結論
岐阜県高山市のJR高山駅周辺に、大手のホテルが2軒続けて開業します。2026年10月26日に三井不動産が、28日にマリオット・インターナショナルなど4社が発表しました。
| ホテル(開業) | 概要 |
|---|---|
| コートヤード・バイ・マリオット飛騨高山 2028年秋 | 207室、鉄骨造・地上8階(延べ約11,000㎡)。高山市花岡町、高山駅から徒歩圏。オールデイダイニング、バー、フィットネス、大浴場。積水ハウスとJR東日本伊藤忠不動産開発が開発し、パシフィカホテルズが運営 |
| 三井ガーデンホテル(仮称:岐阜県高山市ホテル計画) 2029年初頭 | 187室、鉄骨造・地上8階(延べ8,688.26㎡)。高山市花里町、高山駅から徒歩約2分。レストラン・バー、最上階に温浴施設。三井不動産と三井不動産ホテルマネジメント。2026年10月に着工 |
2軒で約400室(394室)が、2028年秋から2029年初頭にかけて駅前に加わります。どちらも岐阜県にとって初めてのブランドです。
- 需要は伸びている:高山市の外国人宿泊者数は2025年に97万8,312人で、前年より27.1%増え、2019年(61万2,204人)の約1.6倍になった
- ただし季節の差が大きい:外国人宿泊者は春と秋の高山祭がある4月・10月に月10万人を超える一方、6月は約5万6千人にとどまる。新しい400室は、閑散期の料金に効いてくる
- 2軒とも大浴場・温浴施設を持つ:「大浴場があること」は、もう地元の宿だけの強みではなくなる
はじめに
飛騨高山は、古い町並みと高山祭に加え、白川郷、上高地、金沢・富山への広域観光の拠点として、訪日客の増え方が特に大きい観光地です。その駅前に、外資ブランドのホテルと三井ガーデンホテルズが続けて入ってくることになります。
本記事では、2軒の発表資料をもとに概要と事業の組み方を整理し、高山市の統計で需要の伸びと季節の差を確かめたうえで、既存の旅館・ホテルが開業までの2年あまりで打てる手をまとめます。2027年に全国で開業するホテルは【2027年】新規開業ホテル一覧に、地方の観光地への大手の出店の例は【2027年】星野リゾートの新規開業一覧にもまとめています。
2軒のホテルの概要
コートヤード・バイ・マリオット飛騨高山(2028年秋)
マリオット・インターナショナル、積水ハウス、JR東日本伊藤忠不動産開発、パシフィカホテルズの4社が2026年10月28日に発表しました。コートヤード・バイ・マリオットの岐阜県への進出は初めてです。
- 所在地:岐阜県高山市花岡町1丁目42番2ほか(JR高山駅から徒歩圏)
- 規模:鉄骨造・地上8階、延べ床面積約11,000㎡、スイートを含む207室
- 施設:日本料理とインターナショナル料理のオールデイダイニング(セミオープンキッチン)、バー、フィットネス、大浴場。仕事や休息、交流に使える共用スペースも計画
- 想定する客:ビジネスとレジャーの両方
三井ガーデンホテル飛騨高山(仮称、2029年初頭)
三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントが2026年10月26日、「(仮称)岐阜県高山市ホテル計画」の着工を発表しました。三井ガーデンホテルズの岐阜県への出店は初めてです。
- 所在地:岐阜県高山市花里町四丁目69ほか(JR高山駅から徒歩約2分)
- 規模:鉄骨造・地上8階、延べ床面積8,688.26㎡、187室(予定)。設計・施工は大和ハウス工業
- 施設:レストラン・バー、最上階に山並みと市街地を望む温浴施設
- 想定する客:国内外の観光客。グループやファミリーでの滞在にも対応。飛騨の木工文化を思わせる内装
誰が建てて、誰が運営するか
2軒は、事業の組み方がまったく違います。
| 項目 | コートヤード/三井ガーデン |
|---|---|
| 開発 | 積水ハウスとJR東日本伊藤忠不動産開発の共同開発/三井不動産 |
| 運営 | パシフィカホテルズ(外資系ホテルの運営を受け持つ専業の運営会社)/三井不動産ホテルマネジメント(グループ会社) |
| ブランド | マリオット(会員プログラム「Marriott Bonvoy」)/三井ガーデンホテルズ(自社ブランド) |
コートヤードは、開発する会社、運営する会社、ブランドを貸す会社が分かれた形です。パシフィカホテルズは、フェアフィールド・バイ・マリオット大阪難波やモクシー京都二条などを運営する、外資ブランドの運営を専門に受け持つ会社です。JR東日本伊藤忠不動産開発は、JR東日本不動産と伊藤忠都市開発が2026年10月1日に経営統合してできた会社で、積水ハウスとマリオットは「Trip Base 道の駅プロジェクト」などでも組んでいます。
三井ガーデンホテルは、開発から運営、ブランドまでを三井不動産グループで持つ形です。どちらが有利というより、地方の観光地でも「外資ブランド+専業の運営会社」と「国内大手の一貫型」の両方が成り立つ需要がある、と大手が判断したことが読み取れます。運営の契約の形はHMA(ホテルマネジメント契約)とはで整理しています。
高山の宿泊需要:伸びと季節の差
高山市の「外国人観光客宿泊統計」(市内宿泊施設への聞き取り調査)によると、外国人宿泊者数は次のように推移しています。
| 年 | 外国人宿泊者数 |
|---|---|
| 2019年 | 61万2,204人 |
| 2023年 | 45万2,500人 |
| 2024年 | 76万9,743人(前年比170%) |
| 2025年 | 97万8,312人(前年比127%) |
2025年はコロナ前の2019年の約1.6倍で、同じ年の訪日客全体の伸び(前年比116%)を上回りました。大手2社の出店は、この伸びを見たものと考えられます。
一方、月ごとに見ると差が大きいことも分かります。
| 2025年の月 | 外国人宿泊者数 |
|---|---|
| 4月(春の高山祭) | 10万7,423人 |
| 6月 | 5万6,402人(年間で最少) |
| 10月(秋の高山祭) | 11万2,775人(年間で最多) |
| 12月 | 7万2,495人(前年比▲0.1%) |
最も多い10月と最も少ない6月で、2倍の差があります。また12月は前年並みにとどまり、伸びが一様ではないことも分かります。新しい約400室が開業後に埋まりにくいのは、6〜9月の梅雨から夏、そして冬の平日です。
高山に泊まる訪日客はどこから来るか
同じ統計の国・地域別の数字を見ると、高山の訪日客は、アジアの近い国と、欧米豪の遠い国の両方から来ていることが分かります。2025年の上位は次のとおりです。
| 国・地域 | 2025年の外国人宿泊者数(前年比) |
|---|---|
| 台湾 | 11万9,595人(115%) |
| 中国 | 9万1,906人(146%) |
| アメリカ | 5万8,775人(124%) |
| スペイン | 5万2,730人(124%) |
| イギリス | 3万7,760人(118%) |
| タイ | 3万7,002人(99%) |
| オーストラリア | 3万5,454人(100%) |
| 香港 | 3万2,676人(65%) |
| イタリア | 3万717人(116%) |
地域別の割合では、アジアが37.7%、ヨーロッパが22.5%、北米が7.2%、オセアニアが4.0%で、国・地域が分からない「その他」が25.3%あります。読み取れる点は3つです。
- 欧米豪の比率が高い:北米・ヨーロッパ・オセアニアで3割を超える。滞在が長く、周遊の途中に泊まる客が多い層で、マリオットの会員プログラムが効きやすい客でもある
- 同じアジアでも動きが分かれる:中国は146%と大きく伸び、香港は65%と大きく減った。タイ、韓国、シンガポールは前年並みか微減
- 月の差は国の構成でも変わる:1月は前年比+83.2%と最も伸びた。冬の雪景色を目当てにした客が増えていると考えられ、閑散期の作り方の手がかりになる
新しい2軒が取りにいくのも、この訪日客です。既存の宿は、自館の客がどの国・地域から来ているかを予約データで確かめ、新しいホテルと重なる層と重ならない層を分けて考えると、打つ手が具体的になります。
開業までのスケジュールを逆算する
| 時期 | 起きること(目安) |
|---|---|
| 2026年10月 | 三井ガーデンホテルが着工。コートヤードの開業が発表される |
| 2027年 | 建設が進み、両ホテルの開業準備(幹部の採用、取引先の選定)が始まる時期 |
| 2028年前半 | コートヤードの予約の受付や、現場スタッフの採用が本格化する時期 |
| 2028年秋 | コートヤード・バイ・マリオット飛騨高山が開業(207室) |
| 2029年初頭 | 三井ガーデンホテルが開業(187室)。駅前の新しい客室が約400室になる |
2027年と2028年前半の欄は一般的な開業準備の流れからの目安で、両社が公表した日程ではありません。既存の宿にとっては、採用が動く前の2027年までに職場の条件を整え、開業前の2028年春までに閑散期の商品と直販の仕組みを固めるのが、ひとつの目安になります。
既存の旅館・ホテルへの影響
- 駅前のビジネス・シティホテルとは正面から競合する:2軒とも駅から歩ける立地で、観光とビジネスの両方を取りにくる。駅前の宿は、立地の優位がなくなる
- 大浴場は差別化にならなくなる:コートヤードは大浴場、三井ガーデンは最上階の温浴施設を持つ。旅館が強みにしてきた「お風呂」は、食事や体験、客室の過ごし方と組み合わせて打ち出す必要がある
- 会員の力で直販を取られる:マリオットの会員や三井ガーデンの利用者は、会員向けの直販を使う。OTA頼みの宿は、同じ検索結果に大手が並ぶことになる
- 人材の採り合いが先に来る:2軒で400室近いホテルの開業には、フロント、料飲、清掃などで多くの人が要る。地方では、開業準備の採用が地元の働き手を引きつける
- 閑散期の料金に圧力がかかる:6〜9月や冬の平日に、新しいホテルが稼働を埋めるために料金を下げると、周辺の宿の料金にも響く
既存の宿が今から打てる手
- 働く人をつなぎとめる:開業準備の採用が始まる前に、待遇と働き方を見直します。地元で長く働ける職場であることを、具体的な条件で示します
- 閑散期の需要を作る:6〜9月に来る理由(夏の体験、長期滞在、合宿や研修、近隣の観光地との周遊)を、今から商品にしておきます
- 直販と常連を増やす:大手の会員プログラムと同じ土俵で戦うのではなく、再訪の客に向けた直販の特典や、地元ならではの体験を用意します
- 「お風呂+α」で選ばれる理由を言葉にする:温泉の質、食事、部屋での過ごし方、宿の人との関わりなど、大手のホテルにない価値を、予約サイトの説明文や写真で伝えます
- 広域観光の受け皿になる:白川郷・上高地・金沢・富山への周遊客には、連泊や荷物の預かり、送迎の手配など、旅程を組みやすくする工夫が効きます
大手のホテルの進出が続く他の地域の動きは、京都のホテル閉館・休館一覧(閉館とブランドの付け替えが重なる京都)も参考になります。
まとめ
- JR高山駅周辺に、コートヤード・バイ・マリオット飛騨高山(2028年秋・207室)と三井ガーデンホテル(2029年初頭・187室)が開業する。どちらも岐阜県に初めてのブランド
- コートヤードは開発・運営・ブランドが分かれた形、三井ガーデンは三井不動産グループの一貫型
- 高山市の外国人宿泊者数は2025年に約97.8万人で、2019年の約1.6倍。ただし10月と6月で2倍の差がある
- 既存の宿は、人材、閑散期の需要、直販と常連、大浴場以外の強み、広域観光の受け皿づくりに、開業までの2年あまりで手を打つ
よくある質問(FAQ)
Q1. コートヤード・バイ・マリオット飛騨高山はいつ開業しますか?
2028年秋の予定です。客室はスイートを含む207室で、大浴場やオールデイダイニングを備えます。
Q2. コートヤード・バイ・マリオット飛騨高山の場所はどこですか?
岐阜県高山市花岡町1丁目で、JR高山駅から徒歩圏内です。
Q3. 三井ガーデンホテルの飛騨高山の開業はいつですか?
2029年初頭の予定です。「(仮称)岐阜県高山市ホテル計画」として2026年10月に着工しました。所在地は高山市花里町四丁目で、JR高山駅から徒歩約2分、187室です。
Q4. コートヤード・バイ・マリオット飛騨高山はどこが運営しますか?
パシフィカホテルズが運営する予定です。開発は積水ハウスとJR東日本伊藤忠不動産開発が共同で進めます。
Q5. 高山市の外国人宿泊者数はどのくらいですか?
高山市の統計によると、2025年は97万8,312人で、前年比127.1%でした。2019年は61万2,204人でした。
Q6. 高山に泊まる訪日客はどの国が多いですか?
2025年は台湾(約12万人)、中国(約9.2万人)、アメリカ(約5.9万人)、スペイン(約5.3万人)の順でした。地域別ではアジアが37.7%、ヨーロッパが22.5%です。
Q7. 地元の旅館は何を準備すればよいですか?
開業準備の採用が始まる前に、働く人をつなぎとめることが先決です。あわせて、閑散期の需要づくり、直販と常連の強化、大浴場以外の強みを伝えることに取り組みます。
出典:マリオット・インターナショナル・積水ハウス・JR東日本伊藤忠不動産開発・パシフィカホテルズ「『コートヤード・バイ・マリオット飛騨高山』2028年秋に開業予定」(2026年10月28日)、三井不動産・三井不動産ホテルマネジメント「『三井ガーデンホテルズ』が飛騨高山に初進出『(仮称)岐阜県高山市ホテル計画』着工」(2026年10月26日)、高山市観光課「令和7年 高山市外国人観光客宿泊統計」(2026年2月)


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