900項目審査の壁!2026年5つ星ホテルがADRを上げた実態とは

ホテル業界のトレンド
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結論(先に要点だけ)

2026年2月11日に発表された「フォーブス・トラベルガイド 2026」において、日本のラグジュアリーホテルが過去最高の評価を更新しました。西武・プリンスホテルズワールドワイドが国内外3施設で最高評価の5つ星を獲得し、三井不動産グループが運営する3ホテルがホテルとスパの両部門で「ダブル5つ星」に輝くなど、日本のホスピタリティ水準が世界トップレベルにあることが証明されました。この格付けは単なる名誉ではなく、インバウンド富裕層の予約チャネルを決定づける強力な「品質の裏付け」として機能します。一方で、900項目に及ぶ厳格なサービス基準を維持するための人材確保とトレーニングコストの増大が、経営上の課題として浮上しています。

はじめに

ホテル業界において、世界で最も権威ある格付けの一つとされる「フォーブス・トラベルガイド」。2026年度の結果発表は、日本のホテル市場にとって大きな転換点となりました。コロナ禍を経て、多くの施設がハード面の刷新とソフト面の再構築を行ってきた成果が、5つ星という形で結実しています。

本記事では、2026年の格付け結果から読み解くラグジュアリーホテルの最新トレンド、5つ星獲得がもたらす収益への影響、そして現場が直面する運用の裏側について、業界の構造を深掘りしながら解説します。

フォーブス・トラベルガイド2026で何が起きたのか?

今回の格付けで注目すべきは、日本の老舗および新興ラグジュアリーブランドの躍進です。西武・プリンスホテルズワールドワイドは、「ザ・プリンス パルクタワー東京」「ザ・プリンス さくらタワー東京」およびハワイの「プリンス ワイキキ」の3施設で5つ星を獲得しました。また、三井不動産グループが展開する「ハレクラニ沖縄」「HOTEL THE MITSUI KYOTO」「ブルガリ ホテル 東京」の3施設は、ホテル部門のみならずスパ部門でも5つ星を獲得するという快挙を成し遂げています。

これは、日本のホテルが「寝る場所」としての提供価値を超え、ウェルネスやスパを含めた「体験価値」において、世界の最高水準に到達したことを意味しています。

なぜ「格付け」がホテルの収益を左右するのか?

理由:富裕層市場における「信頼の通貨」

フォーブス・トラベルガイドの評価が重要な理由は、それが徹底した「匿名調査」に基づいているからです。専門の調査員が一般客を装って宿泊し、900もの評価項目をチェックします。この客観性が、高単価を支払うグローバルな富裕層にとって、ホテル選びの絶対的な基準となっています。

特に2026年の現在、インバウンドのADR(平均客室単価)が上昇し続ける中で、ゲストは「価格に見合う価値」を厳格に求めています。5つ星の称号は、その価格正当性を証明する「エビデンス」となり、OTA(オンライン旅行代理店)を通さない直接予約の促進や、リピート率の向上に直結します。

根拠:900項目の厳格な審査基準

フォーブス・トラベルガイドの公式サイトおよび関連資料によると、評価の75%が「サービス(接客)」、25%が「施設・設備」に割り当てられています。つまり、どれほど豪華な建物であっても、スタッフの所作やゲストの潜在的なニーズを先回りする能力が欠けていれば、決して5つ星を得ることはできません。この「サービスへの偏重」が、結果としてブランドの差別化要因となります。

5つ星評価を支える現場の「品質管理」と「スパ戦略」

具体的な事例:三井不動産と西武・プリンスの戦略

三井不動産グループの「ダブル5つ星(ホテル&スパ)」獲得は、近年のウェルネス需要を的確に捉えた結果です。以前の記事、2026年ホテル評価の新基準!スパを収益の柱に変える戦略とは?でも触れたように、スパはもはや単なる付帯施設ではなく、ホテルのアイデンティティを確立し、ADRを引き上げるための戦略拠点となっています。

一方、西武・プリンスホテルズは、ハワイの「プリンス ワイキキ」での5つ星獲得に見られるように、国内で培ったきめ細かなオペレーションをグローバル展開に適合させています。これは、日本式ホスピタリティが世界市場で通用する強力な輸出産業になり得ることを示しています。

現場運用:チェックリストの高度化

5つ星を維持する現場では、以下のような極めて具体的なオペレーションが日々実行されています(一例)。

  • 電話対応:3コール以内に、温かみのあるトーンで応答し、ゲストの名前を最低1回は呼ぶ。
  • 清掃の完璧さ:客室に入った際、テレビのリモコンやアメニティがミリ単位で指定の位置に配置されている。
  • パーソナライズ:過去の宿泊履歴から、枕の好みやアレルギー情報を事前に把握し、到着前に対応を完了させる。

こうした高いレベルのサービスを維持するには、適切な人材確保が不可欠です。もし採用活動に課題を感じているのであれば、【求人広告ドットコム】などの専門媒体を活用し、ブランドの価値観に合致する人材をピンポイントで集める戦略が必要です。

格付け維持の代償:コストと運用負荷の課題

メリットが強調される格付けですが、経営面では無視できないリスクとコストが存在します。

項目 5つ星維持の影響 経営上のリスク
人件費 教育訓練時間の増加、高度なスキルの保持が必要 固定費の高騰による利益率の圧迫
施設メンテナンス 常に「新品同様」を求められる 修繕積立金の上昇、リノベ頻度の高まり
現場の負担 ミスの許されないプレッシャー 燃え尽き症候群による離職率の向上

特に2026年の労働市場では、スキルのあるホテリエは他業界からも引く手あまたです。サービス品質を維持しながら、スタッフのメンタルヘルスをどう守るかは、現代のGM(総支配人)に課せられた最大のミッションです。詳細はホテルGMの役割は激変?国際経験と現場主義が導く成長戦略とはで詳しく解説していますが、現場の負担を数値化し、無理のないオペレーションを設計する「管理能力」が問われています。

ホテル経営者が格付けを目指すべきかどうかの判断基準

全てのホテルが5つ星を目指すべきではありません。自施設のポジショニングに基づき、以下の基準で判断してください。

  • Yes(目指すべき):客室単価10万円以上をターゲットとし、海外富裕層やエージェント経由の集客を主軸とする施設。
  • No(検討すべき):機能性やコストパフォーマンスを重視するビジネスホテルや、特定のアクティビティに特化した施設。

格付けへの挑戦は、数億円単位の投資(教育費・設備更新費)と、数年がかりの文化醸成を伴います。中途半端な挑戦は現場を疲弊させ、逆に口コミ評価を下げる原因になりかねません。

よくある質問(FAQ)

Q1. フォーブス・トラベルガイドで星を落とす原因は何ですか?

多くの場合、サービスの一貫性の欠如です。一部の優秀なスタッフだけが素晴らしい対応をしても、他のスタッフが基準を満たさなければ評価は下がります。また、設備の経年劣化が放置されている場合も致命的です。

Q2. 5つ星を獲得すると宿泊料金はどれくらい上げられますか?

市場環境によりますが、5つ星獲得後にADRが15%〜30%上昇するケースは珍しくありません。ブランド力が高まることで、価格競争から脱却できるのが最大のメリットです。

Q3. 匿名調査員はいつ来るか分かりますか?

完全に匿名であるため、事前告知はありません。そのため、365日24時間、常に最高水準のサービスを提供し続ける体制が求められます。

Q4. スパ部門の格付けはホテル部門と別ですか?

はい、別々に評価されます。ホテルは5つ星でもスパは4つ星、というケースもあります。両方で5つ星を得る「ダブル5つ星」は、世界でも非常に希少な存在です。

Q5. 調査基準は毎年変わりますか?

基本的なサービス基準(礼儀、スピード感、正確性)は変わりませんが、時代の要請(サステナビリティ、デジタルツールの活用方法など)に合わせて評価項目の細部が更新されます。

Q6. 小規模なブティックホテルでも5つ星は取れますか?

可能です。客室数よりも「サービスの質」が重視されるため、小規模ゆえのきめ細かな対応が評価され、5つ星を獲得している施設は世界中に存在します。

まとめ:格付けを「点」ではなく「資産」に変える

「フォーブス・トラベルガイド2026」での日本勢の躍進は、日本の観光産業が成熟期に入ったことを象徴しています。しかし、5つ星はゴールではありません。獲得した称号を維持し続け、それをどう収益とスタッフの誇りに変換していくかが、真の経営手腕です。

次にとるべきアクション:

  • 自施設の現在のサービス水準が、世界の格付け基準(900項目)とどの程度乖離しているか、自主インスペクションを実施する。
  • ハード面の投資だけでなく、スタッフの「対応の即時性」や「名前を呼ぶ習慣」といった、コストをかけずに改善できる項目から着手する。
  • スパや料飲部門など、宿泊以外の「体験型サービス」の品質を再定義し、総合的なブランド価値を高める。

品質の向上には近道はありません。地道なトレーニングと、それを支える適切な人事評価制度の構築こそが、世界に選ばれるホテルへの唯一の道です。

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