F&Bはコストか収益か?ホテルF&Bをプロフィットセンター化する秘訣

ホテル業界のトレンド
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  1. はじめに
  2. 結論(先に要点だけ)
  3. なぜホテルF&Bは「コストセンター」から脱却する必要があるのでしょうか?
    1. 1. 収益成長率が宿泊部門を上回る傾向(出典:CBRE 2025年上半期データ)
    2. 2. 都市部における平日ビジネス需要の激変
  4. どうすればホテルF&Bは外部客を呼び込み「プロフィットセンター」になれる?
    1. 1. 宿泊客の2倍以上の外部客を呼び込む設計
    2. 2. 専門のF&Bオペレーターへの委託
  5. 【現場運用】「火・水集中型」需要にどう対応するか?
    1. 課題1:労働力の配分とシフト管理
    2. 課題2:サービスの質の維持(認知負荷の増大)
    3. 課題3:地元客向けマーケティングの高度化
  6. F&B投資の成功・失敗を分ける判断基準
    1. 判断基準1:F&B単体での魅力(外部競合優位性)
    2. 判断基準2:オペレーションの専門性確保
  7. まとめ:F&B収益最大化のための次のステップ
  8. よくある質問(FAQ)
    1. F&Bの収益性が改善している主な要因は何ですか?
    2. ホテルF&Bの収益を増やすには、まず何から着手すべきですか?
    3. オフィス勤務の圧縮化は、日本のホテルF&Bにも影響しますか?
    4. F&Bを外部委託するメリットとデメリットを教えてください。
    5. ホテルF&Bの利益率の平均はどれくらいですか?
    6. 宿泊客と外部客の利用を分けるべきですか?
    7. F&B部門のデジタル化はどこから進めるべきですか?

はじめに

ホテル経営において、F&B(料飲部門)は伝統的に「コストセンター(費用が発生する部門)」と見なされがちでした。しかし、人件費や光熱費の高騰が続く現代において、宿泊以外の収益源を確立することは喫緊の課題です。特に、ニューヨーク(NY)などの大都市圏では、オフィス勤務形態の変化がF&B戦略に大きな転換を迫っています。

この記事では、最新の市場データと具体的な海外事例に基づき、ホテルF&Bをどのように「プロフィットセンター(収益を生む部門)」へと変革し、収益を最大化できるのかを解説します。

結論(先に要点だけ)

  • ホテルF&B部門は、単なる付帯サービスから、外部客を積極的に取り込む「デスティネーション型」の独立した収益源へと転換しています。
  • CBREの統計(2025年上半期)によると、ホテルF&Bの収益成長率は全体の成長率(3%)を上回り、利益率も29.1%に改善傾向です。
  • 成功の鍵は、地域の客層と需要の変化(特に、オフィス勤務の圧縮化)を徹底的に分析し、時間帯や目的に合わせた多様なコンセプト(レストラン、カフェ、バー)を展開することです。
  • 宿泊客に依存せず、地元客を宿泊客の数倍取り込むための高度なコンセプト設計と専門的なオペレーションが必要です。

なぜホテルF&Bは「コストセンター」から脱却する必要があるのでしょうか?

従来のホテルF&Bは、宿泊客の利便性向上や朝食提供といった「サービス品質維持」が主な目的であり、単体での収益性が低くても許容されるケースが多くありました。しかし、2026年現在の市場環境では、この構造のままではホテル全体の収益性を圧迫する要因となります。

その背景には、次の二つの明確な構造変化があります。

1. 収益成長率が宿泊部門を上回る傾向(出典:CBRE 2025年上半期データ)

最新の市場統計は、F&Bが持つポテンシャルを示しています。CBREが発表した2025年上半期の「ホテル業界のトレンド」調査によると、F&Bの「稼働客室あたり収益(RevPOR)」の成長率は3.8%でした。

これは、ホテル全体の総収益成長率である3%を上回る数字です。さらに、F&Bの利益率も2024年初頭の28.7%から29.1%へと改善しています。このデータは、適切な戦略をとれば、F&Bがホテル全体の利益率向上に貢献できることを強く示唆しています。

2. 都市部における平日ビジネス需要の激変

特にニューヨークや東京などの主要都市では、ハイブリッドワークや週休3日制の浸透により、従来の「月曜日から金曜日」に均等に発生していたオフィス需要が大きく変化しました。

現場のホテルマネージャーの証言(出典:Travel Weekly)によると、多くのオフィスワーカーが週に3日出勤し、「木曜日や金曜日の来店」が減り、「火曜日と水曜日」に需要が集中する傾向が見られます。これにより、飲食施設は「5日分の収益を3日(または4日)で生み出す」という厳しい課題に直面しています。

この圧縮された需要に対応するためには、宿泊客だけを相手にするのではなく、地域の居住者やオフィスワーカーをターゲットにした、集客力の高い F&B コンセプトが不可欠となっています。

どうすればホテルF&Bは外部客を呼び込み「プロフィットセンター」になれる?

ホテルF&Bをプロフィットセンター化するためには、コンセプト自体が「ホテル付帯施設」ではなく、「地域のデスティネーション(目的地)」として機能するよう設計する必要があります。

1. 宿泊客の2倍以上の外部客を呼び込む設計

NYの事例(Kimpton Era Midtown)では、400室のホテルに対して、平均で600〜700人の宿泊客が見込まれます。しかし、F&B収益目標を達成するためには、1日あたり1,500人の利用客を目標としていると言います。

この数値目標が示すのは、F&B収益は宿泊客の利用だけに頼っていては成立せず、地域の外部客を少なくとも宿泊客の2倍以上取り込む必要があるという事実です。

この目標達成には、次のような多角的な戦略が採用されます。

戦略的要素 具体的な施策と狙い
時間帯と目的の多様化 朝食、ランチ、ハッピーアワー、ディナー、深夜バーといった異なる時間帯・目的で利用できる複数のF&Bコンセプトを設計。
コンセプトの専門性 単なる「ホテルレストラン」ではなく、特定の料理ジャンル(例:高品質な肉料理、専門的なカクテルバー)に特化させ、外部客が「わざわざ行く価値」を創出。
ローカル需要の調整 平日(火・水曜)のビジネスランチやディナー需要に対応できる席数とサービスを用意しつつ、土日のレジャー需要や地元住民の利用も促す。

2. 専門のF&Bオペレーターへの委託

ホテル経営会社が必ずしもF&Bオペレーションの専門性を持っているわけではありません。高収益を目指すホテルでは、F&B部門を外部の専門的な飲食グループに委託するケースが増えています。これにより、F&Bのコンセプト開発、メニュー作成、仕入れ、人材採用、そして最も重要な「集客力のあるブランド化」を高いレベルで実現します。

外部の専門業者に任せることで、ホテル側は宿泊部門のコア業務に集中し、F&B部門は独立した収益源として専門的に運用されることが可能になります。

この点については、以前の記事「F&Bをコストセンターから脱却!ホテル収益を伸ばす戦略」でも詳しく解説しています。

【現場運用】「火・水集中型」需要にどう対応するか?

前述のように、ハイブリッドワークの浸透は、F&Bの現場オペレーションに大きな負荷をかけています。従来の安定した需要曲線ではなく、週の途中に需要のピークが生まれるため、以下のような現場課題と対策が求められます。

課題1:労働力の配分とシフト管理

需要が火・水に集中するため、その日の労働力を最大限に確保する必要があります。従来の月〜金曜日の均等シフトでは対応できず、人件費効率が低下します。

  • 対策:ピーク予測に基づいた変動シフトの導入

    AIや過去の予約データを活用し、火・水曜日のランチやディナーの予約数を高い精度で予測します。これにより、必要な人員のみを配置する「変動シフト」を徹底し、人件費の無駄を削減します。

課題2:サービスの質の維持(認知負荷の増大)

ピーク時の利用客数が増加すると、現場スタッフ一人当たりの認知負荷(情報処理の負担)が急増し、サービス品質の低下を招きやすくなります。特に宿泊客と外部客が混在する場合、対応手順の複雑化が課題です。

  • 対策:デジタル注文・決済システムの導入

    モバイルオーダーシステムを導入することで、特に注文や会計といったルーティン業務におけるスタッフの認知負荷を軽減します。これにより、スタッフはゲストとのコミュニケーションや迅速な配膳といった、人間が価値を発揮すべき業務に集中できます。

課題3:地元客向けマーケティングの高度化

宿泊客はホテルを選んだ時点で利用してくれる可能性が高いですが、地元客は競合の独立系レストランから選ばれなければなりません。ホテルという看板だけでは集客はできません。

  • 対策:地域に特化したパーソナライズされたプロモーション

    近隣のオフィスワーカーや居住者向けに、ハッピーアワーやテイクアウトの割引など、地域限定のオファーを積極的に行います。また、F&B専門のSNSアカウントやグルメレビューサイトでの評価獲得を、宿泊部門とは独立した目標として設定します。

F&B投資の成功・失敗を分ける判断基準

ホテル経営者がF&B部門への投資戦略を立てる際、単に内装を豪華にするだけでは失敗します。次の二つの基準に基づいて、自社のF&B戦略がプロフィットセンター化に耐えうるか判断することが重要です。

判断基準1:F&B単体での魅力(外部競合優位性)

あなたのホテルのレストランやバーは、周辺にある独立系の人気店と比較して、コンセプト、価格、品質のいずれかで勝っていますか?

  • YESの場合: F&B部門を独立したブランドとして確立し、積極的に外部集客に投資すべきです。専門のF&B運営会社への委託も有力な選択肢です。
  • NOの場合: ターゲット顧客を「宿泊客の利便性」に絞り込み、大規模なF&B投資は避けるべきです。収益性を高めるには、朝食や簡素なラウンジサービスに限定し、残りのスペースを客室や付加価値の高い施設(例:ウェルネス、ワークスペース)に転用することを検討します。

判断基準2:オペレーションの専門性確保

F&B運営には、宿泊部門とは異なる高度な専門性(食材調達、メニュー開発、衛生管理、顧客体験設計)が求められます。この専門性を内部で確保できますか?

  • 内部確保が難しい場合: 経験豊富な外部オペレーターへの委託を検討することで、高収益化とリスク低減を両立できます。外部業者は、独自のサプライチェーンや人材ネットワークを持つため、運営効率が高まります。
  • 内部確保が可能な場合: F&B部門のリーダーに、独立した経営権限と収益責任(P/L責任)を与え、部門のプロフィットセンター化を推進します。

ホテル経営においては、宿泊部門以外の分野で専門的なスキルを要する場合、アウトソーシングは有効な戦略です。例えば、採用業務が宿泊オペレーションを圧迫している場合、外部の採用代行サービスを利用することでコア業務に集中できます。これはF&B専門業者への委託と同じ構造です。

まとめ:F&B収益最大化のための次のステップ

ホテル F&B部門がプロフィットセンターとなるためには、マインドセットの転換が必要です。F&Bは「宿泊客が利用するもの」ではなく、「地域全体から支持され、ホテルに集客をもたらす独立したブランド」でなければなりません。

2026年以降、都市部での需要の「火・水集中」はさらに加速する可能性が高く、この変動に対応できる柔軟なコンセプトとオペレーション、そしてデータに基づいた人員配置が収益の鍵となります。まずは、地域の外部客の動向を分析し、自社のF&Bコンセプトが「わざわざ足を運ぶ理由」を提供できているかを厳しく検証することから始めましょう。

よくある質問(FAQ)

F&Bの収益性が改善している主な要因は何ですか?

最も大きな要因は、ADR(平均客室単価)の上昇に伴い、高付加価値のダイニング体験に対するゲストの支払い意欲が高まったこと、そしてホテル側がメニューや価格設定を見直し、利益率の高い商品構成にしたことです。また、外部客を取り込む「デスティネーション型」戦略の成功も貢献しています。(出典:CBRE 2025年上半期調査)

ホテルF&Bの収益を増やすには、まず何から着手すべきですか?

まず、自社のF&B部門の利用客が「宿泊客」と「外部客」で何%ずつ構成されているかを正確に把握します。その上で、外部客の利用が少ない場合は、近隣の競合レストランをベンチマークし、自社のコンセプトに「地域での優位性」があるか再評価することが最優先です。

オフィス勤務の圧縮化は、日本のホテルF&Bにも影響しますか?

はい、影響します。東京、大阪などの大都市圏では、本社オフィスを構える企業でハイブリッドワークが浸透しており、特に平日のランチやアフターファイブのビジネス需要が「火曜日・水曜日」に集中し始めています。この曜日の需要ピークに合わせた供給体制を整える必要があります。

F&Bを外部委託するメリットとデメリットを教えてください。

メリット: 専門性の高いオペレーションの確保、高い利益率の実現、ホテルブランドとは異なる強力な集客力を持つF&Bブランドの導入。デメリット: ホテル側がF&Bのブランドコントロールを失う可能性、収益シェアに関する契約調整の複雑さ、現場スタッフ間の連携が取りにくいリスクが挙げられます。

ホテルF&Bの利益率の平均はどれくらいですか?

地域やホテルタイプによって大きく異なりますが、CBREの2025年上半期のデータ(米国)では、F&B部門全体の利益率は約29.1%と報告されています。これを一つのベンチマークとして、自社の利益率がこれを下回っている場合は、抜本的なコスト構造の見直しが必要です。

宿泊客と外部客の利用を分けるべきですか?

必ずしも分ける必要はありませんが、外部客の体験を優先しすぎると、宿泊客の利便性(例:朝食会場の混雑)が損なわれるリスクがあります。理想は、時間帯やエリアを分けて利用客の導線を設計することです(例:朝食・ルームサービスは宿泊客優先、ランチ・ディナーは外部客も取り込む設計)。

F&B部門のデジタル化はどこから進めるべきですか?

注文・会計のデジタル化(QRコードオーダーやモバイル決済)が最も効果的で、ピーク時のオペレーション負荷を劇的に軽減します。次に、在庫管理や廃棄予測にAIを活用し、食材コストを最適化することが推奨されます。

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