深刻な人手不足、インバウンドの爆発的増加、そして外資系チェーンの攻勢。2026年、日本のホテル業界はかつてない激変の中にあります。 もはやPMSは単なる「予約管理ツール」ではありません。AIによる自律的な運営(Agentic AI)と、ゲスト一人ひとりに最適化された体験(ハイパー・パーソナライズ)を実現するための「経営の心臓部」へと進化しました。
▼ 本記事のポイント
- 2026年最新の主要PMS(NEHOPS, Opera, TAP等)を徹底比較
- 「APIファースト」など、失敗しない次世代の選定基準を公開
- 人手不足を解消する「自律型オペレーション」の具体像
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2026年 日本のホテルPMS市場概況
2026年の日本市場におけるPMSのトレンドは、大きく分けて以下の3点に集約されます。
「APIエコシステム」への完全移行
かつての「オールインワン型」から、特定の機能(スマートロック、セルフチェックイン、清掃管理、AIレベニューマネジメント等)に特化した外部ツールと柔軟に連携する「プラットフォーム型」への移行が完了しました。特にAPIの公開範囲と連携の容易さが、PMS選定の決定打となっています。
クラウドネイティブ化の加速とセキュリティ要件の高度化
オンプレミス型からの脱却はほぼ完了し、現在は「いかに高度なセキュリティ(PCI DSS 4.0等)を担保しつつ、高速なレスポンスを実現するか」というクラウドの質が問われています。また、災害時の事業継続計画(BCP)としてのクラウド活用も定着しました。
人手不足を背景とした「自律型オペレーション」の普及
深刻な労働力不足を受け、フロント業務の自動化(セルフチェックイン・アウト)だけでなく、AIによる問い合わせ対応や、清掃ステータスのリアルタイム自動更新など、人間を介さないオペレーションの比重が極めて高まっています。
主要PMSベンダーの詳細分析:国内メガプレイヤー編
NEHOPS(NEC):シティホテル市場の絶対王者
日本国内のフルサービスホテル、大規模シティホテルにおいて、依然として圧倒的なシェア(約60%以上)を誇るのがNECのNEHOPS(ネホップス)です。
- 特徴: 営業系(予約)から管理系(会計・統計)までの強固な統合性。NECが得意とする顔認証技術やIoTデバイスとのシームレスな連携が強みです。
- 2026年の最新動向: 「スマートホスピタリティサービス」をさらに強化。ゲストのスマホをルームキーにするだけでなく、館内利用の決済、混雑状況の可視化、パーソナライズされたクーポン配信などを、NEHOPSを基盤としたエコシステムで提供しています。
- ターゲット: 200室以上の大規模シティホテル、全国展開する大手チェーン。
GLOVIA smart ホテル(富士通):クラウド市場の信頼と実績
40年以上の歴史を持ち、累計3,000施設以上の導入実績を誇る富士通のGLOVIA smart ホテルは、中規模から大規模ホテルにおけるクラウド型PMSのスタンダードとしての地位を確立しています。
- 特徴: 徹底した現場視点のUIデザインと、富士通グループによる24時間365日の保守体制。全国約1,000箇所の拠点を持つCE(カスタマーエンジニア)によるハードウェアサポートは、他社にはない安心感を提供します。
- 2026年の最新動向: 本部機能の強化に注力。複数拠点のデータを統合管理し、グループ全体の収益最大化を図る「チェーンマネジメント」機能が高度化。サステナビリティ(電力消費量管理等)とのデータ連携も進んでいます。
- ターゲット: 中~大規模のビジネスホテル、シティホテル。
TAP:リゾート・高機能ホテルのイノベーター
導入室数で国内トップクラスを誇る株式会社TAPは、特に複雑なオペレーションが求められるリゾートホテルや高級旅館において、圧倒的な支持を得ています。
- 特徴: 徹底した「完全カスタマイズ」への対応力。沖縄の自社ラボ(タップホスピタリティラボ)での実証実験に基づいた、最先端のロボット連携や自動化技術の実装が非常に早いです。
- 2026年の最新動向: PMSの枠を超えた「ホスピタリティ・プラットフォーム」への進化。API連携のハブ機能を強化し、他社の最新テックを自在に組み込める環境(Open-API)を提供しています。
- ターゲット: リゾートホテル、高級旅館、オペレーションに独自性を持たせたい施設。
DYNA PMS(ダイナテック):機動力と顧客接点の強化
バリューコマースグループのダイナテックが提供するDYNA PMS(旧Dynalution)は、予約エンジン「D-EDGE(旧Direct In)」との強力な連携で知られる、宿泊特化型ホテルに強いシステムです。
- 特徴: LINEを活用した顧客接点の強化(D-Lipeat)。宿泊前・中・後のコミュニケーションを自動化し、リピーター育成に直結するCRM機能が非常に強力です。
- 2026年の最新動向: UI/UXを大幅に刷新。タブレット端末での操作に最適化され、フロントデスクに縛られない「モバイル・ロビー・オペレーション」を支援。DX投資回収率を重視する経営層からの支持が急増しています。
- ターゲット: 中規模ビジネスホテル、ライフスタイルホテル、集客重視の宿泊施設。
主要PMSベンダーの詳細分析:グローバル・新世代プレイヤー編
Oracle OPERA Cloud:外資系・大規模チェーンの世界標準
世界120カ国以上、4万以上の施設で採用されているOracle OPERA Cloudは、外資系ホテルチェーンにおいては実質的な標準OSとしての地位を固めています。
- 特徴: グローバル統一のゲストプロファイル管理。世界中のどの拠点に泊まっても、ゲストの嗜好を共有できるエンタープライズ機能は、他社の追随を許しません。
- 2026年の最新動向: 「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」による圧倒的な安定性とAI機能の統合。需要予測に基づく動的なアップセル提案や、生成AIを活用したフロント業務支援が標準搭載されています。
- ターゲット: 外資系ブランド、国際展開を視野に入れた国内大手チェーン。
Daylight PMS(Shiji):APIファーストの次世代クラウド
グローバルで急成長しているShijiグループのDaylight PMSは、2026年の日本市場において最も注目すべきプレイヤーの一つです。日本の商習慣への対応(ローカライズ)も完了し、本格的な導入が進んでいます。
- 特徴: 1,200以上のAPIエンドポイントを持つ「APIファースト」の設計。レガシーなシステムに縛られず、あらゆる最新テックと瞬時に接続可能です。
- 2026年の最新動向: 「シングルゲストプロフィール」による高度なパーソナライズ。予約からチェックイン、滞在中のサービス提供までを一貫したデータで管理し、ゲスト一人ひとりに最適な体験を提供。大規模なホテルポートフォリオを集中管理する機能に優れています。
- ターゲット: DXを推進する次世代ホテルグループ、複雑な連携を求める高機能ホテル。
主要PMSベンダーの詳細分析:特化型・新興プレイヤー編
Wincal(ALMEX):ビジネスホテル効率化のパイオニア
USEN-ALMEXが提供するWincal(ウィンカル)は、自動精算機シェアNO.1の強みを活かし、宿泊特化型ホテルの「フロント無人化・省人化」において圧倒的な地位を築いています。
- 特徴: 自社製自動精算機・KIOSK端末との完全なネイティブ統合。UIが非常にシンプルで、アルバイトスタッフでも短期間のトレーニングで操作可能です。
- 2026年の最新動向: 「Payn」などのキャンセル料自動徴収サービスや、QRコード決済、手のひら認証等の生体認証決済との連携を強化。フロントにスタッフを常駐させない「完全セルフ運用」の標準パッケージとして、地方のビジネスホテル再建にも多く採用されています。
- ターゲット: 宿泊特化型ホテル、ビジネスホテル、低コストで自動化を実現したい施設。
HOTEL SMART:売上最大化にコミットする次世代PMS
新興ながら急速にシェアを伸ばしているHOTEL SMARTは、単なる管理ツールではなく「収益を生むシステム」としての設計が評価されています。
- 特徴: モバイルチェックイン機能が標準搭載されており、チェックイン前にゲストのスマホへアップセル(部屋のアップグレードや朝食追加)を促す動線が非常に優れています。
- 2026年の最新動向: 2,000施設以上の導入データに基づく、AI需要予測・自動レベニューマネジメント機能が進化。専門のレベニューマネージャーが不在の小規模施設でも、市場価格に連動した最適な価格設定を自動で行える点が支持されています。
- ターゲット: ライフスタイルホテル、ブティックホテル、DXに積極的な新興ホテル。
Staysee(ステイシー):中小規模・旅館のDXを支えるコスパ最強システム
1,600施設以上の導入実績を誇るStaysee(ステイシー)は、初期費用を抑えつつ、必要な機能を網羅したクラウドPMSの代表格です。
- 特徴: 圧倒的な導入のしやすさと、直感的な操作画面。旅館特有の「料理管理」や「送迎管理」などの機能も備えており、ITに不慣れな現場でもスムーズに導入できます。
- 2026年の最新動向: インバウンド対応を大幅強化。多言語での事前チェックインや、パスポートスキャン連携がさらに高速化しました。小規模ながらもAPI公開に積極的で、最新のスマートロックとの連携実績も豊富です。
- ターゲット: 50室未満の中小規模ホテル、旅館、個人経営の宿泊施設。
2026年度版 主要PMS比較マトリクス
各システムの立ち位置を整理しました。自社の規模と求める機能に合わせて比較してください。
| PMS名称 | 主要ターゲット | 強み・特徴 | 拡張性 (API) |
|---|---|---|---|
| NEHOPS | 大規模シティ | 国内シェアNo.1、強固な安定性 | 中(特定パートナー中心) |
| Oracle OPERA | 外資・グローバル | 世界標準、国際共通プロフィール | 高(グローバルAPI) |
| TAP | リゾート・高級旅館 | 完全カスタマイズ、ラボでの実証 | 高(Open API推進) |
| DYNA PMS | 中規模・集客重視 | LINE連携、CRM・集客力 | 中 |
| Wincal | ビジネスホテル | 自動精算機連携シェア75% | 中(決済・セルフ特化) |
| HOTEL SMART | 新興・DX重視 | モバイルチェックイン、収益改善AI | 高 |
| Daylight | 次世代チェーン | APIファースト、超高速クラウド | 最高 |
2026年、失敗しないPMS選定の3要素
システムのリプレイス(入れ替え)や新規導入において、2026年現在最も重視すべきは以下の3点です。
「オープンAPI」であるか
特定のベンダーに「ロックイン」される時代は終わりました。清掃管理アプリ、AIチャットボット、最新のスマートロックなど、数年後に出る新しいテクノロジーを即座に取り込めるよう、APIが公開されており、連携実績が豊富であることが必須条件です。
ゲストの「摩擦」をどこまで減らせるか
フロントでの待ち時間は、2026年のゲストにとって最大のストレスです。事前チェックイン、スマホキー、モバイル決済など、ゲストが自身のデバイスで完結できる「フリクションレス」な体験を提供できるシステムを選びましょう。
スタッフの「教育コスト」を最小化できるか
慢性的な人材不足と流動性の高まりを背景に、マニュアルなしで使える直感的なUIは、単なる「使いやすさ」を超えた「経営上の武器」です。多言語の管理画面に対応しているかどうかも、外国人スタッフの採用において重要なチェックポイントになります。
結論:PMSは「管理」から「体験の創造」へ
2026年、PMSはもはや宿泊者のデータを記録するだけの「帳簿」ではありません。AIを活用して収益を最大化し、スタッフを単純作業から解放し、ゲストに最高のパーソナライズ体験を提供する「ホスピタリティ・オペレーティング・システム」へと進化しました。
自社のホテルの「色」は何か。自動化で徹底的に効率を追うのか、それとも最新テックを駆使して「おもてなし」の質を高めるのか。その戦略を形にするための最適なパートナー選びを、本記事を参考に進めていただければ幸いです。
【さらなる理解のために】
PMSはホテル全体のITアーキテクチャの一部に過ぎません。予約エンジンやサイトコントローラーとの全体像を把握したい方は、こちらの解説記事も併せてご覧ください。
徹底解説:ホテルシステムの基本アーキテクチャ
※本記事の情報は2026年2月時点の調査に基づいています。各製品の詳細や最新仕様については、各ベンダーへ直接お問い合わせください。


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