過去最高のホテルコンバージョン率!新築より転換を選ぶべき理由とは?

ホテル業界のトレンド
この記事は約11分で読めます。
  1. はじめに
  2. 結論(先に要点だけ)
  3. 米国ホテル市場で「ブランドコンバージョン」が過去最高を記録した事実は?
    1. 「パイプライン」の構成に明確な変化が見られる
  4. なぜ今、新築建設ではなく「既存物件活用」が主流になったのか?
    1. 新築に比べて圧倒的に早い開業スピード
    2. 資本効率の向上と投資回収期間の短縮
  5. ブランドコンバージョン戦略の具体的なメリットとデメリット
    1. 要素 ブランドコンバージョンのメリット ブランドコンバージョンのデメリットと課題 スピードとコスト 迅速な開業(数ヶ月〜1年) リノベーション範囲の予測が難しい(追加工事のリスク) 資本効率 初期投資(CapEx)を抑制、早期の投資回収 既存ブランドのレガシーを引きずる可能性(古い評判、建物構造) 市場参入 既存のマーケットプレイスとスタッフを活用できる 老朽化したITインフラ(技術的負債)の解消が必要 ブランド力 フランチャイズブランドの流通力と顧客基盤を即座に利用可能 新しいブランドの要求水準(PIP)を満たすための投資が不可避 リノベーション投資の「沼」に陥るリスク
  6. 既存ホテルオーナーがブランド転換を判断する3つの基準
    1. 1. 現在のRevPARの「伸びしろ」とブランドの相性を定量化する
      1. 現在のRevPAR(販売可能客室数あたり収益)の絶対評価
      2. ターゲットブランドの「正当なADR」を獲得できるか
    2. 2. 技術的負債の解消コストとリノベーション費用のバランス
    3. 3. 運営会社・スタッフの「新ブランド適応能力」
  7. 現場視点:ブランド転換に伴うオペレーションとシステム改修の課題
    1. 旧システムからのデータ移行とシステム統合
    2. トレーニングと標準化された顧客体験の提供
  8. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. ホテル業界における「ブランドコンバージョン」とは具体的に何を指しますか?
    2. Q2. ブランドコンバージョンが今、増加している主な理由は何ですか?
    3. Q3. ブランドコンバージョンにかかる費用は新築のどれくらいですか?
    4. Q4. コンバージョンを検討する際に、オーナーが最も注意すべき点は何ですか?
    5. Q5. 2025年第4四半期、米国のどのチェーンスケールでコンバージョンが活発ですか?
    6. Q6. ブランド転換後、スタッフの離職を防ぐための対策はありますか?
    7. Q7. リブランドの成功は、ホテルの資産価値にどのように影響しますか?

はじめに

世界的な建設コストの高騰と高金利は、ホテル開発戦略に劇的な変化をもたらしています。特に米国市場では、新築ホテルの建設ペースが減速する一方で、既存のホテル物件をリブランド・改装し、別のブランドに転換する「ブランドコンバージョン」が過去最高の水準に達しています。この動きは、日本のホテルオーナーや運営会社にとっても、既存資産の収益性を最大化するための重要な示唆を含んでいます。

本記事では、ホテル開発戦略がなぜ「新築」から「既存物件活用」へシフトしているのかを、最新の統計データ(一次情報:Lodging Econometrics)に基づいて解説します。さらに、ブランドコンバージョンを成功させるための具体的な投資判断基準や、現場オペレーションに潜む課題、そして収益を倍増させるためのデジタル戦略について深く掘り下げます。

結論(先に要点だけ)

  • 米国ホテル市場では、2025年第4四半期末時点でブランドコンバージョン(既存物件のブランド変更)が**過去最高の1,497プロジェクト**(148,981室)に達し、前年比で件数12%、客室数16%増加しています。(出典:Lodging Econometrics)
  • この急増の背景には、新築建設の遅延、金利高騰、そして既存物件のブランドを変更することで**短期間で収益を上げたい**というオーナーの資本効率重視の戦略があります。
  • ブランドコンバージョンは迅速な市場参入を可能にする一方、老朽化したITインフラや設備に対する**技術的負債の解消**が必須であり、これを見誤ると長期的な運用コスト増につながります。
  • オーナーは、単なるブランド変更に終わらせず、ターゲットブランドの要求水準と現場のデジタル対応力を比較し、**収益複合力**を高めるための戦略的なリノベーション計画が必要です。

米国ホテル市場で「ブランドコンバージョン」が過去最高を記録した事実は?

2026年現在、世界のホテル市場の供給戦略において、既存の建物やブランドを入れ替える「コンバージョン(転換)」が中心的な役割を担っています。この傾向は、特に米国市場の最新データで裏付けられています。

Lodging Econometrics(LE)が発表した2025年第4四半期末のホテル建設パイプラインレポートによると、米国内のブランドコンバージョンプロジェクトは、**過去最高の1,497件(148,981室)**を記録しました。これは前年同期比でプロジェクト数が12%、客室数が16%増加していることを示しています(出典:Lodging Econometrics)。

ブランドコンバージョンとリノベーションプロジェクトを合計すると、全開発活動の非常に大きな部分を占めており、その合計件数(2,118件、278,628室)も過去最高を更新しています。このデータは、新規供給の主流が「ゼロからの新築」から「既存資産の再活用」へ決定的にシフトしたことを示しています。

「パイプライン」の構成に明確な変化が見られる

LEのレポートから読み取れるのは、アクティブなパイプライン(6,146件)のうち、コンバージョンが占める割合が非常に高くなっている点です。これは、開発の初期段階(アーリープランニング)で新築プロジェクトが停滞し、既に着工済みまたは近い将来に建設が始まるプロジェクト(着工予定、建設中)において、コンバージョンが早期の供給を実現しているためです。

新築が時間とコストを要する一方、コンバージョンは短期間で新しいブランドを立ち上げられるため、市場の需要に迅速に応える戦略として、特にアッパーミッドスケールやアップスケールといったチェーンスケールで顕著に採用されています。

なぜ今、新築建設ではなく「既存物件活用」が主流になったのか?

ブランドコンバージョンが急増する理由は、マクロ経済環境とホテル経営における資本効率の追求という二つの要因が複雑に絡み合っているためです。

新築に比べて圧倒的に早い開業スピード

新築ホテルの開発には、用地取得、設計、許認可、建設という長いプロセスが必要です。特に近年は、建設資材の高騰、熟練労働者の不足、許認可プロセスの遅延が常態化しており、計画から開業まで5年〜7年を要するケースも珍しくありません。この遅延期間中、市場環境は大きく変動するリスクを抱えます。

対照的に、既存物件をコンバージョンする場合、建物が既に存在するため、リノベーションとブランドの切り替え作業に集中できます。これにより、ブランドによっては**わずか数ヶ月から1年以内**での開業が可能となります。市場の需要が急増している現在、スピード感を持って客室供給を開始できる点は、収益機会の損失を防ぐ上で決定的な優位性となります。

資本効率の向上と投資回収期間の短縮

新築建設の場合、高騰する建設コストと高金利により、初期投資額(CapEx)が膨れ上がっています。その結果、投資回収期間が長期化し、リスクが増大します。

ブランドコンバージョンは、既存のインフラ(構造体、一部の設備)を再利用するため、新築に比べて初期投資を大幅に抑えられます。高い収益性を維持できる優良な既存物件であれば、リブランドによりADR(平均客室単価)やGOPPAR(一室あたり総営業利益)を改善し、投資額に対してより迅速にキャッシュフローを生み出すことが期待できます。

これは、投資家やホテルオーナーにとって、リスクを抑えつつ高いリターンを狙える、**「賢い投資戦略」**として機能しています。

ブランドコンバージョン戦略の具体的なメリットとデメリット

ブランドコンバージョンは魔法の杖ではありません。成功と失敗を分けるのは、メリットを最大限に活かし、デメリットに戦略的に対処できるかどうかにかかっています。

要素 ブランドコンバージョンのメリット ブランドコンバージョンのデメリットと課題 スピードとコスト 迅速な開業(数ヶ月〜1年) リノベーション範囲の予測が難しい(追加工事のリスク) 資本効率 初期投資(CapEx)を抑制、早期の投資回収 既存ブランドのレガシーを引きずる可能性(古い評判、建物構造) 市場参入 既存のマーケットプレイスとスタッフを活用できる 老朽化したITインフラ(技術的負債)の解消が必要 ブランド力 フランチャイズブランドの流通力と顧客基盤を即座に利用可能 新しいブランドの要求水準(PIP)を満たすための投資が不可避 リノベーション投資の「沼」に陥るリスク

コンバージョン戦略において最も注意すべきは、「リノベーション投資の沼」です。新しいブランドに転換する際、ブランド本部から提示されるのがPIP(Property Improvement Plan:資産改善計画)です。このPIPは、ブランド基準を満たすために必要な改修範囲を示しますが、特に築年数が経過した物件の場合、見えない部分の構造や設備(空調、給排水、電気系統、ITインフラ)に大きな問題が潜んでいることがあります。

例えば、デザインや内装だけを新しくしても、古いPMS(宿泊施設管理システム)や配線が残っていると、最新の予約管理システムやゲスト向けスマート技術の導入が困難になります。現場の効率化を阻害するこのような古いITインフラは、まさしく「技術的負債」であり、オーナーはこれを見積もりに含めなければなりません。技術的負債を解消できなければ、ブランド転換によって得られるはずの収益改善効果が相殺されてしまいます。

(参考:技術的負債解消の重要性については「技術的負債は収益を蝕む!ホテル資産価値を高める統合投資とは?」をご覧ください。)

既存ホテルオーナーがブランド転換を判断する3つの基準

ブランドコンバージョンは、単に看板を掛け替える行為ではありません。資産価値を再構築するための経営判断です。オーナーが転換を成功させるために評価すべき、具体的な判断基準を解説します。

1. 現在のRevPARの「伸びしろ」とブランドの相性を定量化する

ブランド転換を検討する最大の動機は、収益性の向上です。以下の2点を定量的に評価します。

現在のRevPAR(販売可能客室数あたり収益)の絶対評価

現在のホテルのRevPARが、競合するマーケットにおける同等のチェーンスケール(アッパーミッドスケール、アップスケールなど)の平均と比べて、どの程度低いかを確認します。その差が大きいほど、リブランドによる収益改善の「伸びしろ」があると判断できます。

ターゲットブランドの「正当なADR」を獲得できるか

新しいブランドに転換することで、そのブランドの強力な流通チャネルやロイヤリティプログラムにより、より高いADRを設定する「価格の正当性」が生まれます。オーナーは、転換後のターゲットブランドが競合他社に対してどれだけ優位性を持っているかを、STRデータなどを用いて厳密に予測する必要があります。

2. 技術的負債の解消コストとリノベーション費用のバランス

ブランド転換の投資判断は、リノベーション費用全体のうち、目に見えない「技術的負債の解消(ITインフラ、配線、セキュリティシステム、基幹システムPMS/OSなど)」に充てる割合を明確にすることが重要です。

表面的な内装工事に偏重し、基幹システムや客室のConnected Room技術への投資を怠ると、長期的に人件費やエネルギーコストの削減効果が得られず、結果的に資産価値を毀損します。特にライフスタイルブランドへのコンバージョンを考える場合、スマートフォン連携やパーソナライズされたサービス提供に必須のデジタルインフラ投資は不可避です。

投資計画を作成する際は、内装工事とIT・設備の改善コストを切り分けて比較し、IT改善を優先することで、運用負荷の軽減(Opex削減)とゲスト体験の向上を両立できるか検証する必要があります。

3. 運営会社・スタッフの「新ブランド適応能力」

どんなに優れたブランドに転換しても、それを運用する現場が対応できなければ意味がありません。特に、旧ブランドの運用が属人化していた場合、新しいブランドが求める標準化されたオペレーションや顧客対応プロトコル(例:IHGやマリオットの基準)への適応に苦労する可能性があります。

オーナーは、運営会社(マネジメントカンパニー)を選定する際、その会社が新しいブランドの基準に基づいた**標準化された教育プログラム**を持っているか、また、AIやPMS/OSといったデジタルツールを導入し、**現場の認知負荷を軽減**できるかを見極める必要があります。

現場スタッフの離職を防ぎ、新しいブランドにスムーズに移行させるための人事戦略は、コンバージョン成功の隠れた鍵となります。

現場視点:ブランド転換に伴うオペレーションとシステム改修の課題

ブランドコンバージョンは、現場スタッフにとって大きな負担を強いるプロジェクトでもあります。特に、旧システムからのデータ移行や新しいオペレーションの習得は、一時的にサービス品質を低下させるリスクがあります。

旧システムからのデータ移行とシステム統合

リブランドの際、多くの場合、PMS(宿泊施設管理システム)も新しいブランドが推奨するシステムへ移行が求められます。このとき、旧システムの顧客データ、予約履歴、会計データなどを新しいシステムに安全かつ正確に移行する作業は複雑です。

移行作業は、単にデータを移すだけでなく、新しいシステム環境での予約チャネル連携(チャネルマネージャー)、レベニューマネジメントシステム(RMS)との統合、会計システムへの接続テストなど、多岐にわたります。この「システム統合」に失敗すると、リブランド後の価格設定や在庫管理にミスが生じ、機会損失を招きます。

(関連:システム統合の重要性については「ホテル運営の敵は「認知負荷」!Mewsが示すOSで収益を倍増する法」をご覧ください。)

トレーニングと標準化された顧客体験の提供

新しいブランドは、独自のサービス哲学と標準(SOP)を持っています。例えば、あるライフスタイルホテルブランドは、画一的なマニュアル対応ではなく、スタッフの自律性に基づくパーソナライズされたサービスを重視するかもしれません。

現場スタッフには、物理的な改修と並行して、新しいブランドの価値観とサービス基準を理解するための集中的なトレーニングが必要です。曖昧な「人間力」ではなく、具体的な状況判断能力、問題解決スキル、そして自律的に行動できるための権限付与がセットで求められます。このトレーニングと定着に失敗すると、新ブランドの評判を落とすことになりかねません。

よくある質問(FAQ)

Q1. ホテル業界における「ブランドコンバージョン」とは具体的に何を指しますか?

A. 既存のホテル施設が、運営中のブランドから別のブランド(通常はより大きなチェーンやフランチャイズ)に切り替えることを指します。これには内装や設備の一部リノベーション、新しいブランド基準を満たすためのITシステムへの移行などが伴います。

Q2. ブランドコンバージョンが今、増加している主な理由は何ですか?

A. 主な理由は、新築建設のコスト高騰(資材費、労働費)と金利上昇、そして新築開業の長期化です。コンバージョンは新築よりも費用を抑えられ、短期間(数ヶ月〜1年)で開業できるため、資本効率が高く、迅速に収益化を図りたいオーナーにとって魅力的な選択肢となっています。

Q3. ブランドコンバージョンにかかる費用は新築のどれくらいですか?

A. 物件の築年数やターゲットブランドの要求水準(PIP)によりますが、一般的に、新築建設費の1/3から1/2程度に抑えられるケースが多いです。ただし、老朽化したITインフラや構造的な修繕が必要な場合、予想外の追加コストが発生するリスクがあります。

Q4. コンバージョンを検討する際に、オーナーが最も注意すべき点は何ですか?

A. 最も注意すべきは「技術的負債」です。目に見える内装だけでなく、古いPMS、ネットワーク環境、客室内のスマート技術導入に対応できる配線などに戦略的に投資し、長期的な運用コスト(Opex)を削減できる体制を整えることが重要です。

Q5. 2025年第4四半期、米国のどのチェーンスケールでコンバージョンが活発ですか?

A. Lodging Econometricsの報告によると、アッパーミッドスケールとアップスケールのホテルセグメントで特にコンバージョンが活発です。これは、これらのセグメントがビジネス・レジャー需要の両方を捉えやすく、リブランドによる収益改善効果を出しやすいためと考えられます。

Q6. ブランド転換後、スタッフの離職を防ぐための対策はありますか?

A. 現場のオペレーションが大きく変わるため、離職リスクは高まります。対策としては、新しいブランドのシステム(PMS/OS)導入により、スタッフの日常業務の「認知負荷」を軽減すること、そして新ブランドのサービス基準に基づいた透明性の高い評価制度と十分なトレーニングを提供することが効果的です。

Q7. リブランドの成功は、ホテルの資産価値にどのように影響しますか?

A. 成功したリブランドは、稼働率(Occupancy)と平均客室単価(ADR)を向上させ、結果としてRevPARとGOPPARを改善させます。これにより、投資家からの評価が高まり、ホテルの不動産としての資産価値を直接的に引き上げます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました