結論
星野リゾートの施設の閉館が続いています。大分県九重町の温泉旅館「界 阿蘇」は2026年10月27日、大阪・南港のファミリー向けホテル「リゾナーレ大阪」は11月23日で閉館します(いずれも公式サイトのお知らせ)。
どちらも、星野リゾートの業績が悪いから閉じるわけではありません。理由は建物を持つ側(所有者)の判断です。
- リゾナーレ大阪:建物は「グランドプリンスホテル大阪ベイ」(480室)の中の48室で、所有者は星野リゾート・リート投資法人。2030年秋頃の大阪IRの開業を見据え、ホテル全体をプリンスホテル1社の運営に一本化するため、星野リゾートの運営を終える。星野リゾート側は大阪の経営資源を「OMO7大阪」に集める
- 界 阿蘇:リートが2025年に「界の中でも小規模で、資本的支出の効率性が課題」として売却。その後の所有者が増築で12室を19室にする計画を発表している
過去の撤退例(西表島、界 川治、OMO3札幌すすきの、川湯温泉)を並べると、星野リゾートの閉館・撤退は①運営委託の終了、②賃貸借の終了、③物件の売却、④運営体制の見直し、⑤開発協議のこじれのどれかで起きています。所有と運営を分けた運営会社ならではの「終わり方」で、ホテルのオーナーや運営会社が契約を考えるうえでの材料になります。
はじめに
10月20日、リゾナーレ大阪が公式のInstagramで閉館を知らせると、SNSには「子どもの遊び場がよかったのに」と惜しむ声が並びました。同じ週には、界 阿蘇が閉館の日を迎えます。検索候補にも「星野リゾート 閉館 理由」「星野リゾート 撤退 理由」が並びます。
リゾナーレ大阪については、建物を持つ星野リゾート・リート投資法人が10月16日に経緯と数字をかなり詳しく開示しています。本記事ではこの開示資料を中心に、閉館の理由と、星野リゾートの過去の撤退例を整理します。全国の閉館の動きは閉館・営業終了するホテル一覧にまとめています。
リゾナーレ大阪はなぜ閉館するのか
ホテルの中にあった「もう一つのホテル」
リゾナーレ大阪は単独の建物ではありません。大阪市住之江区南港北のホテル棟(480室)のうち、48室と26階・28階の一部を星野リゾートが「リゾナーレ大阪」として運営し、残りの客室・宴会・料飲をプリンスホテルが運営する形でした。開示資料はこれを「コラボレーションホテル」(1つの建物で複数のブランド体験ができるホテル)と呼んでいます(こうした形は一般に「ホテルインホテル」と呼ばれます)。
| 項目 | いま | 12月1日以降 |
|---|---|---|
| 運営 | 48室と一部区画を星野リゾートグループ、その他を西武・プリンスホテルズワールドワイド | 480室全室と付帯施設を西武・プリンスホテルズが「グランドプリンスホテル大阪ベイ」として運営 |
| リゾナーレ | 運営中(2022年12月16日開業) | 2026年11月23日に運営終了 |
| チャペル | 大阪市の借地の上で婚礼施設として運営 | 10月31日に運営終了。建物を除却し、2027年3月31日に借地を返還 |
| 賃貸借 | リートと株式会社ホライズン・ホテルズ(星野リゾートグループ)の定期建物賃貸借(2016年11月から20年間)は変わらない | |
建物の歴史をたどると、リートが2016年11月に「ハイアット リージェンシー 大阪」として取得し、コロナ禍で宿泊需要が落ち込んでいた2022年12月に、一部の客室を改装してリゾナーレ大阪を開業しました(開業時の対象は64室で、その後48室に)。乳幼児教育をコンセプトにした最上階のアトリエで、家族客という新しい層を呼び込む狙いでした。2023年7月にホテル全体の運営者がハイアットからプリンスホテルに替わった後も、2社の共同運営が続いていました。
理由1:大阪IRの需要を、480室まとめて取りに行く
リートが一番に挙げる理由は、夢洲で2030年秋頃に開業予定の大阪IR(統合型リゾート)です。ホテルは夢洲に近く、開業前は建設関係者、開業後はIRの来場者による宿泊・宴会の需要が段階的に増えると見込んでいます。
開示資料は、2つのブランドを並べて「それぞれが需要を呼び込む」体制は、需要をつくる必要があったコロナ禍には有効だったとしたうえで、エリア全体に大きな需要が生まれる局面では単一の運営者が480室を一体で販売・運営するほうが、客室販売、宴会・料飲との連携、館内サービスのいずれでも収益機会とコスト効率に優れると説明しています。補足資料には「2ブランド・2社の運営では、大阪IR開業後の大規模需要に柔軟に対応しにくい」とあります。大型の会議や団体の客室ブロックを、ブランドの境目を気にせず組めるようにするということです。
見逃せないのが賃料の仕組みです。このホテルの賃料は固定賃料がなく、EBITDAの95%を払う変動賃料だけで、運営成績がそのままリートの収益になります。オーナーが運営体制に強く関わるのは当然で、ホテル全体の客室は2025年4月までにMICE(会議・イベント)を取り込むための改装も済ませています。
理由2:星野リゾートは大阪の力を「OMO7大阪」に集める
星野リゾート側の事情もあります。同社は新今宮で「OMO7大阪」(436室、2024年6月にリートが取得)を運営しており、リゾナーレ大阪とは狙う客層が一部重なり、大阪でのマーケティングの力が分散していたと開示資料は書いています。
大阪の宿泊市場は、万博閉幕後の反動と中国からの訪日客の減少で「一時的に価格競争が激化」しているとし、2027年以降の回復局面の需要を取り切るため、回復に先立ってOMO7大阪に経営資源を集めておく、という判断です。
理由3:権利関係を簡単にして、売却も選べるようにする
もう一つの狙いは、運営者1社・賃貸借契約1本・敷地は自前の土地だけという、分かりやすい形にすることです。開示資料は、このホテルを持ち続ける場合と、将来売却する場合の両方を視野に入れているとし、売却するなら「単一の運営者による簡明な運営体制及び権利関係」のほうが幅広い買い手から評価されると明記しています。
同じ理由で、大阪市から事業用定期借地権で借りている土地の上のチャペル棟「ル サロン ブラン」も、借地契約の満了(2027年3月31日)に合わせて取り壊します。婚姻件数が2000年の約79.8万組から2025年に約48.9万組へと約4割減り、敷地内に2か所ある婚礼施設のうち1か所で足りると判断しました。借地料(年2,400万円)と固定資産税などで、年約2,700万円の負担がなくなります。
お金の動き:承諾料2.6億円と特別損失6.1億円
| 項目 | 金額と扱い |
|---|---|
| 承諾料 | 受け取り:2億6,000万円。リゾナーレ大阪の開業時にリートが行った改装投資のうち、未回収の分に相当する額。賃借人のホライズン・ホテルズが払い、2027年4月期の営業収益に計上する予定 |
| 特別損失 | 6億1,200万円(建物の除却損1億1,000万円、借地権の償却3億100万円、解体・撤去費用2億円)。2026年10月期に計上する予定 |
| 分配金 | 2期通算の1口当たり分配金は13,552円で、前回予想(13,550円)とほぼ同じ水準を確保 |
ホテルの運営者として注目したいのは承諾料です。リゾナーレ大阪のための改装費はリートが出していたので、運営を途中でやめるなら、その回収しきれていない投資の分を運営側が払うという整理になりました。これでリートは投資が回収できなくなるリスクを消し、早く決断できたと説明しています。
界 阿蘇はなぜ閉館するのか(2026年10月27日)
界 阿蘇は、大分県九重町の瀬の本高原(熊本県の黒川温泉から車で約10分)にある全12室の温泉旅館で、全室に露天風呂が付いたヴィラタイプです。公式サイトは「2026年10月27日をもちまして、閉館する運びとなりました」と告知し、9月1日から10月26日まで閉館前のイベントを開いていました。
こちらも所有者が替わったことが出発点です。
- 2025年4月18日:星野リゾート・リート投資法人が、界 阿蘇を株式会社NBI地方創生インベストメントに7億7,400万円で売ると発表(5月1日に引き渡し)。理由は「『界』ブランド物件の中でも小規模の物件であることから、競争力の維持にあたっては資本的支出の効率性が課題」で、売却益を投資主に還元できるため
- 2025年11月20日:NBIホールディングス、三井住友ファイナンス&リース、SMFLみらいパートナーズの3社が、SMFLみらいパートナーズが界 阿蘇を取得・保有し、2025年12月から増築・バリューアップ工事を始めると発表。客室は12室から19室になる計画
- 2026年10月27日:界 阿蘇として閉館
12室の旅館は、改修や設備更新にかかる費用が客室数の割に重くなります。リートは「売って利益を確定する」、次の所有者は「客室を増やして価値を上げる」という、立場の違いがそのまま表れた流れです。2025年11月の発表時点で、工事後の開業時期や運営会社は示されていません。
星野リゾートの閉館・撤退の一覧
報道と公式発表で確認できた主な例です。施設名は当時の名称です。
| 時期 | 施設と何が起きたか |
|---|---|
| 2016年 | リゾナーレ西表島(沖縄県竹富町) 所有者ユニマットプレシャスからの運営委託が終了。ただし2019年3月にリートがホテルを取得し、10月に「星野リゾート 西表島ホテル」として運営に戻った |
| 2024年9月 | 界 川治(栃木県日光市) 星野リゾートが運営を終え、物件は大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツが取得。改装して「TAOYA」ブランドで再開する計画と報じられた |
| 2025年4月 | OMO3札幌すすきの(札幌市) 4月1日、開業から約3年・226室で閉館。理由は「建物の賃貸借契約の終了」(星野リゾート北海道広報) |
| 2025年4月 | 川湯温泉の計画(北海道弟子屈町) 環境省・町と協定を結んで進めていた「界 テシカガ」の計画で、町に撤退の意向を伝えたが、5月1日に3者で協議の継続に合意。開業時期は未定と報じられた |
| 2026年10月 | 界 阿蘇(大分県九重町) 10月27日に閉館。リートが2025年に売却し、次の所有者が増築して19室にする計画 |
| 2026年11月 | リゾナーレ大阪(大阪市) 11月23日に閉館。建物を持つリートの判断で、ホテル全体をプリンスホテルの一括運営に |
検索で「西表島 星野リゾート 撤退」と調べる人が多いのは、2016年の運営委託の終了が「撤退」と伝わったためと考えられます。現在の西表島ホテルは星野リゾートの運営で営業を続けています。
撤退の理由は5つの型に分かれる
一覧を「誰が、どの契約を終わらせたか」で分けると、次のようになります。
- 運営委託の終了(西表島 2016年):所有者が運営を任せる契約を終える。運営会社に建物の権利はないので、契約が切れればそれまで
- 賃貸借の終了(OMO3札幌すすきの):運営会社が建物を借りて営業している場合、賃貸借の期間が終われば明け渡す
- 物件の売却(界 川治、界 阿蘇):所有者が売り、買い手が別の運営やブランドを選ぶ。小規模で設備投資の効率が悪い施設ほど対象になりやすい
- 同じ建物での運営体制の見直し(リゾナーレ大阪):需要の局面が変わり、オーナーが運営者を1社にまとめる
- 開発段階の協議のこじれ(川湯温泉):自治体や国と進める再生事業では、進め方の食い違いが撤退の話にまでなりうる(国立公園での宿泊施設の事業の難しさはパレスホテル箱根が2029年に復活でも触れました)
どの型も、運営会社の業績とは別のところで閉館が決まる点が共通しています。所有と運営を分けると、運営会社は少ない資本で施設を増やせる一方、終わり方は所有者や契約に左右されます。星野リゾートは2027年にも「星のや飛鳥」(7月22日)、「リゾナーレ福井」(9月10日)、「界 嬉野」(夏)の開業を予定しており、出店と撤退を並行して進めています(【2027年】星野リゾートの新規開業一覧)。
ホテルの経営者・運営会社が読み取れること
リゾナーレ大阪の開示は、ふだん表に出ない「運営を途中でやめるときの取り決め」が数字付きで出ている点で貴重です。自館の契約を見直す材料として、次の4点を押さえておきましょう。
- 中途解約のときの費用負担を決めてあるか:今回は、オーナーが出した改装費の未回収分を、運営をやめる側が承諾料として払いました。ブランド導入のための改装を誰が負担し、途中でやめたら誰が何を払うのかは、契約の時点で決めておくべき項目です(運営委託契約の基本はHMA(ホテルマネジメント契約)とは)
- 変動賃料なら、オーナーは運営に口を出す:EBITDAの95%が賃料になる契約では、運営成績がオーナーの収益そのものです。需要の局面が変われば、オーナーは運営体制の変更を求めてきます
- 2ブランド併存は「需要をつくる局面」の手:ホテルの中に別ブランドを入れる手法は、新しい客層を呼びたいときに効きます。大きな需要が来る局面では、在庫と販売を一本にまとめたほうが有利になることがある、というのが今回のオーナーの判断です
- 売却しやすい形を保つ:運営者の数、契約の本数、借地の有無は、物件を売るときの評価に響きます。所有者は出口から逆算して運営体制を選びます
閉館やブランド変更を決めたら、予約済みの客、会員、ギフト券の持ち主への連絡も欠かせません(手順はホテル閉館の連絡漏れを防ぐSOP、ブランドを替えて再開するときの考え方はリブランドとは)。
まとめ
- リゾナーレ大阪は2026年11月23日、界 阿蘇は10月27日で閉館
- リゾナーレ大阪は、建物を持つリートが大阪IRを見据えてプリンスホテルの一括運営に切り替えるため。星野リゾートは大阪の経営資源をOMO7大阪に集める
- 運営の途中終了に伴い、星野リゾート側の賃借人がリートに承諾料2.6億円(改装投資の未回収分)を払う
- 界 阿蘇は、リートが「小規模で設備投資の効率が課題」として2025年に売却し、次の所有者が19室に増築する
- 星野リゾートの撤退は、運営委託・賃貸借の終了、売却、運営体制の見直し、開発協議のこじれで起きている。業績不振の閉館とは性格が違う
よくある質問(FAQ)
Q1. リゾナーレ大阪にはいつまで泊まれますか?
公式サイトは2026年11月23日をもって閉館すると告知しています。報道によると、11月23日12時のチェックアウトが最後です。
Q2. 閉館後、建物はどうなりますか?
ホテルは「グランドプリンスホテル大阪ベイ」として営業を続けます。リゾナーレ大阪だった客室も含め、12月1日を目途に西武・プリンスホテルズワールドワイドが480室を一括して運営します。リートは、この変更に伴う大規模な改修工事の予定はないとしています。
Q3. 最上階のアトリエはどうなりますか?
リートの開示資料には、アトリエの今後の扱いは書かれていません。プリンスホテル側の発表を待つ必要があります。
Q4. 界 阿蘇は再開しますか?
所有者のSMFLみらいパートナーズとNBIホールディングスは、増築・バリューアップ工事で客室を19室にする計画を発表しています(2025年11月)。工事後の開業時期や運営会社、名称は公表されていません。
Q5. 星野リゾートは経営が苦しいのですか?
今回の2件の開示資料からは、業績不振を理由にした閉館とは読み取れません。所有者の資産戦略や、運営会社としての経営資源の配分による判断です。星野リゾートは2027年にも新しい施設の開業を予定しています。
Q6. 「星野リゾートが西表島から撤退した」というのは本当ですか?
2016年に、当時運営していた「リゾナーレ西表島」の運営委託が終わったのは事実です。ただし2019年にリートが同じホテルを取得し、星野リゾートが「星野リゾート 西表島ホテル」として運営に戻っています。
出典:星野リゾート・リート投資法人「国内不動産の運営体制の一本化に関するお知らせ(グランドプリンスホテル大阪ベイ)」「2026年10月16日付プレスリリースに関する補足説明資料」(2026年10月16日)、同「国内不動産の取得及び貸借、並びに国内不動産の譲渡による資産入替えに関するお知らせ」(2025年4月18日)、NBIホールディングス「星野リゾート 界 阿蘇の取得に関するお知らせ」(2025年4月18日)、NBIホールディングス・三井住友ファイナンス&リース・SMFLみらいパートナーズ「阿蘇黒川温泉プロジェクト・伊豆下田南楽プロジェクト」(2025年11月20日)、リゾナーレ大阪・界 阿蘇の公式サイト(2026年10月27日確認)、Lmaga.jp(2026年10月)、下野新聞(2024年10月16日)、HRE-net(2025年1月7日)、琉球新報(2019年9月13日)、Business Insider Japan(2025年5月8日)、FASHIONSNAP(2026年10月21日)


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