結論
宿泊税の定率制は、「1泊いくら」と金額を決める定額制と違い、宿泊料金に税率をかけて税額を決める方式です。高い部屋ほど税額が上がり、同じホテルでも日によって税額が変わります。
- ニセコ町:2026年11月1日から、段階的な定額制を宿泊料金の3%に切り替える。定額制から定率制への変更は全国で初めて
- 倶知安町:2019年11月から定率制で、2026年4月1日に2%から3%に引き上げ済み
- 東京都:2027年4月1日から、100円・200円の定額制を3%に変える。1人1泊1万3千円未満は課税しない。簡易宿所と民泊も対象に加える
- 沖縄県:2027年2月1日から、宿泊料金の2%(上限2,000円)で新たに課税する
東京都の場合、1人1泊5万円の宿泊は、いまの200円から1,500円になります。定率制に変わると、ホテルの側では宿泊者ごと・泊ごとに税額を計算する仕組みが要ります。プランの料金を素泊まり部分と食事部分に分けて持つこと、PMSと予約サイトの設定、料金の表示、申告の様式の変更に、今から手を付けておく必要があります。
はじめに
宿泊税は、ここ数年で導入する自治体が一気に増えました。これまでは「1人1泊200円」のような定額制が大半でしたが、2026年から2027年にかけて、定率制への切り替えが相次ぎます。その先頭が、11月1日のニセコ町です。総務省は2026年3月27日に同町の変更に同意しており、変更の資料には「令和8年11月1日 条例施行(予定)」と書かれています。
都内のホテルにとっては、2027年4月の東京都の切り替えが本番です。東京都の宿泊税条例の改正案は2026年3月27日に都議会で可決され、6月30日に総務大臣が同意しました。本記事では、総務省と東京都の公表資料をもとに、定率制のしくみと、ホテルがやっておくべき準備をまとめます。課税免除(修学旅行など)の扱いは宿泊税の免除:修学旅行と部活の合宿で取り上げました。
定率制を採る自治体と開始時期
| 自治体 | 税率 | 開始・変更 |
|---|---|---|
| 倶知安町 | 3% | 2019年11月に2%で導入、2026年4月1日に3%へ |
| ニセコ町 | 3% | 2026年11月1日に定額制から変更 |
| 野沢温泉村 | 3.5%(県税分を含む) | 長野県の宿泊税(2026年6月1日開始)と合わせて課税。2029年6月から5.0% |
| 沖縄県 | 2%(上限2,000円) | 2027年2月1日 |
| 東京都 | 3% | 2027年4月1日に定額制から変更 |
- ニセコ町・倶知安町:北海道も2026年4月から道税の宿泊税を課していますが、両町では、町が受け取った宿泊税の中から道税分を納入するしくみです(両町の宿泊税の使途に「納入に要する費用」が含まれている)。宿泊者が払うのは、宿泊料金の3%です
- 沖縄県:石垣市・名護市・宮古島市・本部町・恩納村・北谷町では、県税0.8%(上限800円)と市町村税1.2%(上限1,200円)の合計2%になり、申告・納入はその市町村に行います
- 野沢温泉村:1人1泊6,000円未満の宿泊は課税されません(長野県の案内による)
このほかにも定率制を検討している自治体があります。導入前の自治体は、条例と規則が決まった段階で確かめてください。
東京都の計算の決まり
改正後の東京都宿泊税条例の決まりは、次のとおりです。
- 課税標準は、1人1泊当たりの宿泊料金(第4条)。宿泊料金は、食事料金などを含まない、いわゆる素泊まりの料金
- 課税標準額に100円未満の端数があるときは切り捨てる(第4条第3項)
- 税額は、課税標準額に100分の3をかけた金額(第4条の2)
- 宿泊料金が1人1泊1万3千円未満の宿泊には課さない(第3条)
- 課税対象に、旅館・ホテルに加えて簡易宿所、特区民泊、新法民泊を加える(第2条)
たとえば、1人1泊の宿泊料金が23,456円なら、課税標準額は23,400円、税額は702円です。1室30,000円の部屋に2人で泊まるなら、1人当たり15,000円なので、税額は1人450円、2人で900円になります。
税額の早見表(東京都、1人1泊)
| 宿泊料金 | 現行 | 2027年4月から |
|---|---|---|
| 9,000円 | 0円 | 0円 |
| 12,000円 | 100円 | 0円 |
| 13,000円 | 100円 | 390円 |
| 15,000円 | 200円 | 450円 |
| 20,000円 | 200円 | 600円 |
| 30,000円 | 200円 | 900円 |
| 50,000円 | 200円 | 1,500円 |
| 100,000円 | 200円 | 3,000円 |
現行は1万円未満が0円、1万円以上1万5千円未満が100円、1万5千円以上が200円です。1万円以上1万3千円未満の宿泊は、税額が100円から0円に下がります。一方、高価格帯ほど負担が大きく増え、1人1泊10万円の宿泊では15倍になります。都は、見直し後の税収を年190億円程度と試算しています。
ホテルがやっておく準備
1. プランの料金を「素泊まり」と「食事」に分けて持つ
定率制では、宿泊料金そのものが税額の土台になります。1泊2食付きや朝食付きのプランは、素泊まりの部分がいくらかを説明できるようにしておかなければなりません。料金表、PMSの料金コード、予約サイトのプランの内訳を見直し、素泊まり部分と食事部分を分けて記録する形にそろえます。宴会や婚礼とのパッケージ、駐車場付きのプランなども同じです。何を宿泊料金に含めるか(サービス料、入湯税、消費税など)は、自治体の手引で確認してください。
2. PMSと予約システムの計算を設定する
定額制では「料金の区分に応じて100円か200円」で済みましたが、定率制では次の計算が要ります。
- 1室の料金を宿泊人数で割って、1人1泊当たりの料金を出す
- 課税しない基準(東京都は1万3千円未満)を1人当たりで判定する
- 端数の処理(東京都は課税標準額の100円未満を切り捨て)と、上限(沖縄県は2,000円)を反映する
- 連泊で日ごとに料金が違う場合は、泊ごとに計算する
- 人数の変更、泊数の短縮、キャンセル、アップグレードのたびに計算し直す
PMSやサイトコントローラー、予約エンジンの各社が、施行日までに対応版を出すかどうかを早めに確かめます。東京都の施行は2027年4月1日ですが、4月以降の宿泊の予約はすでに受け付けているはずです。予約時点の見積もりやOTAの表示を、いつから定率制で出すかも決めておきます。
3. 料金の表示と、宿泊客への説明
宿泊税は宿泊料金とは別に預かる税金なので、OTAや自社サイトでは「宿泊税別」と表示するのが一般的です。定率制では金額が予約ごとに違うので、予約の確認画面や確認メールで税額を示すと、チェックイン時の問い合わせが減ります。訪日客向けには、英語で「Accommodation tax: 3% of the room rate per person per night」といった説明を用意しておきます。領収書で宿泊税を区分する理由は徹底解説:宿泊税の会計処理と消費税で解説しています。
4. 料金設定の段差を見ておく
東京都では、1人1泊1万3千円を境に税額が0円から390円に変わります。客室単価(ADR)が1万円台前半のホテルでは、料金を自動で調整する仕組みが、知らないうちにこの境目を行き来することになります。境目の前後で予約の動きが変わるかは、施行後のデータで確かめるしかありませんが、少なくとも税込みで比べられる予約サイトでの見え方は把握しておきます。客室単価の考え方は用語解説:稼働率・ADR・RevPARとはで整理しています。
5. 申告と事務の変更を確かめる
東京都では、納入申告書に課税標準額の総額を書く欄が加わります(第7条)。あわせて、事業者の負担を減らすための見直しも行われます。
- 3か月に一度の申告(特例申告)は、これまでの「年間の納入額120万円以下」という要件をなくし、納入額にかかわらず選べるようにする
- 申告納入の様式を簡単に作れるアプリを提供する
- 申告納入額の2.5%を交付している特別徴収交付金は、交付の上限をなくし、申告納入額に応じて交付する仕組みに広げる
ニセコ町のホテルが11月1日に確かめること
ニセコ町では、11月1日から宿泊料金の3%になります。冬のハイシーズンを前にした切り替えなので、次の点を今週中に確かめておきます。
- どの宿泊から3%か:施行日以後の宿泊が対象になるのが一般的です。予約を受けた日ではなく宿泊日で判断するか、町の案内で確かめ、予約確認の文面をそろえる
- すでに受けた予約の見積もり:定額で案内していた冬の予約は、宿泊税の金額が変わる。長期滞在の多い地域なので、差額の説明を前もって送っておく
- 課税免除:修学旅行等の参加者と引率者、認定こども園・保育所等の行事の参加者などは免除。変更の資料では、免除の変更は2026年4月1日施行とされている
総務省の資料では、ニセコ町の宿泊税収は平年度で約2.6億円、倶知安町は約7.5億円と見込まれています。
まとめ
- 定率制は、宿泊料金に税率をかける方式。ニセコ町は2026年11月1日に3%、東京都は2027年4月1日に3%、沖縄県は2027年2月1日に2%(上限2,000円)
- 東京都は、1人1泊の素泊まり料金を課税標準にし、100円未満を切り捨てて3%をかける。1万3千円未満は課税しない
- 1人1泊5万円なら税額は200円から1,500円に。1万円以上1万3千円未満は100円から0円に下がる
- ホテルは、プランの素泊まり部分の切り分け、PMSと予約システムの計算、料金の表示、申告の様式の変更を、施行前に済ませる
- 判定は1人当たり。2人で泊まる部屋の料金の付け方は、1万3千円の段差を意識する
よくある質問(FAQ)
Q1. 東京都の宿泊税は、いつから定率制になりますか?
2027年4月1日からです。改正条例は2026年3月27日に都議会で可決され、2026年6月30日に総務大臣が同意しました。
Q2. 東京都の定率制では、いくらから課税されますか?
1人1泊当たりの宿泊料金(素泊まり)が1万3千円以上の宿泊に、3%が課されます。1万3千円未満の宿泊には課税されません。現行の基準は1万円未満です。
Q3. 1室2名の場合、税額はどう計算しますか?
東京都の条例は「1人1泊当たりの宿泊料金」を課税標準にしているので、1室の料金を人数で割った1人当たりの料金で判定します。たとえば1室30,000円に2人なら、1人15,000円で税額は450円、2人で900円です。
Q4. 端数はどう処理しますか?
東京都は、課税標準額(1人1泊当たりの宿泊料金)の100円未満の端数を切り捨ててから3%をかけます。宿泊料金23,456円なら、23,400円×3%=702円です。端数の処理は自治体によって違うので、それぞれの条例と手引で確認してください。
Q5. ニセコ町では北海道の宿泊税も別にかかりますか?
ニセコ町と倶知安町では、町の宿泊税(宿泊料金の3%)の中から道税分を納入するしくみになっており、宿泊者が払うのは3%です。町の宿泊税の使途に、この納入に要する費用が含まれています。
Q6. 定率制で、ホテルの事務の負担は増えますか?
宿泊者ごと・泊ごとに税額を計算するので、システムの設定と料金データの整理の手間は増えます。東京都は、3か月ごとの特例申告を納入額にかかわらず選べるようにするほか、申告用のアプリの提供、特別徴収交付金の上限撤廃で負担を減らすとしています。
出典:総務省「北海道ニセコ町『宿泊税』の変更」(2026年3月27日)、同「北海道倶知安町『宿泊税』の変更」(2025年7月31日)、東京都主税局「宿泊税の見直しについて」「東京都宿泊税条例 新旧対照表(抄)」「東京都宿泊税条例施行規則 新旧対照表(抄)」、沖縄県「沖縄県宿泊税に関するお知らせ(教育関係者の皆様へ)」、長野県「宿泊税に関するお知らせ 教育関係の皆様へ」、北海道新聞「ニセコ町宿泊税を定率制に変更」、共同通信(2025年11月)


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