ホテルの現場で日々奮闘する若手ホテリエの皆さん、入社から1〜2年が経ち、仕事にも慣れてきた頃でしょうか?
「このままで本当に大丈夫だろうか?」 「先輩たちのように、自分はキャリアアップできるのだろうか?」
そんな風に、漠然とした不安を感じている人もいるかもしれません。特に、ホテルのDX化が叫ばれる今、業界全体が大きな変革期を迎えています。
これまで当たり前だった仕事のやり方が変わり、新しいシステムやテクノロジーが次々と導入される中で、「自分は時代に取り残されてしまうのでは?」と焦りを感じることもあるでしょう。
でも安心してください。これは皆さんにとって、これまでのホテリエにはなかった、大きなチャンスでもあります。
今回は、ホテル業界のテクノロジーに精通したアナリストの視点から、DX時代のホテルで若手ホテリエが描けるキャリアパスと、今から身につけておくべきスキルについて解説します。
現場の仕事がテクノロジーで変わるということ
まず、ホテルのDX化は「ホテリエの仕事がなくなる」ことを意味するものではありません。むしろ、ホテリエが本来やるべき仕事に集中できる環境を整えるための手段です。
たとえば、次のような変化が実際に起きています。
- チェックイン・チェックアウト業務: 以前はフロントスタッフが対応していた業務が、スマートチェックインシステムやモバイルチェックインによって自動化されています。
- 客室のサービス: タブレット端末を通じたルームサービス注文や、スマートスピーカーによる照明・空調の操作など、ゲスト自身がテクノロジーを使ってサービスを利用する場面が増えています。
- 清掃管理: 以前は紙や口頭で行われていた清掃指示が、スマート清掃管理システムによって、リアルタイムで共有・管理できるようになりました。
これらの変化によって、これまで膨大な時間を要していた定型業務が効率化され、その分、ゲストとのコミュニケーションや、よりパーソナライズされた体験の提供など、人間にしかできない「おもてなし」に時間をかけられるようになります。
DX時代の若手ホテリエに求められる「新しい力」
では、このような変化の中で、若手ホテリエはどのようなスキルを身につけるべきでしょうか?
1. 現場の課題を発見し、テクノロジーで解決する力
DXは単に新しいシステムを導入することではありません。**「現場の課題を解決するために、テクノロジーをどう活用するか」**を考えることが重要です。
皆さんは、日々現場でゲストと接し、様々な業務をこなす中で、多くの課題に気づいているはずです。
- 「この業務、もっと効率化できないかな?」
- 「ゲストは、本当はこんなことに困っているのではないか?」
- 「この情報を、もっとスムーズに共有する方法はないだろうか?」
これらの「気づき」こそが、DX推進のヒントになります。
ただ指示された通りに業務をこなすだけでなく、**「なぜこの業務が必要なのか」「どうすればもっと良くなるのか」**を常に考え、疑問を持つ習慣をつけましょう。そして、その課題を解決するための手段として、テクノロジーの活用を提案できる人材は、これからのホテル業界で非常に重宝されます。
2. データからゲストを理解する力
DX化によって、ゲストの行動データや予約データなど、様々な情報がデジタル化され、蓄積されるようになりました。
これまで経験と勘に頼っていた「おもてなし」が、データに基づいた論理的な思考と結びつくことで、より精度の高いサービスへと進化します。
- 「この曜日に宿泊するゲストは、特定のレストランを好む傾向がある」
- 「連泊するゲストは、事前にアクティビティ情報を求めていることが多い」
このようなデータを読み解き、個々のゲストに合わせた最適なサービスを提案する力は、今後のホテリエに不可欠なスキルとなるでしょう。
3. テクノロジーを「使いこなす」力
新しいシステムやツールが導入された際、それを単に「使える」だけでなく、「使いこなす」ことが重要です。
- マニュアルを読み込むだけでなく、自分で色々と試してみる
- 「もっと良い使い方はないか?」と考え、チームメンバーに共有する
- システム提供者や開発者とコミュニケーションをとり、改善点をフィードバックする
このような主体的な姿勢は、単なるオペレーターではなく、テクノロジーをホテル運営に活かすプロフェッショナルへと皆さんを成長させてくれます。
具体的なアクションプラン:今日からできること
1. 現場で「なぜ?」を問い続ける
先ほども述べたように、日々の業務の中で「なぜ?」を問いかける習慣をつけましょう。
- なぜ、このゲストはAプランではなくBプランを選んだのだろう?
- なぜ、このチェックアウト時間はいつも混雑するのだろう?
- この作業は、本当に紙でやる必要があるのだろうか?
小さな疑問でも構いません。その一つ一つが、新しいアイデアの種になります。
2. 業界のトレンドにアンテナを張る
常に新しい情報をキャッチアップすることも重要です。
- 新しいホテルのオープン情報
- ホテルのDX事例に関するニュースリリース
- ホテル業界のテクノロジー展示会情報
これらの情報に触れることで、**「こんなサービスがあるのか!」「うちのホテルでも応用できるかもしれない」**といった気づきが得られます。
情報収集には、以下のようなサイトが役立ちます。
3. 自分の意見を発信する
現場で気づいたことや、改善のアイデアは、積極的に先輩や上司に話してみましょう。
たとえ採用されなかったとしても、そのプロセスを通じて**「課題解決のための思考力」や「論理的に説明する力」**が鍛えられます。
また、社内のIT担当者や、システム導入に関わったメンバーと積極的にコミュニケーションをとり、新しいシステムについて深く理解しようと努めるのも良いでしょう。
最後に:不安は成長の証
入社から1〜2年が経ち、仕事の全体像が見え始めた今だからこそ、不安を感じるのはごく自然なことです。それは皆さんが、自分のキャリアについて真剣に考えている証拠であり、成長の兆しでもあります。
DX化は、ホテル業界をより良くするための大きな流れです。この変化を恐れるのではなく、自分自身の成長の糧として捉え、積極的に新しいスキルを身につけていきましょう。
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