タワー館営業終了に関するお知らせ』の一部変更について」(2026年3月27日)、同「中長期経営計画改訂のお知らせ」「中長期経営計画(2026年度改訂版)」(2026年5月14日)、同「2027年3月期第2四半期(中間期)決算説明資料」「業績予想との差異に関するお知らせ」(2026年10月29日)、同「帝国ホテル東京 建て替え計画の実施方針及び基本合意書の締結に関するお知らせ」(2021年3月25日、報道による)、Impress Watch「帝国ホテル東京 タワー館、24年6月末に営業終了」(2023年7月)、NOT A CITYほか「『NOT A MUSEUM』が誕生へ」(2026年10月5日)

コメント

タイトルとURLをコピーしました