2025 年 4 月 13 日に開幕した 「大阪・関西万博」。会期は 10 月 13 日までの 184 日間にわたり、2,820 万人超の来場が見込まれています。本記事では、万博開催を契機に起こった大阪エリアの宿泊料金高騰を最新データで整理し、その裏側にある需給構造と、ホテル運営者が今すぐ検討すべき対策を解説します。
万博開催で宿泊需要はどこまで増えたのか
- 万博初月の 4 月、大阪府内ホテルの予約件数は前年同月比 +102% と倍増(観光庁・宿泊旅行統計速報)。
- インバウンド比率は 64% まで上昇し、訪日需要が再び大阪に集中。
- 万博会場から 30 ㎞ 圏外の奈良・和歌山でも客室稼働率が 85% を超える週末が続出。
参考:観光庁「宿泊旅行統計調査 2025 年 4 月速報」
宿泊料金はいくら上がったのか
カテゴリー | 平常時(2024 年) | 万博期間平均 | 最高値(4/18 週末) |
---|---|---|---|
ビジネスホテル | 9,800 円 | 14,500 円 | 29,800 円 |
シティホテル | 26,000 円 | 39,000 円 | 78,000 円 |
カプセルホテル | 4,500 円 | 9,200 円 | 20,000 円 |
- ビジネスホテル平均単価は 1.5 倍、一部日は 3 倍近くまで跳ね上がり
→ ITmedia ビジネスオンライン - カプセルでも 2 万円超えの事例が報道
→ 読売新聞オンライン - ヒルトン系最高級 「ウォルドーフ・アストリア大阪」 のスイートは 1 泊 130 万円超え
→ 関西テレビ特集
高騰を招いた 3 つの要因
- 開業ラッシュの時差
2023〜24 年に相次いだ外資系ラグジュアリーホテルは上層階内装工事が長期化し、フル在庫化が万博開幕に間に合わず。 - 人手不足による供給制限
客室清掃員の確保難で販売室数を 10〜15% 抑える施設が多数。帝国データバンク調査では旅館・ホテルの 83% が「人手不足」と回答。 - イベント価格の蔓延
OTA 上で動的価格設定が一般化し、需給ひっ迫日に自動で価格が跳ね上がる仕組みが定着。
ホテル運営者が取るべき 5 つの対策
1. 価格戦略の再設計
- 連泊割と早期予約割を組み合わせ、短期&一次需要に偏る価格高騰を平準化。
- 最小宿泊日数 (LOS) を 2 泊以上 に設定し、清掃回転コストを圧縮。
2. フレキシブル客室在庫の活用
- 稼働率 70% を超える週末のみ、OTA への在庫開放を段階的に解放。
- 団体・MICE は万博会期後半にシフトさせ、ピーク分散を狙う。
3. 人員確保とアウトソース
- 清掃アウトソース単価は平常比 +18% でも、未販売損失より低コスト。
→ 外注 1 室あたり 1,900 円、未販売損失平均 12,000 円 - 専門派遣と技能実習(特定技能「宿泊」)の併用で繁忙日シフトを充当。
4. インバウンド特化サービスの強化
- 多言語チャット & 決済リンク でノーショー率を 30% → 8% へ削減した事例多数。
- 「深夜チェックイン不可」の制限は航空ダイヤを考慮し一時解除。
5. 万博後を見据えたリピーター化
- イベント終了後は客室単価の急落が予想されるため、会期中に獲得した顧客メールを活用し CRM クーポン を配信。
- 万博パビリオンとのコラボ宿泊プランをアーカイブ化し、秋以降の“追体験需要”を刈り取る。
宿泊客サイドの選択肢
- 深夜高速バスやフェリーを“洋上ホテル”化 するプランで宿泊費を交通費に転嫁
→ Yahoo!ニュース特集 - 兵庫県西部・奈良県中部など在来線 1 時間圏のエリアは平均単価が 8,000 円台。
- OTA の「価格アラート」を活用し、直前のキャンセル在庫を狙う。
まとめ
大阪・関西万博は、コロナ後で最も急激なホテル需給ショック をもたらしています。価格高騰は一時的な追い風である一方、運営コストとレピュテーションリスクは確実に高まります。ホテル担当者は “値上げバブル” に浮かれることなく、
- 適正価格帯の見極め
- 人員確保と業務フロー最適化
- 万博後の需要反転を想定した CRM 戦略
の 3 点を早急にプラン化することが不可欠です。
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